なぜ軽は「64馬力」規制が残るのか 280馬力規制撤廃の普通車と違う理由とは
中途半端な数値になぜなった? 軽自動車の「64馬力規制」
一方で、2018年現在でも規制が残っているのが軽自動車の「64馬力規制」です。軽自動車は、日本独自の規格をもとに開発・販売され、「全長3400mm以下/全幅1480mm以下/全高2000mm以下/排気量660cc以下」という条件に当てはまるものが対象となります。
「280馬力規制時代」と同タイミングで軽自動車の「64馬力規制」も始まりました。1980年代の軽自動車は、排気量550ccという車種も存在しましたが、最高出力は50馬力ほどです。
そんななかで、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」は、最高出力64馬力という当時としては高スペックなモデルが登場しますが、運輸省(現:国土交通省)のお達しにより、このアルトワークスの馬力が規制数値となりました。
その後、ダイハツ「ミラTR-XX」や三菱「ミニカ ダンガンZZ」、スバル「ヴィヴィオRX-R」などさまざまな改良が施され、64馬力を達成します。普通車の「280馬力規制時代」は2004年に撤廃されましたが、軽自動車の自主規制は現在でも残っているのでしょうか。
軽自動車を販売するスタッフは次のように話します。
「現在も自主規制が残る理由はいくつかが考えられます。まず、普通車の撤廃理由には、競合する海外メーカーに対抗し、商品価値や開発力を高める狙いがありました。しかし、軽自動車は日本独自規格のためその理由は当てはまりません。
さらに、軽自動車の安全面を考えた場合、『64馬力規制』がなくなり馬力が上がっていくと、ボディ剛性や各安全装備などが普通車と同レベルになる必要があります。そうなると普通車とのサイズ感や価格での違いがなくなり、『軽自動車』そのものが必要なくなる可能性もあります。このようなことから、未だに自主規制は残っているのだと予想できます」
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現在の軽自動車は、馬力などのスペック値を求める方向ではなく、近所の買い物など使い勝手の良さが支持されています。そのため、走行性能よりも燃費性能を高めるほか、限られたサイズの範囲でいかに快適な居住性を実現するかが重要です。
また、軽スポーツカーには小排気量でキビキビと走る運動性が魅力なため、軽自動車独自規格や「64馬力規制」の決まった枠組みでどれだけ“良いクルマ”を作れるかという自動車メーカーの個性や魅力が垣間見られるジャンルと言えます。
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