ホンダ 3代目「シビック」は『空間は大きくメカは小さく』を最大限に具現化 レースでホンダのイメージアップにも貢献
S800以来となるDOHCエンジンを搭載したSiも登場
3代目「シビック」の1.5リッターエンジンは充分なパワーを発揮していましたが、1982年に日産は「サニー」に1.5リッターターボエンジン(E15ET型)の「TURBO LEPRIX」(ターボ ルプリ)を追加、さらに1983年にはマツダも「ファミリア」にターボエンジン(E5型)搭載の「XG TURBO」を加えるなど、税制面で有利な1.5リッタークラスの国産ファミリーカークラスに高出力化の波が押し寄せていました。
そして、ホンダにさらなる危機感を与えた存在が、名機4A-G型を搭載したトヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」、いわゆるAE86型『ハチロク』の登場です。1.6リッターDOHC16バルブ、高回転、高出力の4A-G型は、若者をターゲットにしたスポーティカー『ハチロク』に相応しいパワーユニットでした。
そこで、ホンダは1984年10月に「カローラ/スプリンター」と同様に、新開発の1.6リッターDOHC16バルブヘッドを持つエンジン(ZC型)を搭載した「Si」をラインナップに追加します。ホンダ車に搭載されたDOHCエンジンは「S800」以来となる、じつに14年ぶりのことでした。
この「シビックSi」は最高出力135PS/6500rpm、最大トルク15.5kg/5000rpmと、ライバル車の「カローラ/スプリンター」が「エンジンを高回転まで回さないと速くない」のに対し、「シビックSi」は常用域からトルクが太く「乗りやすいけど速い」と評価されていました。
またZC型エンジンの構造は4A-G型と同じ1.6リッターDOHC16バルブでしたが、4A-G型の鋳鉄製エンジンブロックに対し、ZC型はアルミ製エンジンブロックを採用し、エンジン単体での軽量化にも成功しています。
1.6リッターながら俊足の「シビックSi」は、二輪市場で大ヒットした「CB750F」や「CBX400F」などと同じDOHCエンジンを好むホンダファンや、その当時の『走り屋』と呼ばれる層から絶大な支持を受けることになります。
さらに85年から市販車をベースにした「グループA」車両で競われた「全日本ツーリングカー選手権」での活躍により「シビック=スポーツコンパクトカー」の地位を不動のものにしていきます。当時、ホンダはF1にも復帰しており、「ホンダ=エンジン屋」というイメージも確立しており、レース活動はホンダのイメージアップに大きく貢献していました。