給油不要で257km走る!? 「畳も積める」ダイハツ新型「軽バン」発売! 「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」特徴は? 発表会で語られたコトとは
ダイハツは2026年2月2日、同社初の量産商用EV「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」を発売しました。軽商用車No.1の積載性を維持しつつ、実用航続距離257kmを実現。価格は314万6000円からとなり、カーボンニュートラル社会に向けた「働くクルマ」の新たな基準を提示します。
「働く相棒」が迎えた電動化の夜明け
2026年2月2日にダイハツは、軽商用車「ハイゼットカーゴ」および「アトレー」をベースとした、同社初となる量産バッテリーEV(BEV)、「e-ハイゼット カーゴ」および「e-アトレー」の発売を発表しました
1957年の「ミゼット」発売以来、農林水産業や建設業、配送業など、日本の産業を足元から支える「働く相棒」として、軽商用車を提供し続けてきたダイハツ。
その歴史は、まさに日本の物流の歴史そのものと言っても過言ではありません。
昨今、物流の「ラストワンマイル」を支える軽商用車に対しても、カーボンニュートラル社会の実現に向けた電動化への期待が急速に高まっています。
今回の新型車投入にあたり、製品企画部プロジェクト責任者の齋藤寛氏は、開発の背景について次のように語っています。
「ダイハツは創業以来、おきゃくさまに寄り添い、暮らしを豊かにする、という思いのもと、良品廉価なクルマを提供し続けて参りました。たくさん積めて、壊れない、お求めやすく、頼れる『働く相棒』として、時代ごとのニーズに対応し、働く人々をサポートし続けてきました」
実はダイハツには、1960年代から他社に先駆けて電気自動車を開発してきたという、知られざる「電動化への挑戦」の歴史があります。
今回の「e-ハイゼット カーゴ」「e-アトレー」は、そうした長年の知見と、現場の声が結実したモデルと言えます。

商用EVの導入において、ユーザーが最も懸念するのは、バッテリー搭載によって荷室が狭くなること、そして使い勝手が変わってしまうことです。
発表会に登壇した営業CS本部長の福田昭夫氏は、発売に先駆けて行われた実証実験やイベントでのエピソードとして、多くの顧客から寄せられた「切実な声」を紹介しました。
「ハイゼットが一番積みやすい。うまく積むために自分で棚を作っているので、荷室の寸法や積載量は変えてほしくない」
こうしたプロフェッショナルの要望に応えるため、開発陣は「積載スペースを一切犠牲にしない」という困難な課題に挑みました。齋藤氏はそのこだわりをこう強調します。
「選ばれている最大の理由、積載性、使い勝手。これらを維持したまま、バッテリーEVの魅力を付与するために、新開発したe-SMART ELECTRICを搭載しました」
その結果、「e-ハイゼット カーゴ」は、ベース車であるガソリンモデルと同等の積載スペースを確保することに成功。
具体的には、運転席前方にエンジンやモータールームを持たない車体構造の軽貨物自動車として、荷室長、荷室幅(4名乗車時)、荷室高においてNo.1の数値を実現しています(e-ハイゼット カーゴ 4シーター)。
荷室床面は凹凸のないフラットな空間が広がっており、みかん箱なら68個、ビールケースなら36ケース、パンケースなら71ケース、そして畳(中京間)なら9枚もの積載が可能です。
2名乗車時の荷室長は1915mm(2シーターモデル)にも達し、長尺物も余裕を持って積み込むことができます 。最大積載量も350kgを確保しており、「EVになったから荷物が乗らない」という言い訳を許さない仕上がりとなっています。
また、室内には30個ものユースフルナットが配置され、頭上スペースを活用したオーバーヘッドシェルフなど、プロの現場で求められる収納力や拡張性もしっかりと継承されています。
今回導入された「e-ハイゼット カーゴ」と「e-アトレー」の心臓部には、新開発のBEVシステム「e-SMART ELECTRIC」が採用されています。
このシステムは、スズキとダイハツが培ってきた「小さなクルマづくり」のノウハウと、トヨタが持つ高度な電動化技術を融合させ、3社で共同開発されたものです。
