なぜ道幅狭く感じる? クルマの巨大化と道幅に事故発生の要因が存在
道の広さはあまり変わっていない
こうしてクルマが大型化している傾向にある一方で、クルマが走る道の幅は昔と変わらないという場合がほとんどです。そうであれば当然、ドライバーから見て道は狭く感じられます。
たとえば、古い街道沿いで家が道路すれすれにあるような場合、道の狭さを感じながら運転することになります。そうした状況で歩行者や自転車を避ける際、クルマはセンターライン寄りで走ることになりますが、その場合は対向車とのすれ違いがギリギリとなることは避けられません。
大型化することの弊害は、駐車場でも起きてしまっています。クルマが大きくなったことで、ドライバーは知らないうちに運転しづらい環境を強いられているといえるのです。
では、道路の幅をもっと広げることはできないのでしょうか。
道路の幅は、幅員(ふくいん)といいます。国には車道に関する既定があり、そこで決められている交通量や車線の数などを基にした区分によって、幅員は定められています。
1車線あたりでみると、幅員は基本的に3500mm。最大3750mmで、最小2750mmとしています。
つまり、前述した現行カローラスポーツは全幅1790mmですから、幅員3500mmの道路に対してクルマの横幅が占める割合は5割を超える結果となりました。
こうしたなかで、警視庁は幅員が広い方が歩行者や自転車の死傷事故割合が減少するというデータを発表しています。
それによると、片側相互通行の車道全体の幅員が5500mm未満では、自転車が45.3%と最も多く、クルマが23.9%、歩行者が16.5%と続きます。一方、幅員が5500mm以上の場合はクルマが49.2%となり、自転車が23.4%、歩行者が11.5%まで低下するのです。
しかし、道路側には道路側の事情がありますから、決められているものをすぐに変えるわけにはいきません。法規制についても、国土交通省のなかで旧建設省系の「道路局」が担当している一方で、それとは別に旧運輸省系の「自動車局」も存在するというのが実情です。
また、歩行者事故を含む自動車事故全般とクルマの大型化の因果関係を考えることについては、国や地方自治体、そして自動車メーカーにおいても盛んにおこなわれているとはいえません。
ブレーキ性能を含めた車両性能が向上し、いわゆる衝突被害軽減ブレーキを搭載したクルマも増えている昨今。技術革新による安全対策が進んでいることは確かですが、道とクルマの大きさの関係について議論することが求められています。
【了】
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
グローバル化だかプラットフォームの共通化だか、メーカーの都合ばかりで、ユーザに負担を強いる。一方で日本の道路事情や駐車場事情は改善しない。車道は広がるどころか車線幅を削って無駄に広い歩道ばかり造っている。雨の休日とかショッピングセンター周りの交通マヒで、救急車が通れるスペースは無く、脳梗塞や心筋梗塞とかやってしまうと、助からないと思われ。