V8サウンドがめちゃ良い! トヨタ新型「GR GT」はレーシングカーより速い!? 開発陣が明かす「V8ツインターボ」の正体と2027年発売への本気

トヨタとレクサスが世界初公開した3台の新型スポーツカー。「GR GT」「GR GT3」「LFAコンセプト」は、単なる新型車発表の枠を超え、トヨタのクルマづくりそのものを次世代へ継承する重要な使命を帯びています。今回は「GR GT」「GR GT3」について開発ドライバーとエンジニアが語った、カタログスペックには表れない開発の裏側と、市販化へ向けた並々ならぬ情熱を解説します。

トヨタ新型「GR GT」はレーシングカーより速い!? 開発陣が明かす「V8ツインターボ」の正体と2027年発売への本気

 2025年12月5日、トヨタ(TOYOTA GAZOO Racing)とレクサスは新型スポーツカー「GR GT」「GR GT3」とコンセプトカーの「Lexus LFA Concept(以下、LFAコンセプト)」を世界初公開しました。

 その後、2026年1月に開催された東京オートサロン2026では、「GR GT」「GR GT3」が一般ユーザーに初公開、さらには世界初走行しました。

 これらは過去の名車の系譜を継ぐだけでなく、共通するテーマのもと開発されたモデルだといいます。

 なぜ今回、3台のフラッグシップスポーツカーが登場したのでしょうか。

 今回の3台は、共通する重要な開発テーマが存在します。それが「トヨタの式年遷宮」です。

 式年遷宮とは、伊勢神宮などで約20年ごとに行われる、社殿を新しく建て替え神様を遷す儀式のことですが、トヨタはこの思想をクルマづくりに重ね合わせました。

 かつて1960年代に登場した「2000GT」、そして2010年にレクサスが世に送り出した「LFA」。

 これらは当時のトヨタが持つ技術の粋を集めたフラッグシップスポーツカーであり、その開発過程で培われた技術や技能は、後の量産車開発に大きく寄与してきました。

 今回のプロジェクトは、先人たちが築き上げてきた「クルマ屋が残していくべき技能」を、最新の技術を取り入れながら次の世代へと確実に受け継いでいくための挑戦なのです。

 3台は、「低重心」「軽量・高剛性」「空力性能」というスポーツカーにとって不可欠な3つの要素を徹底的に追求するという共通思想のもと、開発が進められています。特に注目すべきは、そのパッケージングへのこだわりです。

うぉーーー! GR GTとGR GT3が世界初走行!
うぉーーー! GR GTとGR GT3が世界初走行!

◆「GR GT」公道を走る野獣のスペック

 GRブランドの頂点に立つモデルとして開発された「GR GT」は、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」をさらに深化させた存在です。コンセプトは「公道を走るレーシングカー」。

 心臓部には、新開発された4リッターV型8気筒ツインターボエンジンが搭載されます。

 これに1モーターのハイブリッドシステムを組み合わせることで、システム出力は650馬力以上、最大トルクは850Nm(いずれも開発目標値)という圧倒的なパフォーマンスを発揮。

 エンジンはレーシングカーと同様のドライサンプ方式を採用し、低重心化と安定した潤滑性能を確保。駆動方式はFR(フロントエンジン・リアドライブ)とし、ドライブトレインにはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製のトルクチューブや、重量配分を最適化するトランスアクスルレイアウトを採用しています。

 骨格にはトヨタ初となるオールアルミニウムを採用し、軽量化と高剛性を両立。空力性能を重視したエクステリアデザインと相まって、極限まで走りを磨き上げたモデルとなっています。

 一方、「GR GT3」はこのGR GTをベースとした競技専用車両です。

 世界中のモータースポーツで激戦区となっている「FIA GT3」規格に適合するように設計されており、「勝ちたい人に選ばれるクルマ」「誰が乗っても乗りやすいクルマ」を目指して開発されています。

 また、レクサスブランドから登場した「LFAコンセプト」は、これらの思想をBEV(バッテリー電気自動車)で体現したモデルです。

「Discover Immersion(没入感の発見)」をキーワードに、BEVにおける最適なパッケージングと、時代を超えて愛されるデザインを追求しています。

トヨタ新型「GR GT」「GR GT3」とレクサス「LFA コンセプト」
トヨタ新型「GR GT」「GR GT3」とレクサス「LFA コンセプト」

◆開発陣が語る「レーシングカー超え」

 ここからは、東京オートサロン2026の会場で行われたトークセッションの内容をもとに、開発の深層に迫ります。

 トークショーには、開発ドライバーを務める片岡龍也選手、石浦宏明選手、蒲生尚弥選手、鵜飼龍太選手、そしてジェントルマンドライバーとして参画する豊田大輔氏、開発責任者の土井崇司氏が登壇しました。

 まず会場の度肝を抜いたのが、市販予定車である「GR GT」と、レーシングカーである「GR GT3」の性能差についての言及です。

 一般的にはレーシングカーの方が高性能であると思われがちですが、石浦選手は次のように語りました。

「GT3車両は規格があり性能調整(BoP)が入るため、実はノーマルカー(GR GT)のほうが、本来のエンジンパワーを目一杯出せています。レーシングカーの性能を超えているようなクルマが買えるというのは、ロマンがあります」

