なぜ高速道に桜咲く? 道路公団時代の名残、桜前線計画とは
高速道路でよく見かける桜の木。サービスエリアやパーキングエリアなどに桜が多く植えられているのはなぜなのでしょうか。
高速道路のSA・PAに桜が多いのはなぜ?
例年、3月中旬から始まる桜の開花は、桜前線とよばれて日本列島を縦断しながら北上します。
春の風物詩としてわれわれの目を楽しませてくれる桜の花ですが、日本全国をつなぐ高速道路では、桜に関するある取り組みが行われていました。それはどのような取り組みなのでしょうか。
高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで、「高速道路に桜前線」という看板を見かけたことがある人もいるかと思います。
これは、旧日本道路公団の創立30周年記念行事の一環として、1986年(昭和61年)4月から「高速道路に桜前線」と銘打った大規模なサクラの植樹が実施されたことに端を発しています。
具体的には、約30キロおきの高速道路のサービスエリアなどに桜を植栽し、その理由を記載した案内看板を設置するというものでした。
当初は、高速道路の開通延長3761kmに対して、全国のサービスエリア60か所と主要パーキングエリア58か所に4500本の桜を植栽するという計画で、1986年以降に新設された道路のサービスエリアなどにも桜の植樹が継続して行われていました。
また、全国組織という日本道路公団の利点を生かし、1989年(平成元年)ごろからは、日本列島に桜前線を印刷したポスターに5分咲きや満開などの開花状況のシールを作成し、桜前線がどこまで北上しているかという情報を提供していたといいます。
サービスエリアなどに植樹された桜は、気象庁が桜前線の開花判定に用いる標準木と同種の「ソメイヨシノ」を多く採用。地域環境特性を踏まえて、北海道では「オオヤマザクラ」、沖縄には「ヒカンザクラ」が植樹されました。
この「高速道路に桜前線」の取り組みについて、ネクスコ西日本の広報部は次のように説明します。
「旧日本道路公団が実施していた『桜前線』とは、高速道路を利用されるお客様に桜の開花を楽しんでもらい、桜前線が北上する季節感を感じていただくことを目的としていました。
1987年(昭和62年)には、この取り組みに対して財団法人日本さくらの会より『さくら功労者賞』を受賞しています。
さらに1994年(平成6年)ごろには、この取組みを知った気象庁から日本道路公団に対して『高速道路に桜前線』について情報提供してほしいという依頼があり、サクラの開花情報を提供していた時期もありました」
※ ※ ※
その後、2005年の日本道路公団民営化にともない、ネクスコ東日本、中日本、西日本の3社に分割されます。
そのため、残念ながら現在では開花情報の提供は休止状態となっていますが、案内看板はそれぞれの会社名に変更されて今も残っているのです。
「高速道路に桜前線」の取り組みは、高速道路を走行することで桜前線が移動する様子や日本の美しい景色も楽しむことができるという、日本全国にネットワークを持つ日本道路公団ならではの取り組みだったといえるでしょう。
【了】
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。