トヨタの基準を無視したスポーツカー トヨタ新型「スープラ」は、カスタムのし易さにも配慮されたモデル
トヨタ新型「スープラ」のプロトタイプ試乗会が行われ、いち早く復活した名車を体感しました。
トヨタのフラッグシップスポーツカー
トヨタを代表するスポーツカー「スープラ」の新型モデルがさまざまな場所で目撃されているなかで、公式なプロトタイプモデル試乗会が実施されました。試乗車は、3リッター直列6気筒ガソリンターボエンジン+8速スポーツAT仕様です。
今回、5代目モデルとなる新型「スープラ」はカモフラージュ仕様での試乗でしたが、「スープラ」伝統の直列6気筒ガソリンエンジン+フロントエンジン・リアドライブ方式(FR)を堪能するファーストインプレッションには十分な機会となりました。
新型「スープラ」の開発あたって「同社の『86』開発時と考え方は変わっていないのですが、馬力やサーキットのタイムといった数値を追い求めるのではなく、いかにドライバーがクルマと一体になって運転する愉しさを感じされるかを重要視して開発してきました。(GR開発統括部)」と説明しています。
具体的なポイントでは、スポーツカーとして究極のハンドリング性能を達成するために「ホイールベース/トレッド/重心高」の3要素を重要視し、開発を進めたとのことです。
ホイールベースについては、完全な2シーターモデルとして確立することで、『86』よりも100mm短い2470mmに。重心高は、直列6気筒エンジンを採用しているにもかかわらず、水平対向エンジンを搭載する『86』よりも低重心を実現しています。
前後の重量配分は「50:50」という理想的な数値を達成し、加速・減速・コーナリングなどすべてのシチュエーションで優れたバランスとなり、ボディ剛性はアルミと鉄を効率よく使うことで、『86』の約2.5倍、カーボンボディを使用したレクサス『LFA』を上回る数値です。
エンジン特性では、最大トルクをわずか1600回転から発生させ、アクセルペダルの踏み込み量に応じて思い通りの加速を得ることができます。走行制御のモードは「ドライビングモード(ノーマル/スポーツ)」と横滑り防止機構「ビークルスタビリティコントロール(VSC)」の大きくふたつに分かれ、それぞれ独立して切り替えが可能となります。
『ドライビングモード(ノーマル/スポーツ)』
「スポーツモード」では、エンジン、トランスミッション、ステアリング、サスペンション、LSD、エンジンサウンドなどをよりスポーティな特性に切り替え可能。
『ビークルスタビリティコントロール(VSC)』
通常のON/OFF以外に、中間特性となる制御介入を少し抑えた「トラクションモード」を新たに設定。
新型「スープラ」の開発背景について、開発責任者の多田哲哉氏は次のように話します。
――新型「スープラ」の開発背景について
今回の「スープラ」は、ターンインからコーナリング中、立ち上がりまで、とにかく“ニュートラル”を目指して、開発も一貫してやっています。
ボディ剛性に関しては、乗降性などトヨタには厳格なルールが存在するため、通常の市販車開発では外形サイズに対して室内空間を大きく取ろうとして、曲がりくねった複雑な骨格構成となります。しかし、「スープラ」はシンプルな構造で剛性が一番高くなるように、そのような条件をすべて無視して作っています。
重心高についても、「スープラ」は最低地上高もぎりぎりまで削っています。トヨタ車の平均は140mmくらいですが、世界のスポーツカーを見ると100mmくらいが普通になっていることもあり、今回はコンビニに行っても困らないくらいには下がっています。
――カスタムやチューニングについて
スポーツカーの楽しみと言えるカスタムについては、「86」の時より簡単ではないですが素のままで乗っても高い性能で楽しめるし、輸入車スポーツカーを乗ったお客様にも不満がない質感に仕上がっています。
カスタムパーツについても準備を進めています。カスタムメーカーの皆さんにもお披露目しているので、専用パーツの開発もスタートしていると思います。
また、このクルマはあらゆる部分に穴を用意しています。市販モデルでは塞がっていますが競技に出るときに、ダウンフォースやクーリングで必要となる穴あけ加工の手間を省くために穴を開けてあります。
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今回のお披露目はカモフラージュ仕様でしたが、トヨタは2019年1月14日から米国で開催される「デトロイトモーターショー」にて、市販車モデルをお披露目するとアナウンスしています。
【了】