売れ筋モデルのマンネリ化? N-BOXやノートが人気上位に固定化した理由
2018年のトップ5のうち4位まで背の高い軽自動車が独占
ダイハツ「タント」は、2015年が3位、2016年から2018年は連続して4位です。現行型の発売は2013年に遡り、2019年7月にフルモデルチェンジされる予定ですが、時間が経過しても売れ行きを下げません。
ダイハツの販売店は次のように説明します。
「タントは生活のツールになり、歴代モデルを乗り継ぐお客様も多いために売れ行きが安定しています。フルモデルチェンジが近づくと、お買い得な特別仕様車も設定され、これが中心になって売れ行きを支えています」
また、小型/普通車では日産「ノート」が注目されます。ノートは、もともと販売ランキングの上位に入っていましたが、2016年11月にハイブリッドの「e-POWER」を加えて、売れ行きに一層の弾みが付きました
2017年は総合順位が5位で、小型/普通車(軽自動車を除く)ではプリウスに次ぐ2位です。2018年も総合順位は5位ですが、軽を除いた小型/普通車のランキングでは1位に。国内の登録車販売ランキングで、統計史上初めて日産車が1位を獲得したといいます。
なお、2018年は、1位から4位を背の高い軽自動車が独占するという、驚くべき順位になりました。
クルマに目新しさや趣味性を求めるユーザーが減った
販売ランキングの上位車種が定番化した理由は、軽自動車のように実用的な車種が売れ筋になり、クルマに目新しさや趣味性を求めるユーザーが減ったからです。
目新しさや趣味性の感じられる新型車が登場すると、関心を集めて売れ行きを一気に伸ばします。スポーツカーはその典型で、「欲しいときが買いたいとき」です。その代わり好調な需要は長続きしません。
一方、実用的な車種は、車検期間が満了したときなどに乗り替えられることが多いです。ユーザーが経済的な買い方をするので、発売直後に需要が急増することは少なく、欲しいと思ったときに急いで買う必要がないともいえるでしょう。
販売ランキングが定番化した理由に、クルマのデザインがフルモデルチェンジで大きく成長する時期を過ぎて、安定期に入ったことも考えられます。
とくに、日産「セレナ」やトヨタ「ヴォクシー」のようなミニバン、N-BOXやタントのような軽自動車は、フルモデルチェンジをおこなっても外観があまり変わりません。室内の広さも、5ナンバーサイズや軽自動車の枠内では限界に達しているので、ボディの基本スタイルはもはや変えようがないのです。
そうなるとフロントマスクの形状をアレンジする程度になり、進化するのは主に安全装備や実用燃費です。ユーザーも新型車の中身を精査して冷静に選ぶため、フルモデルチェンジ直後の伸び方は穏やかです。
※ ※ ※
思わず飛び付きたくなる新型車が減ったのは、クルマ好きとして寂しい気持ちもありますが、クルマの売れ方が洗練されてきた結果ともいえるでしょう。
N-BOXやタントがすべてのユーザーに適するわけではありませんが、試乗すると「これで十分、いやこれが欲しい」と思わせる商品力を持っています。
軽自動車は、日本のユーザーを対象に開発されるので、好調に売れるのも当然です。それでも偏りが大きいのは、軽自動車の増税を防ぐ意味でも好ましくありません。
販売ランキングの上位は、2016年頃のように、小型/普通車と軽自動車で分け合うような状態が好ましいです。
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【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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