 レースのレギュレーションに縛られない市販車だからこそ、V8ツインターボハイブリッドの真のポテンシャルを解放できるというのです。実際にテストドライブを行った鵜飼選手もその速さに言及します。

「市販車はスリックタイヤではない普通のタイヤですが、トップスピードも含めて異次元の世界に入っている」

 まさに「公道を走るレーシングカー」というコンセプトに偽りなし。いや、ある意味でレーシングカー以上の怪物が公きに放たれようとしているのです。

 速さだけではありません。開発チームがこだわり抜いたのは、ドライバーの五感に訴えかける「官能性」です。

 会場で行われたデモランでは、GR GTがアクセルオフ時に発する「バラバラ」という独特のバブリング音が響き渡り、観客を沸かせました。

 豊田大輔氏は、この音の演出について次のように振り返ります。

「このクルマはすごく速いクルマで、止まることも大事。止まった時に音が気持ちよく出るなど、五感で楽しむことが大事だと考えました。サーキットではない場所で、あまりスピードが出せない時でも、このクルマの良さを体感していただけるように」

 実は開発当初、エンジニア側からはこの演出に対して難色を示す声もあったといいます。

 しかし、マスタードライバーである“モリゾウ”こと豊田章男会長の「これじゃ足らない」という後押しもあり、採用が決まりました。

 石浦選手は、「今の時代、音を出せなくなってきている中で、あえてバブリングするクルマを出してくれたことに、SNSなどでも『ありがとう』という多くの反響がありました」と、ファンの熱量を感じ取っていました。

 また、片岡選手は車内での快適性について、徹底的な「ノイズの排除」をリクエストしたといいます。

「一番うるさく言ったのは音や振動です。排気音ではなく、クルマからどうしても出てしまう嫌な音や、手足に感じる振動など、余分なものはなるべくクリアにしてほしいとリクエストしました。振動はなるべく無いほうが、乗っていて心地よいので」

 必要な情報は豊かに伝え、不快な雑音は徹底して消す。この取捨選択が、人馬一体の走りには不可欠なのです。

◆「ゼロ」から作ったドライビングポジション

 今回の開発プロセスにおいて特筆すべきは、ハードウェアありきではなく、徹底した「ドライバーファースト」の視点が貫かれている点です。

 通常、車両開発はある程度のパッケージが決まってからドライバーが乗り込むことが多いですが、今回は「クルマの形がない段階」からプロドライバーたちが参画しました。

 石浦選手は当時の様子をこう語ります。

「まだ何もない段階で、自分たちの体格もそれぞれ違いますが、ドラポジ(ドライビングポジション)を測定してもらって、自分の目線から見た時にどういう視界がいいのか、ヒアリングをしてもらって開発が始まりました」

 ステアリングのセンター位置や、アクセルとブレーキペダルの横の位置関係に至るまで、ミリ単位での調整が行われました。

 中でも蒲生選手がこだわったのが「シートクッション」です。

「シートの前の、腿の裏のクッションの厚みや硬さまでこだわりました。クルマからのインフォメーションを感じ取るためには重要です」

 片岡選手も「シート屋さんが、クッションをいろんなパターンで作ってくるんです。『ここの縫い目をなくしました』とか『厚みを変えました』とか。すごいんですよ」と、サプライヤーを含めたチーム全体の熱量の高さを証言しました。

モリゾウ自ら日本での初走行にこだわったという
「Lexus LFA Concept」(手前)、「GR GT」「GR GT3」

◆悔しさを原動力に2027年へ

 この壮大なプロジェクトの原点は、豊田章男会長がかつてニュルブルクリンクで味わった「悔しさ」にあるといいます。

 他メーカーが開発中の最新スポーツカーでテストを行うなか、トヨタは中古のスープラで走らざるを得なかった経験。

 それが、自らの手で世界に通じるスポーツカーを一から作りたいという情熱に火をつけました。

 豊田大輔氏は、この開発に終わりはないと語ります。

「その時(20年前)に感じた悔しさは多分払拭できないので、開発は続くと思います。悔しさが一番のエネルギー源です。何か良くするとバランスが変わって足りないところが出てくる。それを補うとまた別の足りないところが出てくる。その繰り返しです」

 開発責任者の土井氏は、これまでの苦労を滲ませながらも、力強く未来を見据えます。

「最初はなかなかうまくいかないこともありましたが、やればやるほど、みんなでいいクルマを作ろうという思いになっていきました。2027年内に発売できるよう、開発メンバー一丸となって頑張って進めていきます」

 トークセッションの最後には、サプライズで登場した小林可夢偉選手も「マジでこのエンジンはすごいです。今までに乗ったエンジンとキャラクターが全然違う。新しい時代のトヨタの技術なんだなと体感しました」と絶賛しました。

 トヨタが「クルマ屋の使命」をかけて挑む、次世代スーパースポーツカー「GR GT」。

 2027年の登場に向け、開発チームの挑戦はまだまだ続きます。日本の自動車史における新たな1ページとなることは間違いなさそうです。

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