RVブームの再来なのか!? 繰り返されるクロカン系SUV人気の理由とは
みんなが乗っているからではなく、自分が乗りたいから「乗る」時代
こうしたクロカン系SUVブームの背景には、クルマとしての進化があります。
いまもっともホットなクロカン系SUVであるジムニーは、旧型と比べるといい意味で「普通のクルマ」になりました。遅い、取り回しが悪い、高速道路でフラフラする、コーナリングが安定しないなど、クロカン系4WDに付いて回る負の印象を払拭したのです。
ユーザーを遠ざけてきたクロカン系4WDのマイナス要素は、現行型のジムニーやGクラス、ラングラーにはありません。
いかにも強そうな、いかつい風貌をしていますが、その実、近くのスーパーマーケットに行く足としてもなんの不自由もないです。
また、山道の連続するコーナーも素直に曲がってくれ、それでいてミニバンやスポーツカーでは決して真似できない高い悪路走破性を持っているのが現在のクロカン系SUVの特徴となっています。
クロカン系SUVの性能向上について、ジープの開発を担当するリッジ・シルバート氏は、次のように話します。
「北米のジープ市場において、たしかにグランドチェロキーやコンパスといった車種のシェアは高いのですが、ラングラーのシェアは着実に増えています。
ラングラーに対するアメリカ人の親近感が昔から高いということもありますが、女子高生が卒業祝いに買ってもらうといった例も多くあり、やはり幅広いユーザー層がラングラーに乗り始めています。
これは、他のSUVにはない『いかつい』デザインが評価されているだけでなく、ラングラーが乗用車系SUVに性能面で遜色なくなったことが主因であると言えるでしょう」
一方でクロカン系SUVの飛躍は、いまも昔も決してブームではないとの意見もあります。
埼玉県秩父市にある「オフロードパーク・ブロンコ」のオーナーでもあり、四駆専門誌の編集者でもある竹村吉史氏は、こう話します。
「1980年代から1990年代のクロカン四駆が飛躍的に台数を伸ばした時期に、その現象はブームと呼ばれました。でも個人的にはブームではなかったと思っています。
そもそも四駆は非常に長く使えるツールであり、あの頃も本物を見抜くことができる人がまず乗ったのです。旧車も多く、れっきとした“四駆文化”になりつつありました。
ところが、その矢先に実施された排ガス規制(自動車NOx・PM法)で、長く乗れるはずの四駆に乗り続けることができなくなってしまった。そのため、一過性のブームとして片付けられてしまったのです」
さらに竹村氏は、現状についてこう分析します。
「そもそも、当時の四駆の台数と比較すると、現状のジムニーやGクラス、ラングラーの台数は少なくてブームとはいえないでしょう。
しかし、ブームにはならなくても、着実に文化として定着している手応えは感じます。
今クロカン系SUVに乗っている人は、そもそもトレンドにあまり流されないし、自分たちのライフスタイルに合った道具としてクロカン系SUVを選んでいます。
ジムニーなどは瞬発的に売れ過ぎたのでブームとして捉えられがちですが、ユーザーが成熟した選択眼で選んだものは廃れにくいです。
また、クルマの性能が飛躍的に進化しているので、今後は法規制などで乗れなくなることもありません。
ブームといわれた前回とは違って、ユーザーの年齢層は20代から30代と若く、経済状況を考えると長く乗っていく可能性が大なので、確実にクロカン系SUVは残るでしょう」
※ ※ ※
クロカン系SUVはほかモデルと比較すると、モデルサイクルが非常に長いのが特徴です。
言い換えれば、普遍的なことがクロカン系SUVの魅力で、ジムニーもGクラスもラングラーも変わらぬことが最大の「性能」なのです。
ラダーフレームを有するクロカン系SUVは、どのメーカーでも開発できるわけではありません。
ただ、ユーザーが選択できる車種が広がっていけば、このカテゴリーは確実に定着していくはずなので、2020年あたりに登場すると噂されている、新型トヨタ「ランドクルーザー」をはじめ、今後のクロカン系SUVの未来が非常に楽しみです。
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【了】
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。
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