トヨタのミニバンはなぜ多い? ノア・ヴォク3兄弟の末っ子「エスクァイア」の存在意義とは
ノア・ヴォクシー・エスクァイア3兄弟はユーザー層が違う
トヨタの各チャネルは、扱っている車種が違うので狙うべきユーザー層が異なります。
「クラウン」を販売するトヨタ店は高級車や法人、「ハリアー」や「マークX」を扱うトヨペット店は年齢層が高めのファミリー、カローラ店は20代から30代のファミリー、ネッツトヨタ店は若者と、大まかに分けられています。
エスクァイアを取り扱うトヨタ店、トヨペット店のユーザーは、比較的高所得者が多いこともあり、上質なデザインが求められました。
また、クラウンやマークXなどの購入するユーザーは年齢層が高めなので、新たな顧客の獲得と顧客の若返りを図るという意味でも、ファミリーに人気のミニバンの導入が必要だったのです。
エスクァイアは、ノアやヴォクシーとベースを共用しながら、一線を画す高級感のある内外装を特徴としています。
ボディタイプは、ノア・ヴォクシーが標準モデルとカスタムモデルの2つのタイプが用意されていますが、エスクァイアでは標準モデルのみの設定です。
若いファミリーがターゲットのノア・ヴォクシーとは違い、エスクァイアのターゲットは40代以上としているため、エアロパーツを盛り込んだカスタムモデルは存在せず、上質感を演出した標準モデルにラインナップをしぼりました。
そのため、ノア・ヴォクシーは250万9920円から328万6440円なのに対し、エスクァイアは266万4360円から337万6080円と、若干高めの価格設定となっています。
エスクァイアのメッキを多用した縦基調の大型フロントグリルは堂々とした印象で、アルファードにも似たデザインといえるでしょう。
内装の基本的なデザインはノア・ヴォクシーと共通ですが、エスクァイアでは、インパネやドアパネルに合皮をあしらい、スエード調のシートなどを採用することで高級感を演出しました。
クラウンやマークXなどの上級セダンに乗っていたユーザーを取り込むために、大人のミニバンを目指したのです。
実際にエスクァイアを購入したユーザー(60代・男性)は、次のように話します。
「これまでクラウンに乗っていましたが、ゴルフをするので荷物が積めるミニバンに興味がありました。
ノアやヴォクシーは若者向けのデザインなので躊躇してしまいますが、エスクァイアだったら私が乗ってもおかしくないかなと思って購入しました。
トヨタ店にお世話になっていたこともあり、なじみの営業マンでスムーズに商談が進められたのもありがたかったです」
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トヨタでは2020年春に、チャネル制を廃止して全車種を全店舗で販売するようになります。すでに東京のトヨタディーラーでは全車種併売化が実施されていますが、トヨタでは2020年代の半ばには現在販売している車種を半減させる方向で調整しているといいます。
そうなるとノア・ヴォクシー・エスクァイアのような兄弟車が、統一される可能性があります。
どれかひとつが残るのか、新たなモデルが登場するのかは明らかになっていませんが、これまで車種を増やしてきたトヨタが、今度は車種を減らす方針に転換するという、大きな分岐点に差し掛かっているといえそうです。
ベストセラーカーがどんなに売れても、限界があります。正直、意匠を少し変え、車名を増やすほうが姉妹車を含めた総数は増えます。同じ車で販売店違いの場合、比較は価格だけで販売店には辛いです。価格が同じでも、意匠が違えば、売り方が変えることができます。