システムの中核を成すのは、モーター、インバーター、減速機を一体化した「e Axle(イーアクスル)」です 。これを後輪駆動軸上に搭載するRWD(後輪駆動)レイアウトを採用したことが、走りの質を決定づけています。
「100%モーターで走行するため、出足から力強いトルクを発揮可能で、また適度な回生ブレーキにより、電費の向上と運転のしやすさを両立しました」
齋藤氏がこう語る通り、モーターならではの最大トルク126N・mは、発進直後から瞬時に立ち上がります。
これにより、荷物を満載した状態や急な登坂時でも、トラクションのかかる後輪で力強く路面を捉え、ガソリン車以上のスムーズな加速を実現しています。
また、バッテリーを床下のデッドスペースに薄く広く配置することで、低重心化も実現しました。
「薄型大容量バッテリーを床下に配置することで、従来のガソリン車よりも低重心となり、操縦安定性が向上し、荷崩れなども防止可能です」(齋藤氏)
これにより、カーブでのロール(車体の傾き)が抑えられ、走行安定性が向上。
さらに、リアサスペンションには新設計のトレーリングリンク車軸式コイルスプリングを採用し、商用バン特有の突き上げ感を抑えた乗り心地の良さも追求されています。
静粛性についても、齋藤氏は次のように自信を見せます。
「100%モーター走行により、室内はもちろん、早朝・深夜の走行や住宅街での頻繁な駐停車にも安心な静粛性を実現し、運転者のストレス低減にも寄与します」
配送業務などで頻繁なストップ&ゴーを繰り返すドライバーにとって、振動や騒音の少なさは疲労軽減に直結する重要な要素です。
福田氏もまた、「早朝や夜間でも、住宅街を静かに走れるのは本当にありがたい」という配送業者の声を紹介しており、EV化の恩恵は周辺環境への配慮という点でも大きいようです。
ビジネスで使う以上、航続距離と充電性能は死活問題です。新型モデルは、WLTCモードで257kmという一充電走行距離を達成しました。
これは軽商用BEVバンとしてNo.1の数値です。
ダイハツの調査によると、軽商用バンユーザーの約8割は、1日の走行距離が100km未満だといいます。
257kmというスペックは、日々の業務を余裕を持ってこなせるだけでなく、エアコン使用などで電力消費が増える夏場や冬場であっても、安心して業務を遂行できる距離を確保しています。
搭載されるバッテリーには、容量36.6kWhの「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池」が採用されました。
齋藤氏によれば、LFP電池は熱暴走のリスクが低く、長期間の使用でも劣化しにくい特性を持っているといいます。毎日酷使される商用車にとって、耐久性と信頼性の高さは何よりも代えがたい価値となります。
BEVならではの付加価値として、全車に標準装備された「外部給電機能」も見逃せません。
車内にはAC100Vのアクセサリーコンセントが設置されており、合計1500W以下の電気製品を使用可能です。
「走行時でも使えるAC100Vで、最大消費電力の合計が1500W以下の電気製品が使用可能なアクセサリーコンセントを装備しました」
齋藤氏の説明にあるように、これは走行中でも使用できる点が大きな特徴です。
移動中に電動工具のバッテリーを充電したり、ノートパソコンで作業を行ったりと、「動くオフィス」としての活用も可能です。
さらに、災害時などの非常時には、車両の走行機能を停止した状態で給電を行う「非常時給電システム」が機能します。
付属の外部給電アタッチメントを使用すれば、ドアや窓を閉めたまま車外へ電源コードを引き出せるため、雨天時やセキュリティを確保したい状況でも安全に電力を供給できます。
福田氏は、食品関連の顧客からの具体的な期待の声を紹介しました。
「停電などの際に車両から電源を供給できるので、復旧するまで冷凍、冷蔵の商品を維持できる、BCP的側面からも期待を伺いました」
単なる移動手段としてだけでなく、事業継続計画(BCP)の一部としてクルマが組み込まれる。これは電動化によって生まれた新しい商用車の価値と言えます。
充電ポートは、普通充電に加え、「CHAdeMO(チャデモ)」規格の急速充電インレットを全車に標準装備。出力50kWの急速充電器を使用すれば、バッテリー残量警告灯が点灯した状態から約50分で80%まで充電が可能です。
