スバルの「スポーツ車両企画室」発足! なぜモータースポーツで鍛えるの? クルマも人も鍛えられる場に! 今後の展開は?
スバルが全日本ラリーに投入した新型マシン「SUBARU Boxer Rally spec.Z」。この“魔改造BRZ”とも言える車両の製作を主導したのは、2026年4月に新設されたばかりの「スポーツ車両企画室」です。同部署の役割や、スバルがモータースポーツに参戦し、過酷な環境でマシンを鍛え上げる意義、そして今後の展望に迫ります。
モータースポーツでの学びを量産車に反映!
スバルは全日本ラリーに新型マシンの「SUBARU Boxer Rally spec.Z(スバル ボクサー ラリー スペック ゼット)」を投入しました。
その車両製作を主導したのは2026年4月に新設された「スポーツ車両企画室」という部署です。
このスポーツ車両企画室とはどのような部署なのでしょうか。
そしてスバルがモータースポーツに参戦する意義とはどういったものなのでしょうか。

全日本ラリー選手権第3戦「YUHO Rally 飛鳥 supported by トヨタユナイテッド奈良」(以下ラリー飛鳥)が5月8日から10日にかけて開催されました。
スバルは新型ラリーマシンである「SUBARU Boxer Rally spec.Z(スバル ボクサー ラリー スペック ゼット)」で参戦。
この新型SUBARU Boxer Rally spec.Zの開発を主導したのが、4月1日に正式稼働を開始したスポーツ車両企画室という新部署です。
4月に大きく組織変更を行い、商品革新本部という新しい部署を設立。その中にスポーツ車両企画室が存在します。
スポーツ車両企画室はブランドを際立たせるため、商品・モータースポーツ・バリューチェーンを一体で企画推進する部署です。
このブランド戦略というのが、スバルという大きなブランドの中で、STIを中心としたPerformanceシーンと、ウィルダネスを中心としたAdventureシーンを盛り上げていくというものです。
Performanceシーンでは、モータースポーツで車両開発や技術を鍛えていき、その鍛えた技術を市販車にフィードバックしていくといいます。
そのためにスーパー耐久シリーズに参戦して新技術を投入し、将来の量産車に活用できる技術開発を行っていきます。

また今回のSUBARU Boxer Rally spec.Zのような、革新的なマシンを作り上げ、こちらも将来的に量産車開発に繋げるための、技術開発を行うために参戦していきます。
ラリー会場を訪れた、スポーツ車両企画室の大村雅史室長は、下記のように、どの現場でも熱い声援をうけて身が引き締まる思いだと話します。
「今までにさまざまなレースやラリーなどを見てきました。今年もスーパー耐久、スーパーGT、そして全日本ラリーと会場を見て回っていますが、現場の皆さんが前向きに明るく活動を行っているのが良いなと思います。
なにより熱いファンの皆さんがいてくださるというのを実感していますので、頑張らないといけないと改めて思っています。
生まれたての組織ですので、まさにこれからなのですが、スーパー耐久で開発された知見を取り入れた、SUBARU Sport Drive e-TuneというBRZ用アップデートや、 限定車ではあるものの『BRZ STI Sport TYPE RA』という実際の車両販売に繋げられました。
その上で、モータースポーツの現場を見ることで、量産車開発のチームと一緒の組織になっていますので、今後はもっと面白いことができるのではないかと思っています。いろいろな学びがモータースポーツにはあると思います」

また今後の展開については、ファンに喜んでもらえるような施作を考えていくとのことです。
「さまざまな部署から人材が集まっていますので、社員のモチベーションも上がっています。
お客様にワクワクしていただけるような商品をお届けするためには、まず社員がワクワクしていないといけないと思っています。
商品も大事ですし、お客様とのファンコミュニケーションを、もっと行えるようにしていきたいです」
◆全国のディーラーメカニックも参戦
今回ラリー飛鳥においてスバルの走りを支えた一員が、普段は各店舗でユーザーのクルマを整備しているディーラーメカニックです。
スバルでは全国の販売店のメカニックを、全日本ラリーやTGR GR86/BRZ Cupなどに派遣。
その現場で得た技術や経験を、店舗に持ち帰りメカニック同士で整備に関する知見を共有しています。
今回も富士スバル・橋本 裕之氏、富士スバル・江戸 綾氏、静岡スバル・石井 遥大氏、奈良スバル・田中 玲氏、東京スバル・種村 弾氏の5名が参加しました。
東京スバルの種村氏は下記のように感想を語りました。
「初めてラリーの現場に来ました。普段行っている整備から、どれだけプラスアルファでできるかを経験したくて、ラリーの現場を希望してきました。整備時間が限られている中で、いかに効率的に行えるのかが思った以上に大変でした。
特別な車両ですので、ボルトも普段見るBRZとは違いますし、慣れるのも大変でしたが、貴重な体験でしたので店舗に帰って後輩に伝えていきたいと思います」
また現場で唯一の女性メカニックだった、富士スバルの江戸氏はこのような経験を積むことで業務に役立つのはもちろん、お客様とのコミュニケーションにも役立つと言います。
「ラリーの現場は特別な空間ですが、普段お客様の車を整備しているのと、それほど大きな違いはありません。普段の業務がしっかりこなせていれば、こういう現場に来ても活かせると思います。
ここで得た経験をお店に持ち帰って仲間と共有することで経験値も上がります。
スバルのお客様はモータースポーツが好きな人も多いので、こういう経験を活かした整備をすることで、お客様とのコミュニケーションも捗りますし自信にも繋がっていきます。
何より信頼を得ることでやりがいを感じますし、モチベーションアップにも繋がっていくので、もっと経験を積んでいきたいです」
なおスーパー耐久にも今後ディーラーメカニックを派遣するという構想があるとのことです。

◆気になる四駆のBRZ、実戦ではいかに?
SUBARU Boxer Rally spec.Zの開発を主導している、モータースポーツ技術企画グループの山田大輔担当部長は、新マシンでの初ラリーに手応えを感じているようで、次のようにコメントしています。
「車両はトラブルがいろいろ出ました。初めて本格的な競技スピードで走ったので、トラブルは出るだろうと想定していました。
エンジンパワーが落ちていくとか、冷却性能が足りていないなど、やはり現場で走ってみないと分からないことは多くあります。それでもポテンシャルは高いと感じました」
気になる市販車へのフィードバックについては、このマシンでのラリー参戦が、すぐに量産車に繋がるものではないのかもしれませんが、山田氏は次にのように話しています。
「ひとまず競技車専用車両として開発していますので、市販車に関しての技術開発などは少し先になるかもしれません。まずはこの車両を欲しいと思っていただけるような成績を残さなくてはなりません。
結果が出てラリーの世界で多くのBRZが走るようになれれば、多くの知見やお客様からの要望が集まることで、次を検討して行けるようになると思います」

※ ※ ※
全日本ラリーの次戦は6月19日から21日に愛媛県の久万高原で開催予定。
またスーパー耐久は6月5日から7日に静岡県の富士スピードウェイで24時間レースが開催されます。
過酷な現場を走るスバルのマシンがどのような戦いを見せてくれるのか期待が高まります。
Writer: 雪岡直樹
1974年東京生まれ。フォトスタジオアシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーへ。雑誌やWeb媒体の撮影を担当。自動車雑誌の撮影と並行してユーザーインタビューやイベントレポートを担当することで、ライターとしても活動。国内最高峰のレース「SUPER GT選手権」を長年取材。新車情報やレースレポート、イベントレポートなどを雑誌やWebに寄稿する。






































