日産「GT-R」やマツダ「ロードスター」 平成元年生まれのクルマが海外で絶大な人気を誇る理由とは
海外への輸出で国内市場の価格も高騰中
平成元年生まれ車種では、「ロードスター(NA型)」や「スカイライン GT-R(R32型)」は現在でも人気が高く、中古市場で活発に取引が行われています。
初代「ロードスター」は、最近大きく価格が高騰しており、これらのクルマの人気は国内にとどまりません。なかでも「スカイライン GT-R(R32型)」は、北米への輸出が多くなっているのです。
アメリカでは、輸入車に対して厳しく、正規で輸入されなかった車種は一定期間の間上陸が許されないという決まりが連邦自動車安全基準(通称:FMVSS)にあります。
FMVSSでは、右ハンドル車も許可されません。それがいわゆる「25年ルール」で、2019年の場合では1994年式のクルマがようやく北米で走ることができるのです。
そのため、「スカイライン GT-R(R32型)」は2014年夏に輸入が解禁となりました。2019年で製造から25年を迎える1994年は、R32型の最末期。程度も良く走行距離が少なめの個体が、北米にわたることも多くなっていくでしょう。
なぜ、これほどまでに北米で「GT-R」の人気が高いのでしょうか。それは、「GT-R」が出演する映画の影響もさることながら、長きにわたって日本に『未知のモンスターみたいな市販車がいる』のを知っていたのに、25年ルールのため走らせることすらできなかったなど、ファンの間で半ば神格化していたことなどが理由にあげられます。
そもそも北米には、「燃費がいい」「故障が少ない」「価格が安い」などの理由から日本車を好む文化が背景にあることや、さらに北米に正規輸入されていない「性能が高い日本車」に憧れる傾向や、北米仕様の日本車を日本仕様に改造・日本製のチューニングパーツでカスタムする「JDM(Japanese domestic market)」というジャンルが存在。
そのため、今回取り上げた平成元年生まれのクルマ以外にも、80年から90年代の日本車が多数北米に輸出されています。ホンダ「シビック」「CR-X」、「シルビア(S13型)」など、走り屋やドリフトの影響を受けたクルマのほか、25年ルールが除外された1994年式の日産「セドリック・グロリア(Y32型)」までもが北米の地を踏み、北米流カスタムが施されることも。
JDMの究極は「右ハンドル」なので、日本仕様そのものを買って乗ることは、北米の日本車趣味人には最高の到達点の一つといえます。
日本車ブームは、北米だけにとどまりません。欧州でもJDMカスタムや日本で走っていたクルマの輸入が盛んです。代表例は、日産「フィガロ」で、英国を中心に欧州各国に数多くのファンがおり、オーナーズクラブまで存在します。フィガロは日本専売車ですので、もちろん全車が海を渡って欧州に向かいました。
今後も、引き続き海外に続々と日本車が輸出されていくはずです。それによって、すでに少なくなっている国内市場での個体数がさらに減って、一層の価格高騰を招くことが予想されます。
今回、取り上げた平成元年生まれのクルマたちだけでなく、90年代日本車の価格動向に注目です。「欲しい!」と思ったら手が届かない、ということが起きるかもしれません。
【了】
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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