この急速充電ポートはV2H(Vehicle to Home)にも対応。別売りのV2H機器を接続すれば、夜間に車両へ充電するだけでなく、日中や停電時には車両のバッテリーから自宅や事業所へ電力を供給することが可能です。
安全性能についても最新の技術が投入されています。予防安全機能「スマートアシスト」は、ステレオカメラの性能向上により検知範囲が拡大しました。
衝突回避支援ブレーキ機能において、従来から認識可能な前方の車両や歩行者に加え、新たに「横断中の自転車」も認識可能になりました。
さらに、交差点での右折時に対向方向から直進してくる車両や、右左折時に対向方向から横断してくる歩行者も検知可能となっています。
複雑な交通環境を走行する機会が多い配送ドライバーにとって、こうした「見守り」機能の進化は大きな安心材料となるはずです。
ラインナップは、実用性を重視した「e-ハイゼット カーゴ」と、乗用ユースも視野に入れた「e-アトレー」の2車種構成です。
「e-ハイゼット カーゴ」は、2シーターと4シーターの2グレードを展開。価格はいずれも314万6000円(消費税込)です。
「e-アトレー」は、専用のエクステリアパーツやブラック基調のインテリアを採用し、質感を高めた「RS」グレードを設定。価格は346万5000円(消費税込)となります。
e-アトレーでは、両側パワースライドドアやキーフリーシステムなどの快適装備も充実しており、平日お仕事、休日はレジャーといった使い分けにも適しています。
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これらの車両の生産は、ダイハツ九州の大分(中津)第1工場で行われます。
注目すべきは、BEV専用の設備を新設することなく、既存のガソリン車と同じラインで混流生産を実現した点です。
齋藤氏はその狙いを次のように語りました。
「多様な車種を生産するノウハウを生かし、バッテリーEV専用設備を新規で導入することなく、設備投資を抑えました。さらに重くて高電圧作業となるバッテリー搭載は、少量多品種な特装車両を生産するエリアをうまく活用することで、高品質で良品廉価なクルマづくりを実現しました」
既存の資産とノウハウを最大限に活用することでコストを抑え、ユーザーに還元する。まさにダイハツの真骨頂と言える「良品廉価」の精神が、この生産体制にも息づいています。
また、販売面でのサポート体制も万全です。福田氏は次のように述べ、ユーザーの不安払拭に努めます。
「ダイハツ初の量産バッテリーEVであるこのクルマを、安心してご購入いただくために、全国の販売会社でも充電器や試乗車の配備といったハード面の準備に加え、販売スタッフにおいても研修などを通じ、商品知識はもちろん、電気、そして充電環境に関する知識を学んで参りました」
各店舗には「電動士」と呼ばれるプロスタッフも配置されるとのことで、初めてEVを導入する事業者にとっても心強いパートナーとなりそうです。
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発表会の最後にはダイハツの井上社長も登壇し、次のように語っていました。
「実は、私自身も学生時代、私は京都の入り組んだ狭い路地を走り回る、荷物配送のアルバイトをしておりました。
細い道をスイスイと走れ、パンパンに荷物を積んでも頼もしく走ってくれたあの感覚は、今でも記憶に残っております。
今回発表したモデルは、その『働く相棒』としてのDNAを色濃く受け継いでいます。畳が9枚も載るという軽商用No.1の積載力や、現場で鍛え上げられた使い勝手はそのままに、BEVならではの静粛性と力強い走りをプラスしました。
またCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)との連携を通じ、このクルマは物流の効率化だけでなく、災害時の支援車両や『移動電源』としても活用いただけます。
災害時において、電源は人々の命を守るために不可欠なものです。2025年、大阪府と災害時の電源供給協定を締結いたしましたが、このクルマであれば、万が一停電した場所へも自ら移動し、人工呼吸器などの医療機器へ電気を供給することが可能です」
Writer: くるまのニュース編集部
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