見ない日はないクルマのTVCM なぜお金と時間をかけてCMを作るのか
撮影完了! そして、放送へ
――無事撮影が完了するとほっと一息ですか?
そんなことはありません。そこからは編集作業が大忙しとなります。ボディの光り方や砂煙の上がり方に至るまでコマ単位で確認をし、必要であれば修正を行ないます。色味の修正にも相当に配慮します。万が一、必要な素材が撮影できてなかったとしても再撮影は難しい場合がほとんどなので、編集の力に頼るしかありません。
現在のCM制作では、コンピュータ・グラフィックス(CG)を用いた編集を行なうことが多くあります。輸入車やスポーツカーなど、イメージが重要なモデルについては、ほとんどすべてがCGの場合もあります。
ただ、CGを使うからといって楽になるというものでもありません。CGを使えば、どんな映像も作れてしまうからこそ、クリエイティビティが問われるのです。また、結局は人の手による編集作業ですので、多くの時間が必要になります。
度重なるクライアントの確認を経て、校了となるとどっと疲れが出ますが、実際に放映されているのを見るとやはり感慨深いですね。しかし、広告代理店の仕事はCMを制作することそのものではなく、クライアントのビジネスのお手伝いをすることですから、CMを放映した結果、クルマが売れたかどうかが最も気になるところです。
――最後になりますが、CMの制作にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
キー局か地方局かで放映料金は大きく変わりますし、制作費もピンキリです。けれども自動車メーカーのような大規模のCMで、多くの方が「見たことがある」と実感されるためには、数千万から数億円の放映費が必要となるでしょう。制作費についても、輸入車ブランドなどは海外で制作した素材を使用することで安く抑えることもできますが、国産ブランドであればやはり数千万円から1億円ほどの制作費がかかると思います。これだけの大きなお金が動いているため、関わる人は全員必死になります。
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ずいぶん昔の話ですが、いすゞ「ジェミニ」やホンダ「シティ」、三菱「ミラージュ」のエリマキトカゲなどが大いに話題となり、社会現象にもなった事例もあります。最近だと、トヨタの実写版「ドラえもん」シリーズや、ダイハツ「ミラ トコット」の“おとなまる子”、トヨタ「カローラスポーツ」の中条あやみ、菅田将暉の共演も話題になりました。それほど話題になるということは、多くの人が見ているということになります。
新聞や雑誌にインターネットとメディアが多様化しても、自動車メーカーが巨額な予算と時間を使ってテレビCMを制作する意味としては、まずは「こういうクルマを売ります」とユーザーに知ってもらうのに、テレビはまだまだ最適なツールなのかもしれません。
【了】