昭和から平成そして新時代へ! 魅力そのままに力強くなって復活「ヤマハ セロー250」
サウンドもエンジンも元気ハツラツ!
走り出すと、排気音が元気になっているではありませんか。他のモデルでも見られる現象ですが、日本独自の騒音規制が国際基準に統一されたことで、押さえ込まれていたものが本来の姿を取り戻したわけです。スロットルレスポンスも機敏になっていますし、エンジン全域で力強さを増しています。
カタログスペックを調べてみると、圧縮比が9.5→9.7に上がり、1.9kg-mだった最大トルクが2.1kg-mに、最高出力も18psから20psに向上。また、車両重量は3kg増えて133kg、燃料タンク容量は0.3L減り9.3Lとなっていることがわかりました。
走破性に優れるフロント21/リヤ18インチの大径ホイールは、オフロード車では一般的なサイズですが、通常のトレール車だとサスペンションストロークがもっと長く、最低地上高もシート高も上がって背の高いバイクとなります。ところがセローの車体は低くこぢんまりし、すべて手の内にある感覚です。シート高は830mmで、跨るとソフトなセッティングの前後サスペンションが沈み込み、両足がカカトまでベッタリと地面に届き、不安を一切感じません。
マウンテントレールの持ち味が街乗りにも活きる
ハロゲンヘッドライトの前にスタックバーを備えるなど、オフロードでは道なき悪路も突き進めますが、そんなマウンテントレールは都会を走るのにも頼もしく、51度もあるハンドル切れ角のおかげで細い路地でも臆せず入っていけるうえ、クイックなUターンも可能です。
また、歩くようなスピードでトコトコ走るのも得意で、極低速でもクラッチを当てずにエンジンが粘り強くトルクを発揮してくれます。ゆっくり走るのが苦にならないから心に余裕が生まれ、安全運転にも繋がるはずです。
そして、手中にあるような感覚は、物理的なサイズ感がもたらしているだけでなく、操作性に優れているからこそであり、もしそうでなかったら持て余してしまうという乗り手にとっては残念なことになってしまいます。
昔からセローが多くのライダーを魅了し続けるのは、225ccあるいは250cc(2005年?)というしっかりとした排気量のエンジンを積んでおきながら、まるで原付バイクを操るかのように、もっと言えば自転車、いや手足を動かすかのように自在に乗れてしまうからなのではないでしょうか。日常の足としてフル稼動してくれ、いざとなれば「どこへでも行ける」という確信と自信をオーナーにもたらしてくれます。
1985年に初代誕生。つまり昭和生まれで平成を生き抜き、さらにセローは空冷エンジンのまま、新時代をまた駆け抜けようと再び歩み始めました。今回、最新型に乗って改めて思いましたが、もう充分に完成され尽くしていて、キープコンセプトのまま熟成していけば、足すことも引くことも要りません。このままで、あり続けて欲しいと願うのは、筆者だけではないはずです。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。