自動運転車なら飲酒もできる? 世界的に期待される「飲んでも自家用車帰宅」は可能か
近い将来、「自動運転」に関する技術はさまざまな分野で活躍するといわれています。一部のユーザーでは、「自動運転」が可能になれば「飲酒運転も実現できる?」というイメージを抱く人も居るかも知れません。しかし、現実的にはなかなか難しいようです。
自動運転への世界共通の期待
自動運転が標準化された近い将来では、『平日の朝、自宅を自家用車で出発して、会社で仕事し、帰りは同僚と居酒屋でお酒を飲んで、帰りは自動運転のボタンを押せば、カーナビの自宅データに従って、寝ている間に家に到着』というお父さんの夢が実現。
まさに「飲んだら、帰りは自動運転で楽々」というような世界を、クルマの自動運転に求めている人が大勢います。これは、日本に限ったことではなく、世界共通の声だと思います。
筆者(桃田健史)は、世界各地でクルマに関する取材をしていますが、近年は自動運転に関する取材が一気に増えました。アメリカ政府の関係機関がサンフランシスコで行う自動運転に関する会議、仏パリや独フランクなどヨーロッパのモーターショー、そして北京での大規模なIT関連見本市など、さまざまなところで自動運転の実用化に向けた動きを見ているのです。
そうした取材現場で感じる部分に、みんなが『お酒を飲んで、帰りは自動運転で家まで送り届けてくれる』ことへの期待が高いのですが、こうした期待の声を実現することは、現状で極めて難しいといわざるを得ません。
なぜ、「飲んだら、帰りは自動運転で楽々」は実現が難しいのでしょうか。正確にいえば、自動運転に対して勘違いしている人が大勢いるため、飲酒と自動運転との関係についても勘違いしているようです。
勘違いしてしまう理由は、多くの人が『自動運転は大きく2つの種類がある』ということ。2種類とは、パーソナルカー(またはオーナーカー)と、サービスカー(またはモビリティサービス)に分けられます。
こうした名称は、一般的ではないと思いますが、自動運転に関する国際会議では常識になっており、パーソナルカーとは、乗用車のことを指します。そして、サービスカーとは、いわゆるロボットタクシーのような公共交通を指します。
そのうえで、こう考えてみてください。「飲んだら、帰りは自動運転で楽々」は、不可能なのではなく、サービスカーでなら十分に可能といえます。なぜなら、サービスカーは小さな路面電車のような存在なので、運転席にハンドル、アクセル、ブレーキなどはなく、自動運転は遠隔で管理されているため、乗車する人が運転に関わることがまったくないからです。
一方、パーソナルカーは自分で運転することもあり得る自動運転車。自動運転のシステムが「こちらで処理できません。手動運転モードに切り替えます」といってきたら、乗車した人は運転しなければなりません。
そうなれば、飲酒している状態で運転することになり、これは絶対に法的に、そして社会通念上、許されることではありません。