『自動ブレーキ』は良くも悪くも浸透 過信事故増えるも世界では義務化の方向へ

「ぶつからないクルマ」で認知された自動ブレーキ。性能を過信し過ぎた結果、事故となるトラブルも増えていますが、世界的には義務化の方向に進んでいるようです。

「ぶつからないクルマ」を機に広まった「自動ブレーキ」

 数年前、テレビCMで『ぶつからないクルマ』という名称が出てきたことに、多くの方がビックリしたと思います。有名タレントが実際にハンドルを握り、障害物の直前でくるまが自動的に急ブレーキをかける、というストーリーです。

 しかも、キャッチコピーで『ぶつからない』と言い切ってしまったことに、一般ユーザーのみならず、自動車業界関係者も『そこまで言っちゃって、本当に大丈夫なのスバルさん?』という不安と驚きを抱きました。

スバル「アイサイト」のキャッチコピー『ぶつからないクルマ』で自動ブレーキは一躍有名に

 普通なら、『ぶつかりにくいクルマ』程度に抑えるところでしょうが、スバルとしては自社でコツコツと開発してきた“虎の子”を一気に普及させるためには、思い切ったマーケティング戦略が必然だったのだと予想できます。

「アイサイト」が登場した頃、スバルは北米市場重視の経営方針を打ち出しており、スバルブランドとして大きな転換期にあったことも、「アイサイト」の過激CM実現を後押ししました。

 実際、「アイサイト」導入でスバルの中核商品である「インプレッサ」と「レガシィ」の販売が増加。これまでスバル車に乗ったことがない、若い主婦層や高齢ドライバーが『自動ブレーキがあると安全だ』と、スバル車を買ったのです。このような背景によって、世の中では『自動ブレーキ』という名称が広まります。

「アイサイト」がビジネスとして成功したことで、スバル以外のカーディーラーには『おたくのくるまは、自動ブレーキがついているの?』という問い合わせが増加しました。

 そうした声を受けて、トヨタをはじめとした各社は、新車価格が高くないモデルでも自動ブレーキの標準装備化を進めていきます。

 海外ブランドでは、メルセデスやBMW、国内ブランドでも高級車の一部では、自動ブレーキを装備するモデルがありましたが、大衆向けのモデルまで採用枠を広げていきました。

 最初は、赤外線やレーザーなどを使って障害物の位置を認識するシステムが主流で、「アイサイト」のようなカメラを使ったシステムは珍しい存在。数十cmの間隔でふたつのカメラを配置して、人間の目のように、障害物までの距離を計測する仕組みとなります。

 ただし、赤外線がレーザーに比べてカメラシステムの価格が高いのが課題でしたが、そうした常識を崩したのが、イスラエルの企業です。

 ひとつのカメラで、障害物までの距離を正確に判定し、さらに歩行者や対向車などの動きを正確に把握することができるシステム。こうした技術を、画像認識と呼びます。

 この分野で世界をリードしているのが、イスラエルのエルサレムに本社があるモービルアイ社です。現在は、アメリカの大手半導体メーカー・インテルの子会社になりました。

 モービルアイは、画像認識の技術に特化して、半導体の設計を行う企業です。この半導体を、アメリカと欧州の大手自動車部品メーカーが採用。さらに、それらが自動車メーカーに供給されます。

 当初は、ボルボやGMなど欧米メーカーが採用し、その後、日本のメーカーでは日産やマツダがモービルアイの技術を使っているのです。

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