時代を先取ったがために残念な結果に!? 出るのが早すぎたクルマ5選

現在のミニバンの先祖ともいえる偉大なクルマ「プレーリー」

●トヨタ「プログレ」

小さな高級車としての志は高かった「プログレ」

 輸入車では数多く存在している「小さな高級車」ですが、かつてはトヨタ「クラウン」や日産「セドリック/グロリア」も、小型車枠である2リッター以下の排気量で5ナンバーサイズに収まるグレードが販売の中心でした。

 しかし、1989年の自動車税改正によって、全幅が1700mmを超える3ナンバーの普通車でも税額の差がなくなったことで、5ナンバーサイズに収まる高級車は税制面では意味がなくなってしまいます。

 しかし、1998年に発売されたトヨタ「プログレ」は、あえて全幅が1700mmに収めることで「小さな高級車」をコンセプトに開発されました。

 全長も4500mmでありながら発売当時の「クラウン」と同等のホイールベースで室内空間は広く、全色5層コートのボディカラーや静粛性向上のために吸音材を多用し、レーダークルーズコントロールや本革シート、高性能オーディオを装備するなど、中身も上質なクルマとなっていました。

 エンジンは2.5リッターと3リッターの直列6気筒で、駆動方式はFRとし、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」をターゲットにしていたといわれていますが、落ち着いた品のよさを追求したため、保守的過ぎた内外装のデザインは地味と評価され、年配者にしか受け入れられませんでした。

 クラウンと大差ない車両価格だったためと、2005年に日本国内でレクサスブランド展開開始もあり、そのポジションをレクサス「IS」にバトンタッチするカタチで2007年に生産を終了しました。

●日産「プレーリー」

いまのミニバンの要素をすべて持っていた「プレーリー」

 1982年に日産は画期的なパッケージの5ドアワゴン「プレーリー」を発売しました。

 ルーフを高くしたルックスや、コラムシフトにベンチシートの3列シート、開口部が大きなセンターピラーレス構造の後席両側スライドドアによる優れた乗降性や居住性など、現在の国内市場で人気カテゴリーであるミニバンの元祖といえるものでした。

 FFセダンベースだったので、低いインパネや大きなガラスエリアの採用で優れた視界を確保でき、運転しやすい構造に仕立てられているのも、きちんと考えられた結果です。

 また、当時の「パルサーバン」から転用されたサスペンションのトーションバー・スプリング(ねじりバネ)によって、驚くほどの超低床レイアウトを実現したことで、回転対座シートが備わる3列シート8人乗り、折り畳み式後席の2列シート5人乗り、固定式後席の採用で快適性を重視した2列シート5人乗り、4ナンバー登録の商用バンの3人乗りと6人乗りなど、同じ車種とは思えないほどのバリエーションを展開しました。

 しかし、最大のセールスポイントであった「センターピラーレス構造」によるボディ剛性の低さや、最高出力100馬力の1.8リッターと、85馬力の1.5リッター直列4気筒SOHCエンジンの非力さもあり、コンセプトは高く評価されながらも販売数は伸びませんでした。

 その後1985年のマイナーチェンジではリアハッチゲートの構造変更によるボディ補強を施し、110馬力を発揮する2リッターエンジン搭載車や4WD車も追加ラインナップしましたが高い評価を得られず、1988年に2代目へバトンタッチしました。

 2代目プレーリーはオーソドックスな設計のミニバンとなり、パワフルな2リッター直列4気筒DOHCの「SR20DE型」エンジン搭載などにより一時的に販売数は増えたものの、同時期のホンダ「オデッセイ」に勝つことはありませんでした。

 3代目では車名が「リバティ」に変更されたことでプレーリーの名前は消えることとなり、さらに後継の「ラフェスタ」になりますが、トールワゴンタイプの方が使い勝手がよいため、最終的には「セレナ」に統合されます。

※ ※ ※

 今回紹介したクルマはどれもコンセプトが明確で、アイデアあふれるものでした。もし、当時売れていたらと思いますが、運命のいたずらなのかトップセラーにはならず、消えてしまいます。

 いまのクルマは「失敗できない」という重圧なのか、保守的なイメージすら感じられます。しかし、結果的に失敗してしまったこの5台のクルマからは、志の高さがうかがえるのではないでしょうか。

【了】

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