BMW新型「R1250GS」に早くも試乗! ライバル車を突き放す驚きの完成度

ドイツ・ケルンで開催されたインターモト2018に出展され、話題となったBMW新型「R1250GS」。ここではポルトガルで開かれた試乗会に参加したジャーナリスト・松井勉氏のインプレを通して、その魅力をお伝えします。

可変バルブタイミング“シフト・カム”搭載 BMWの新型水平対向エンジンが見せた凄味

 次年のニューモデルがお披露目される2輪界のビッグイベントであるケルン及びミラノのモーターショーが開催されるより前に、早くもBMWモトラッドは新しい水平対向エンジンを搭載した新型「R1250GS/R1250RT」を発表。同時に「R1250GS」のメディア試乗会をポルトガル・ファロ近郊で行ないました。

BMW新型「R1250GS」に試乗中の筆者(松井勉)

 現在販売されている、水平対向エンジン搭載の「R1200GS」、今年モデルチェンジをした並列2気筒エンジン搭載の「F750/850GS」、そして単気筒エンジン搭載の「G310GS」と、3タイプ用意されている「GS」シリーズの長兄であり、最も売れているモデルでもあります。

 1923年、BMWは「R32」で水平対向2気筒エンジン搭載のモーターサイクルを世に出して以来、エンジン、単板クラッチ、トランスミッションケース、そしてドライブシャフトで動力を後輪に伝えるレイアウトを頑なに守ってきましたが、現行の「R1200GS」が登場した2013年、エンジン形式はそのままに次世代ユニットに大きな変革が与えられました。

 ポルシェやスバルなどのクルマにも搭載されている水平対向エンジンですが、2013年のモデルチェンジの際にエンジンサイズをコンパクト化し、クランクケース内にミッションと多版クラッチを内蔵しました。また、吸気方式を横方向から空気を取り込む“サイドドラフト”から、上から下方向へ空気を吸い込む“ダウンドラフト”へと変更し、冷却方式も同社製水平対向エンジンとして初めて水冷を採用。パッケージとしても大きく走りが磨かれたのが特徴でした。
 
 この吸排気のレイアウトがあったからこそ、新型エンジンでは可変バルブタイミング機構を搭載することが可能となりました。“SHIFT CAM”(シフト・カム)と呼ばれるこの機構は、低速側、高速側で2種類のカム山をもった吸気側カムシャフトが、ライダーのアクセル操作や5000rpmを境に可変させる制御となっています。

 その可変方式は至ってシンプルで、カムシャフトの片方のエンドを延長し、そこに可変作動用のガイドを設けます。必用に応じてピンがそのガイドの溝に入ることでカムを左右にスライドさせ、低速から高速、高速から低速側へと吸気カムを可変させるのです。

BMW水平対向エンジン初となる可変バルブタイミング機構

 エンジン本体も低速域での走行フィーリングや燃費性能を向上するため、先代の1170㏄から1254㏄と排気量を84㏄アップ。ボア×ストロークも見直されています。最高出力は9%アップの136PS/7750rpm、最大トルクは14%上乗せした約15kg-m/6250rpmで、内部パーツも静音性向上のためサイレントカムチェーンを採用するなど細かな変更が行なわれました。

 今回のモデルチェンジの目玉はあくまでエンジンです。外観も細かな意匠変更が加えられましたが、シャシ周りのセッティング変更もありません。電子制御デバイスでは、坂道での発進をサポートするヒルスタートコントロールを応用し、停車時に車体の傾斜を感知すると、自動でブレーキをホールドして停車を維持してくれる機能が加わっています。

頼もしすぎて嬉しさと楽しさに包まれる、エンジンフィーリング

 さあ、走り出しましょう。進化はすぐに体感できました。まずは発進時。アイドリングから僅かにスロットルを開けた2000rpm程度の領域でも豊富なトルクが車体を着実に押し出してくれます。まるで車体が軽くなったかの印象です。

 そして2500rpmを目処にシフトアップ。4速にシフトしたあたりで市街地スピードを維持します。この時のトルクの余裕は1250㏄というより1400か1500㏄のエンジンに乗っているよう。振動もなくスムーズなエンジンフィーリングは、まるでハイブリッドモーターでアシストされているような自然な力感です。

 この排気量ゆえ実は5000rpm以上を日常域で多く使う場面はありません。低速側カムの領域でも存分にその恩恵に浴することがわかります。むしろこの領域でのエンジン特性が頼もしすぎて嬉しさと楽しさに包まれます。試乗前日に行われた製品説明で「これまでの1200㏄エンジンとは別物です」と話していた開発エンジニアの自信溢れる言葉の意味がよくわかりました。

新型BMW「R1250GS」の詳細を画像で見る(15枚)

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