クルマデザインなぜ似てきたのか? 昔は個性豊かもいまは画一化で見分けつかず
最近のクルマは車種どころか、自動車メーカーすらもパッと見ではわかりづらくなりました。昔のクルマは外観の個性が豊かでしたが、今は画一化され見分けにくくなっています。なぜ、近年のクルマは似たような車種ばかりになってしまったのでしょうか。
近年のクルマはなぜ似たような車種ばかり!?
古い街並みを撮影した写真に映り込む1970年頃までのクルマは、後ろ姿だけで車種を特定できます。フェンダーの一部が見えているだけで、車種がわかることも多いです。ところが最近のクルマは車種どころか、自動車メーカーすらもパッと見ではわかりづらくなりました。昔のクルマは外観の個性が豊かでしたが、今は画一化され見分けにくくなっています。
なぜ、近年のクルマは似たような車種ばかりになってしまったのでしょうか。
商品ラインナップに「魂動デザイン」と統一したデザインテーマを取り入れ、世界的に高評価を得て全商品が成功したいい例がマツダです。「魂動デザイン見たときに、心や魂を動かせるデザイン。それが基本です」と話すのは、新型「マツダ3」のチーフデザイナー土田康剛氏。デザインによってメーカーの方向性を見せていく良い流れができたと思います。
かつての自動車メーカーはいろいろなボディ形状を模索していましたが、近年では人気を高められるデザインがわかってきたので、見せ方も似通っています。
また今は自動車メーカーごとの統一された表現も重視され、フロントマスクなどは意識的に共通化しています。そうなれば画一化はさらに進みます。
クルマのデザインが安定期に入った影響もあるでしょう。1970年頃までは、10年前のクルマは古く見えましたが、今は時間の経過に伴うデザインの変化が小さいです。トヨタ「エスティマ」、日産「キューブ」、三菱「パジェロ」などは、現行型の発売から10年以上を経過しながら、今でも販売されて古さをあまり感じません。
フルモデルチェンジを行っても先代型との違いがわかりにくい車種も増えました。たとえば先ごろBMW3シリーズがフルモデルチェンジを行って7代目に進化しましたが、外観写真をはじめて見た時は「これが新型?」と、筆者(渡辺陽一郎)は思ってしまいました。マイナーチェンジのようにも見えてしまいます。デザインの進化が安定期に入った証です。
デザインの変化が乏しいことは、クルマの売れ行きにも影響を与えます。機能の向上とあわせてデザインが目立ってカッコ良くなれば、購買意欲も高まりますが外観の変化が乏しいと買いたい気持ちも盛り上がりません。
そうなると外観のデザインを大幅に刷新すれば、売れ行きも一気に伸びるのでしょうか。現行トヨタ「プリウス」が外観デザインを思い切り個性的にしたのも、何となくわかる気がします。先代「プリウス」は、いかにもエコカーを感じさせる無難な形状で爆発的に普及しました。そこで現行型は、無難では振り向かないユーザーを取り込むべく、プラットフォームの一新による走行安定性の向上と併せ、個性的で楽しいクルマをめざしたのです。しかしこれが裏目に出てしまいました。
とはいえ必要なチャレンジだったでしょう。「ここまで思い切ってはダメ」という限界も分かったからです。