トヨタが描く水素社会へのロードマップ 商用向け「第3世代FCシステム」展示 課題克服に前進へ

トヨタは2026年3月17日、水素社会実装に向けた新たな取り組み方針を改めて説明しました。水素ファクトリーの山形光正プレジデントが登壇し、商用車向け第3世代FCシステムの実用化や水素ステーションの運営費改善、インフラ整備計画について解説しました。山形氏のコメントを交え、戦略の詳細をお伝えします。

 2026年3月17日、トヨタは 「第25回 H2 & FC EXPO 【春】(水素・燃料電池展)」で水素の取り組みについて展示を行いました。

 水素の社会実装において、コストが最大の課題となるなか、トヨタは既存燃料との代替がしやすいモビリティ分野から普及を主導する方針です。

 乗用車のガソリン代替や商用車の軽油代替から始め、将来的には発電、化学、製鉄といった広範な領域への利用拡大を見据えた道筋が示されました。

 「第25回 H2 & FC EXPO 【春】」に展示されたトヨタの第3世代FCシステム
「第25回 H2 & FC EXPO 【春】」に展示されたトヨタの第3世代FCシステム

 水素社会実現に向けた課題はコストであり、普及のためには既存燃料と代替しやすい領域から進める必要があります。

 トヨタは、ガソリンを代替する乗用車や、軽油を代替する商用車といったモビリティ分野が、現時点の水素価格帯においても最も代替可能であると分析。

 これらを足掛かりとして規模の経済を働かせ、将来的には天然ガスを代替する発電や化学分野、さらには石炭を代替する製鉄分野へと応用範囲を広げていく計画です。

 これまでのモビリティ導入実績として、燃料電池車(FCEV)はグローバルで累計2万8700台以上を展開してきました。

 また、燃料電池(FC)モジュール単体でも100社以上の企業に対して累計3500基以上を供給しています。

 日本国内においては、宮城、福島、東京、愛知、兵庫、福岡といった地域で、様々な企業で200台以上の商用トラックが稼働中です。

 現場からの声として、「スムースな加速で疲れない」「振動少なく、荷崩れしない」「燃料充填が早くて便利」といったFC特有の利点が評価されています。その一方で、「車両メンテナンスが不安」という懸念も寄せられており、商用ユースの厳しい要求水準に応える商品開発が急務となっていました。

 これらの課題を解決すべく、トヨタは商用ユースを前提に進化させた「第3世代FCシステム」の開発を進行させています。

 用途に応じて乗用車向け、汎用向け、商用車向けが用意されており、とくに商用車向けは第2世代と比べて最高出力300kWという2倍の出力を達成しています。

 さらに、耐久性は2倍に引き上げることにより、ディーゼルエンジンと同等の性能でメンテナンスフリーを実現。

 燃費性能も従来比で1.2倍に向上し、燃料代の低減と航続距離を約20%向上させています。

 またこの第3世代FCシステムの開発は小型トラックへの搭載を日本国内のメーカーと検討しているといいます。

 そんなFCシステムのコア部品である「セル」の開発と製造には、日本国内の多数のパートナー企業が関わっています。

 AGC、キャタラー、ゴア、住友理工、東レ、トヨタ紡織、東洋紡、日鉄ケミカル&マテリアルといった企業群が参画しており、日本企業の技術開発の結晶とも言える体制が構築されています。

 革新的なセル設計と製造プロセスの見直しにより、コストの大幅な削減が可能となりました。

 現在、この新システムを搭載した小型トラックの開発を国内OEMと共同で検討しています。

水素ファクトリーの山形光正プレジデントが水素の取り組みを語る
水素ファクトリーの山形光正プレジデントが水素の取り組みを語る

 商品の進化と並行して、水素の供給から需要創出に至るエコシステムの構築が進められています。

 トヨタは福島から東京、神奈川、愛知、兵庫を経て福岡に至る重点地域を主要幹線道路でつなぎ、トラックによる「需要の塊」を創出する計画を掲げています。

 将来的に約80台のトラックを運行させ、年間250tの持続可能な水素需要を見込んでいます。

 公的補助を活用しながら既存燃料と同等の水素価格を実現し、水素ステーションの自立化を促すことで、俗に言う「鶏と卵」の関係からの脱却を図ります。

 乗用車分野における需要確保の取り組みとして、東京都の官民連携プロジェクト「TOKYO H2」が始動しています。

 クラウンFCEVを用いたタクシー車両の運用が始まっており、静寂性の高さや振動の少なさによる疲労軽減、高級感といった点が評価されています。

 このタクシー車両の購入支援は2026年度から愛知県など他の地域へも拡大される予定です。

 海外においても、欧州でのBMWとの次世代FC協業や、ダイムラートラック、VDL、hylikoへのFC供給など、意欲的なOEMと市場形成を進めています。

 さらに世界最大のFC市場である中国では、大型トラックによる水素ハイウェイ化が官民一体で進行しており、累計2600万kmにおよぶ走行実績を通じて製品を鍛え、その知見を日本へフィードバックしています。

今回はトヨタグループとして出展していた
今回はトヨタグループとして出展していた

 水素ステーションの運営費改善に向けたパートナーとの共創も重要な課題です。

 ステーションの休業期間を短縮するため、根本通商とともに専門家支援のもと法定検査やメンテナンス作業の自前化を段階的に進めています。これにより、事業者の現場対応力が向上し、軽微な事象は自前で対応可能となります。

 機器の長寿命化においては、加地テックや日本精工(NSK)と協力し、82MPa圧縮機における実機調査や要因解析を通じてピストンリングなどの摺動部品を改良開発しました。

 これにより、年2回であった圧縮機のメンテナンス頻度を年1回へと半減させる目標を掲げています。

 また、ブリヂストンによる充填ホースの耐久回数延長といった取り組みも含め、修繕費や労務費の低減を図ることで、ステーションの自立化と水素価格の引き下げの両立を目指しています。

※ ※ ※

 水素を「つくる」工程の効率化については、千代田化工建設と水電解装置の共同開発を進めており、2029年からの量産開始を計画しています。

 国内の中規模ニーズ向けには1時間あたり約100kgの水素を製造できる5MW装置を、海外の大規模ニーズ向けには約400kgを製造できる20MW装置を展開し、国内で鍛え上げた技術を世界市場へと供給していく方針です。

 なお5MW水電解システムについてはトヨタ本社工場内においてまもなく運用されます。

 水素の使い道としては、自動車部品や燃料電池の生産工程での利用に加え、工場内の構内輸送を担う車両の燃料、および研究開発部門向けにも使われる予定です。

 山形氏は水電解装置について「水素製造装置を国内で鍛え、海外へ展開していきます」と述べ、段階的な市場開拓の意図を示しています。

 また、国からの支援の意図について、山形氏は「ただ導入するだけではなくて、『国際競争力を持ったものになってほしい』という国からの期待があるのかなという風に思っております」と分析。

 そのうえで山形氏は、「民間企業として、しっかりとした商品を経済合理性のある形でお届けするというのが我々の使命だと思っていますので、そこに向けて全力で取り組んでいきたい」と述べ、自立したビジネスモデルの確立と国際競争力の強化への決意を表明しました。

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Writer: くるまのニュース編集部

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