先行したはずが世界に遅れ… なぜ日本でEVは普及しない? 充電インフラ増加でも認知度が高まらない理由とは
EVが流行らない、本当の理由
EVが流行らない各種の理由以外に“本当の理由”があると、筆者(桃田健史)は考えています。これまで、世界各地でEVに関する取材をしてきましたが、そうした経験に基づく私見としご紹介します。
第一は、自動車メーカーがEV車の販売に本気になっていないことが挙げられます。2019年2月時点で、EVの製造と販売が多い自動車メーカーは、世界中で日産とテスラだけで、両社ともEVの大量生産に乗り出したのは2010年代に入ってからです。
なぜ、その他の自動車メーカーはEVに本気ではなかったのでしょうか。それは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、内燃機関と呼ばれる原動機の製造コストが、EVのモーターやバッテリーと比べるとかなり安いということが理由といえます。
自動車メーカーとしては、内燃機関を少しでも長く作り続けることで、製造コストを安く抑えたいという意向が強いため、内燃機関にモーターを追加するハイブリッド車、またはEV走行距離が短いプラグインハイブリッド車を、次世代車の主流にしているのです。
日産も内燃機関の製造をしていますが、経営戦略として他社がやらないことをいち早く仕掛け、先行者利益を追求しようとしました。
この他、最近はメルセデス・ベンツやBMW、そしてアウディ、ポルシェを含むフォルクスワーゲングループから新型EVの発表が相次いでいます。これは中国で2019年から始まった、新エネルギー車の販売義務化に対応した動きです。
製造コストは高くても、中国のように販売義務があり、それをクリアできない場合のペナルティが高額である場合、自動車メーカー各社は『EVを作らざるを得ない』状況になります。
もうひとつ、EV車が流行らない理由は、リセールバリュー(下取り価格)が低いことが挙げられます。「リーフ」の場合、2010年から2016年までの第一世代の値落ちは極めて大きいのが実情。一般的に、新車の販売台数を伸ばす手法の定石は、中古での残価率を上げ、乗り換え需要に対する好循環を作ることが効果的です。
しかし、2017年10月に第二世代「リーフ」を発売してから、第一世代「リーフ」の中古車に対する割安感から、リーフの中古車価格が徐々に上がってきたという話もあります。
日産「リーフ e+」の発売を機に、中古車市場でのリーフ人気がさらに高まり、日本でのEV普及が進むことを期待したいです。
【了】
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。