高齢ドライバー事故を防ぐ「サポカー」の比較が専門家でも難しい理由とは

複雑に分けられているサポカーの区分

ホンダ N-BOXに搭載された安全装置が動作する様子(イメージ写真)

 こうして誕生したサポカーですが、あくまでも概念であるため、自動車メーカー間の技術を同じテーブルで比較することが難しいといえます。
 
 そのうえで、サポカーの技術について説明したいと思います。

 サポカーに含まれる技術で、最も重要度が高いのが「衝突被害軽減ブレーキ」です。一般的には「自動ブレーキ」と呼ばれるものです。

 仕組みとしては、クルマに搭載されているカメラやレーザー、レーダーなどのセンサーが、進行方向にあるクルマや壁、建物、そして歩行者やクルマなどを検知して、音や光などでドライバーに対する注意喚起を行います。それでもドライバーがブレーキを踏まない場合に、自動的でブレーキが作動するという流れです。

 ただし、衝突を確実に回避できる保証はありません。あくまでも、衝突の被害を軽減するための仕組みです。

 とはいっても、自動ブレーキについて一定の性能があることを消費者に対して説明することは、国の責務です。そのため、クルマの技術についての法整備を行う国土交通省では、2018年3月に衝突被害軽減ブレーキが一定の性能を持っていることを国が認定する制度を作りました。

 それによると、大きく3つの評価基準があります。

 その1:静止している前方のクルマに時速50キロで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキが作動して、衝突しないか、または衝突時の速度が時速20キロ以内になること

 その2:時速20キロで同一方向に走行する前方のクルマに対して、時速50キロで接近した際に、衝突被害軽減ブレーキによって衝突しないこと。

 その3:上記「その1」および「その2」で、遅くとも衝突被害軽減ブレーキが作動する0.8秒前までに、ドライバーに対する警報が作動すること。

 以上の3点をご覧いただいてもお気づきの通り、性能として“かなりの幅”があります。

 国土交通省は、どのメーカーのどの車種をいつ認定しているかについて2019年4月に公表しました。ただし、車種ごとの詳しい試験結果は公表していません。

 またサポカーでは、衝突被害軽減ブレーキに加えて、アクセルとブレーキの踏み間違い防止装置技術を付加した車種を「サポカーS」に認定しています。さらに、車線逸脱防止装置をはじめとする他の追加装備の有無などによって、「サポカーS・ワイド」「サポカーS・ベーシック+」、そして「サポカーS・ベーシック」といった別の区分けも設定されている状況です。

 国は、こうしたサポカーSにまつわる技術の評価基準について、現在のところ公表していません。

 こうしたなかで、一部の自動車技術雑誌などが、独自にサポカーやサポカーSの性能評価を行い、その結果を公表しています。

 ただし、これらの実験条件の設定方法をはじめとする公平性について、一部の自動車メーカーからは異論も出ていることから、これらの実験結果を鵜呑みにするべきではなく、あくまでも参考資料のひとつとして見るのが良いでしょう。

 このような理由から、「どのサポカーが一番安全なのか?」という問いに対しては、現時点では明確な回答をすることは難しいというのが私の見解です。

【了】

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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