なぜ5ナンバー車多い? SUV人気でも教習車に小型セダンが採用される理由とは
ドライビング技術を学ぶ以外の+αの付加価値を提供
それでは、メーカーラインナップの教習車以外の車種を採用する理由はどこにあるのでしょうか。その疑問について、コヤマドライビングスクール経営企画室長 高田氏は次のように話します。
「コヤマドライビングスクールでは、『どうせとるなら楽しくなくちゃ。』というモットーのもと、さまざまな取り組みをしています。
教習車にアウディやBMWを取り入れているのも、そのうちのひとつです。『憧れの外車に乗って教習をする』という体験を通して、運転をする楽しみを感じてもらいたいという思いや、『家の車がSUVなので、同じサイズのクルマで練習したい』などのお客様の声を聞いて、教習車として取り入れています」
さらに、各教習車の採用理由については、次のように説明しています。
●『アウディA3』若者に人気が高い。加速が力強い。車体が小さく小回りがきく。ハンドルが軽いなど、女性にも乗りやすいと好評。
●『BMW X1』視点が高く、見通しがよい。パワーがある。車体が大きめで安定感がある。SUVに乗りたいという教習生の声。
●『BMW 320i』男女・世代を問わず、憧れのクルマ。高級感・安定感がある。パワーと加速力。ゆったりとした車内。
●『マツダ アクセラ/ホンダ グレイス』一般的な車両サイズ。運転しやすい。表示や操作がシンプル。
このように、1台1台にキチンとした理由があるようで、これからの教習所は、ドライビング技術取得だけでなく+αの付加価値を提供していく流れです。
教習所独自の努力により5ナンバーセダン以外の教習車が採用され、ユーザーからの好評を得ていますが、では何故自動車メーカーは5ナンバーセダン以外の教習車を販売しないのでしょうか。
グレイスをベースとした教習車を販売するホンダの広報部 三浦氏は、
「弊社のグレイス教習車につきましては、コンパクトな5ナンバーサイズのボディにより、教習生にとっての車両感覚のつかみやすさや、運転しやすい取り回しのよさを長所として販売しております」と、一般的な運転感覚を重視したラインナップであることを強調しています。
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免許を取得するために通う施設という印象が強い教習所ですが、現在では運転を楽しむためのいろいろな取り組みや工夫が行われています。
メーカー保証が付いているという安心感を重視する教習所や、免許取得後に乗るクルマのサイズを想定した教習など、その方向性はさまざま。
各教習所が選ぶ教習車のラインナップには、そんな深い想いや指導方針などが示されているのです。
【了】
指定自動車教習所の教習および検定で使用する車両は、「標準試験車両と同程度以上のもの」と定められています。また、標準試験車両の基準は警察庁通達で定められています。
アウディA3は全長がこの標準試験車両に足りないので、通常は使用されません。
また、BMW 320iとBMW X1は全幅が標準試験車両をオーバーしています。これは「同程度以上」であるため問題とはなりませんが、わざわざ難易度の上がる車両にすることはお客様ニーズに添わないため(お客様ニーズの最大公約数は最短時限で修了し検定に受かること)、使用するのは31時限のうちのせいぜい1~2時限ではないでしょうか。
なお、セダンタイプ以外の形にした場合、難易度が上がると見るか下がると見るか微妙で公安委員会の審査(使用する教習車両について必ず審査がある)を通らない可能性があるため、あえてワゴンや2ボックスを選ぶことは少ないと思います。
メーカーの言うこと(建前)と特殊な自動車学校1校の取材だけで記事を書くことはやや危険かと思いますので、コメントしました。