いまは観光スポットにも!「ビルの中を通る高速道路」なぜできた? 大阪の珍光景の実態に迫る

大阪では当たり前の光景になっていますが、じつは世界的にも珍しくちょっとした観光スポットになっているのが「高速道路が貫通するビル」。どうしてそんな状況になったのか、ビルのなかはいったいどうなっているのか、その詳細に迫ります。

高速道路がテナントとして入居するビルとは?

 日本を走る高速道路の距離は、道路統計年報2018によると、およそ9300kmです。日本の国土が東西南北ともに約3000kmといわれているので、1往復半した距離に相当します。

ビルを貫通するトンネル[阪神高速道路11号池田線](2013年6月、佐藤勝撮影)
ビルを貫通するトンネル[阪神高速道路11号池田線](2013年6月、佐藤勝撮影)

 平地の少ない島国の高速道路らしく、山や谷、海や川を越えるため、日本では数多くのトンネルや橋が点在しており、アクアラインや首都高速湾岸線の横浜ベイブリッジ、瀬戸中央自動車道の瀬戸大橋などは有名です。

 そんなトンネルや橋のなかでひときわ目を引く存在なのが、大阪にある「ビルのなかを通る高速道路」ではないでしょうか。

「ビルのなかを通る高速道路」とは、一体どのようなものなのでしょうか。

 場所は大阪市福島区、JR大阪駅より徒歩10分ほどのところにある、地下2階、地上16階建ての「TKPゲートタワービル」です。

 このTKPゲートタワービルは、驚くべきことに、5階から7階部分を阪神高速道路11号池田線の梅田出口に向かう出路が貫通しているのです。

 このビルと阪神高速はまったく別の企業で、阪神高速は5階から7階部分にテナントとして入居している状態。といっても、じつはビルと道路は接しておらず、それぞれが独立した構造で、ビルには穴が開いているだけなのです。そのため、仮にビルを壊したとしても道路には影響はないといいます。

 どうしてこのような状況になったかというと、地権者によるビルの新築計画と阪神高速の梅田出口を作る計画がタイミング的にちょうど重なってしまい、どちらも譲らなかったためで、数年に及ぶ交渉の結果が現在の形になったそうです。

 阪神高速を運営する阪神高速道路株式会社(広報担当)は次のようにいいます。

「物理的な問題で、ここを通らないわけにいかなかったのです。防音や防火の観点から上下階に高速道路に面する窓はなく、建物の内部から阪神高速を見ることはできません」

 世界的にも珍しい、建物内を高速道路が走るTKPゲートタワービルは、エントランスの案内板の5階から7階部分に「阪神高速道路」と書かれていますが、エレベーターは止まりません。

 ビルの中を走る高速道路を見るには、近隣のビルから眺めるか、実際に走るしかありません。本線ではなく出路のため、40km/h制限区間ではありますが、ビルのなかを大きく曲がる左カーブは圧巻です。

 ちなみに、阪神高速にはビルのなかだけでなく、建物の上を走る箇所もあります。こちらも11号池田線。

 朝日新聞ビルの西側の一部が橋脚として高速道路を支える構造でしたが、現在は隣の大阪朝日ビルと合わせて再開発が進み、橋脚を受け持つ部分のみが残されています。そのほかは高層ビルの中之島フェスティバルタワー・ウエストとして生まれ変わっています。

※ ※ ※

 どちらも実際に走ってみたいスポットではありますが、同じ11号線ながら、TKPゲートタワービルを抜ける梅田の出路を通れるのは池田から環状線方面への上りです。

 一方、旧・朝日新聞ビルの上を通るのは環状線から池田方面へ向かう下りのみなので、一回で両方を通ることはできません。

※ 便宜上、高速道路と記載しておりますが、阪神高速などの都市高速は道路法で定められた高速道路とは異なります

ビルのなかはどうなってる? 大阪で有名なビルを貫通する高速道路とは(11枚)

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