「坂道で暴走」「ブレーキ効かず」…万博EVバス約200台が行き場を失い「大阪・森ノ宮」に山積みの訳 現場から悲鳴も
大阪万博で使用されたEVMJ製EVバス約200台が森ノ宮に集結し、不具合やリコールの多発で「墓場」化する懸念が高まっています。当初の再利用計画は不透明になり、国交省の点検でも多数の問題が発覚。現場からは安全性を危惧する悲痛な声が上がる中、全国の事業者でその使用継続を巡る新たな対立が始まっているといいます。
全国のバス事業者では、「使う・使わない」の新たな戦いが始まっている?
2019年春に設立されたEVMJは2022年に納車した3台に始まり、実質約2年で300台以上というありえないスピードで中国製EVバスを全国のバス会社や自治体に納入してきました。
大阪・関西万博関連では190台もの電気バスを一社独占で受注し業界を驚かせました。
というのも、万博向けの大量受注が決定した時、同社はまだ1台も納入実績がなく完全に無名の会社だったからです。
万博への大量受注が内定した2021~2022年頃、「2023年中には新設する北九州の工場でEVバスを生産する」とアピールしており、「国産EVバス」を強力に推したことで多額の政府助成金や中小機構の債務保証、環境省や官公庁の各種補助金の入手に成功してきました。
しかし、2025年春に本社と工場は完成したものの、2026年になってもまだ1台もこの工場での生産は行われていません。
テストコースなどを含む総額100億円の「ゼロエミッションパーク」の建設も2025年秋から中断しています。
ちなみに、「国内で組み立てをしたから国産EVバスメーカーになれる」というものではありません。
EVMJが自動車メーカーとして認可を得るにはISOの取得をはじめ数々の非常に高いハードルがあります。
結局、同社がこれまで販売してきた300台以上のEVバスはすべて、中国の3つのバスメーカー(ウィズダム・恒天・愛中和)に激安で作らせた粗悪なバスをほぼそのまま輸入しています。
ちなみに、日本での新規検査や登録に必須のUN認証も一部は取得しないままナンバーがついていますが、だからと言って価格がとても安いということはありません。
BYDやアジアスター、アルファバスなど高品質と手厚いアフターで知られる他の中国製EVバスと比べると価格は1.5~2倍近い高価格。
ほぼ強制的に購入させられる充電器も他社製に比べて価格は2倍以上、不具合も多数でています。
万博での事故報道や筑後市スクールバスが開始2週間で4台すべて使用中止になった事案がきっかけになり国交省にはEVMJバスの不具合情報が多く寄せられました。
そこで国交省は2025年9月上旬に全国317台のEVMJバスに対して総点検を行う指示を出し、その結果、317台中113台にそれぞれ複数の不具合が明らかになっています。
特に危険度が高いブレーキホース(ウィズダム小型85台対象)については2025年11月28日に国交省へリコールの届出がされEVMJが費用を負担する無償改修の作業も進んでいます。
しかしリコールを出したからそれで終わりということでは全くありません。
ブレーキホース以外も多数の不具合があり、中には大事故につながる危険な不具合も多数あります。
このような状況で発生しているのがEVMJバスの「使用・不使用」をめぐる紛争です。

筆者のところにはEVMJバスに日々乗務している乗務員や運行管理者から10件以上の悲痛な要望が以下のように届いています。
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「常務するのがとても苦痛。何かあったときにお客様の安全を守れない不安でいっぱいです。しかし、事業所にこの状況を伝えてもバス使用を止める気配が全くありません」
「フル乗車では8%程度の坂を上れず、止まって動かなくなったことが数回。お客様はその場でおろしてディーゼルのバスに乗り換えてもらいました。EVMJは対応すると言って結局何も対応してくれません。バス会社の方針なので使うしかないですが正直乗りたくありません。ブレーキが効かなくなることも何度かありました」
「坂道で暴走したりブレーキが効かなかったりそのほか恐ろしい不具合が多数あり、2年近く前から使用を止めるよう市交通局に何度も要望してきましたが、まったく聞き入れられません。『EVMJが全数検査をして問題ないと判断しているから、当市としてはこれからもEVMJバスを使い続ける』としか言わない。乗務員や乗客の安全を何だと思っているのでしょう?」
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バスに限ったことではありませんが、公共交通の利用者は一般的にバスのメーカーやブランドを選んで乗ることはほぼ不可能です。
多くの人命を預かるバスという乗り物の安全性についてEVMJバスを導入しているバス事業者は、EVMJの言葉だけをやみくもに信じるのではなく、「乗客や乗務員の安全を確保するには何が一番大切なことなのか?」を考えていただきたいと思います。
Writer: 加藤久美子
山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。







































