見ない日はないクルマのTVCM なぜお金と時間をかけてCMを作るのか
壮絶! 自動車CM撮影の舞台裏
――クルマの撮影で大変なことはどんなことでしょう?
家電や飲食物であれば、スタジオなど環境の整った屋内で撮影を完結させることができますが、クルマの場合は現場でのロケが必要になることが多く、天候との戦いになります。また、市街地や公道での撮影の場合、一般車両や行政との調整も必要となるため、事前準備が重要となります。とくに日本は市街地での撮影制限が大きいので、ある程度予算がある場合には海外で撮影を行なうことも少なくありません。
道路を走っているシーンの場合、当然ですが道路交通法や規制を遵守していなければなりません。また、以前実際にあったのが、30年前を懐古しているシーンで、当時のクルマには存在しないはずの排ガス規制対応車両のシールを張るか否かで、自動車メーカー側と議論しました。
――撮影当日、現場はどんな感じなのでしょうか?
監督、ディレクター、カメラマン、タレントやモデル、スタイリスト、メイク、そしてクライアントと代理店の担当者などを合わせると、数十人から時として100人を超えるスタッフとなることもあります。これだけのスタッフが集まっていると、別の日にもう一度撮り直すことが難しいので、なんとしても一発でOKを出さなければならないということで、非常に緊張感にあふれています。
一方で、カメラに映るクルマやモデル以外は、スタッフの服や撮影車両、カメラ、ドローンなどの機材も含めて、映り込みを防ぐために光沢のない黒で統一されているため、物々しい雰囲気が漂います。
――クルマの撮影に特有の機材などはあるのでしょうか?
一番は撮影車両でしょうか。大型のSUVの上にクレーンが付いており、その先にカメラが搭載されています。前述の通り、映り込みを避けるためにあらゆる部分が『つや消し黒』に塗装されています。迫力のある走行シーンなどはこうした撮影専用の車両のおかげです。自動車メーカーのCMは予算が大きいことが多いため、カメラやレンズ、ドローンなども最高の機材が用意されるのが特徴です。