トヨタ「プリウス」ブランド復活? テコ入れから半年、販売回復の理由とは
トヨタのプリウスは、2019年で誕生から22年経ちました。初代モデルが登場した際は、「世界初の量産ハイブリッド車」として話題を集め、その後世界的な「エコブーム」によってハリウッドセレブからも愛されるモデルまでに成長し、「ハイブリッド車=プリウス」というブランドイメージが定着。しかし、最近ではブランドの勢いが衰えていますが、「プリウスブランド」は復活をするのでしょうか。
『プリウスブランド』の復活なるか?
2019年4月の新車販売台数(登録車)では、売れているクルマのイメージが定着化していた日産「ノート」を破り、トヨタ「プリウス」が約16ヶ月ぶりに首位の座を奪還しました。
過去に、「プリウス」は売れているクルマの代名詞として君臨し続けましたが、なぜ販売不調といわれるようになったのでしょうか。
初代「プリウス」は、世界初の量産ハイブリッド車として1997年に発売しました。その後、2代目(2003年)、3代目(2009年)、そして現行モデルとなる4代目(2015年)とハイブリッド性能の進化や時代に合わせたデザインへの改良とともに歴史を重ねています。
とくに、3代目モデルでは、年間の販売台数を31万5669台(2010年)、31万7675台(2012年)と過去にもあまり例がない30万台超えを2度も達成。名実ともに「売れているクルマ」だったのです。
2015年には、4代目モデルにフルモデルチェンジをおこないます。トヨタとしては、「トヨタのクルマづくりを大きく変える」TNGA(プラットフォーム)の採用第一弾モデルとして華々しくデビューしたモデルでした。
しかし、「歌舞伎顔」ともいわれる垂れ下がったヘッドライトやテールライトのデザインなどについて、日本のユーザーからは不評が相次ぐ結果となりました。
また、同社のコンパクトハイブリッド車「アクア」(2011年)や日産の電動パワートレイン車「ノート e-POWER」(2016年)の登場などもあり、新車販売台数の上位には位置しているものの過去と比べて「プリウスブランド」の勢いは落ちています。
最近の軽自動車を除く新車販売台数では、2017年にピーク時より大幅に減少しつつも16万0912台で首位に輝きます。2018年には、11万5462台となり、首位「ノート」と2位「アクア」に続く3位と販売台数の下降傾向は止まりません。さらに、月間販売台数で見ても冒頭のように首位からは遠ざかっていました。
そんななか、『プリウスブランド』の低迷を打開するためにトヨタは歴代「プリウス」でも類を見ないほどの大幅なマイナーチェンジを2018年12月に実施しました。
マイナーチェンジでは、「歌舞伎顔」とも揶揄され不評だったフロント・リアのデザイン変更や、衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車標準装備したほか、夏場のシート蒸れを解消する吸い込み式のベンチレーションを新たに前席へ採用するなど日常の使い勝手の向上も図っています。
マイナーチェンジに至った経緯について、トヨタ広報部は次のように話します。
「デザイン面では、従来モデルオーナーからも“抵抗があった”という声が確かにありました。クルマを選ぶ段階でも『デザインが残念』という声が多かったようで、デザインを変えなければということで変更して、プリウスの良いところを見てもらうためにも、『好んで頂けるデザイン』にしています」
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また、「プリウス」は2018年6月に発表された「クラウン」や「カローラ スポーツ」に採用されている専用通信機DCMを搭載することで「コネクティッドカー」としても生まれ変わっています。
LINEアプリによる「プリウス」との会話やオペレーターに口頭で情報検索や目的地設定の依頼が可能なサービス、音声対話で目的地の検索・設定が可能なエージェントシステムなど「つながるクルマ」へと進化することで、『プリウスブランド』のイメージ向上を図っているのです。
16ヶ月ぶりの首位! 販売現場はどう見る?
トヨタ自体が主力モデルの大幅なマイナーチェンジを実施した影響について、トヨタの販売店スタッフは次のように説明しています。
「プリウスが久しぶりに販売台数で上位にきたのにはいくつか理由があります。とくに大きな要素としては、2018年12月のマイナーチェンジで、デザイン変更と『トヨタセーフティセンス』を全車標準したことです。ユーザーにとって、デザインはクルマを選ぶ上での重要なポイント。さらに、近年注目される安全装備も充実したことで販売台数が伸びているといえます。
上記をふまえて、4月の販売台数が伸びたもうひとつの理由は、法人のお客様が会社の決算期が変わったことで、社用車などを新調するなど切り替わりのタイミングだったことが大きいです」
このように、トヨタ車は一般ユーザーのほかに法人顧客を多く抱えている点も強いようです。今回、マイナーチェンジを実施した「プリウス」でも、エントリーグレードの「E」では安全装備を採用したため重量増となり、カタログ燃費が前モデルの40.8km/Lから39.0km/Lと下がっています。
しかし、法人所有の場合は基本的にエントリーグレードを購入することが多く、多少の燃費値より安全機能が充実したほうが、メリットが大きいのです。
かつてハイブリッド車の代名詞的存在として、世界中で『プリウスブランド』を確立してきました。しかし、急速な電動化の波によりユーザーのトレンドは、テスラ車や日産「リーフ」のような電気自動車(EV)にシフトしています。
また、いまの日本市場では各社がハイブリッド車をラインナップし、プリウスは「唯一無二の存在」から「数あるひとつのモデル」と変わったことも『プリウスブランド』の勢いが落ちた理由かもしれません。
【了】
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