67台が巻き込まれた「関越道大事故」なぜ起きた? 惨事の要因は? 浮上した新たな可能性… ポイントは“事故のタイミング”と“時速50km規制”だったのか

2025年末、関越道で67台が巻き込まれ2名が死亡する大事故が発生しました。当初は雪によるスリップ事故と報じられましたが、その後の報道により「最初の事故」の処理中に多重衝突が起きた可能性が浮上。はたして現場の規制状況は適切だったのでしょうか。情報発信の課題や、形骸化する速度規制への疑問から、事故の教訓について考えます。

大規模事故が発生する前に「最初の事故」が起こっていた

 2025年12月26日午後7時半頃、関越自動車道下り線の水上IC付近で起こった大規模な交通事故。合計67台が巻き込まれ10台近くが炎上、死者2名・負傷者26名に及ぶ大惨事となりました。

 この事故が原因で、26日午後8時過ぎから月夜野ICと湯沢ICの上下線が通行止め。上り線は28日未明に、また下り線は事故発生から41時間後の28日午後8時に通行止めを解除していますが、年末休暇での移動や物流へ大きな影響が及びました。

 事故の原因について、テレビやネットニュースでは、大型トラックと中型トラックがスリップして後続車が次々に突っ込んだという第一報が流れました。

 当時、事故が発生した地域では大雪警報が出ている状況で、道路構造としては緩い下り坂の左カーブであったことから、後続車が前方で発生した事故を避けきれず玉突き事故になったという印象を持った人が多かったと思います。

 事故発生後、上り線を走行する車内から撮影された動画を見ると、路肩や中央分離帯には雪が積もっていますが路面上に雪はほとんどない状態。

 報道によれば当時の気温はマイナス4度程度でブラックアイスバーンになっていた可能性もあり、多重事故は避けられなかったという見方もあるでしょう。

 ところが、一部報道で群馬県警に対する取材から、事故発生当時の状況は報道各社の第一報とは違う可能性が出てきました。

 本稿執筆時点では、群馬県警による事故報告書は発表されていないため、一部報道の記事内容を事実だと仮定してこれから先の話を進めたいと思います。

年末に関越道で発生した多重事故の現場(出典:NEXCO東日本新潟支社)
年末に関越道で発生した多重事故の現場(出典:NEXCO東日本新潟支社)

 ポイントは、大規模事故が発生する前に「最初の事故」が起こっていたという点です。

「最初の事故」は、スリップした大型トラックに中型トラックの2台のみが衝突したもの。110番通報を受けて群馬県警の県警高速隊が事故現場に到着し、これら2台を路肩に移動したというのです。

 つまり、2台のトラックは自走が可能だったと考えられるため、事故の規模はさほど大きくなかったかもしれません。

 問題は、この後です。

 一部報道によれば、県警高速隊が事故処理作業を行っていたところ、その後方で複数の多重事故が発生したといいます。

 つまり、「最初の事故」の発生から大惨事となった多重事故の発生までには、少なくとも10分程度かそれ以上の時間があったと考えられます。

 その間で警察及び道路管理者の事故処理が、当時の現場状況を十分に配慮したものだったかどうかという疑問が生まれます。

 具体的には、事故処理のために車線規制を県警高速隊がどのような手順で行い、その行為が後続車の走行にどのように影響したのか。

 そこに道路管理者の関係車両も到着していて県警警察隊をサポートしていたのかどうか。

 また、電光掲示板などで事故の状況をどのタイミングでどのように表示していたのか。

 車載カーナビやスマートフォン用地図アプリで、「最初の事故」の場所は提示されていたのか。

「最初の事故」の影響で発生した多重事故に巻き込まれた車両の走行速度や互いの位置関係の検証も必要ですが、そもそも「最初の事故」の処理は適切だったのかを検証するべきです。

 その上で、筆者のこれまでの体感から、高速道路における事故処理、または工事規制における課題とその解決に向けた可能性について触れたいと思います。

 最も重要なのは、高速道路を通行する車両のドライバーが、現在位置の先で「何が」「いつ」発生し、現時点でそれが「どのような状況になっているのか」を「できるだけ早い段階で」知ることです。

 今回の事故が発生する1週間前には東北自動車道や山形自動車道、また事故発生の1週間後には関越自動車道と上信越自動車道で乗用車を運転していましたが、その際にも事故処理と工事規制に対する「情報発信の遅れ」を実感しています。

 具体的には、道路サイドで「500m先、右に寄れ」という看板があっても、その先に車線規制がない。

 また別の場所では、長いトンネル内の複数箇所の電光表示で「右に寄れ」と指示があっても、その先で車線規制がまったくなかったのです。

 しかも、道路上や路肩に車線規制に関わる機材や人員の姿もないという状態でした。これらは「誤表記」と言わざるを得ません。

 こうした状態が続くと、その道をよく使うドライバーの中には、いわゆる「狼が来た」という緩慢な心理状態になってしまい、「右に寄る」行為が遅れることがあるかもしれません。

 道路管理者はこうした状況を改善する必要があるでしょう。

 そのほか、NEXCO各社は自動運転トラック車線の導入などを踏まえて、道路型に様々なセンサーを持つ機器を一定の間隔で設置することを検討中です。

 こうしたセンサーからの情報を走行中のドライバーに敏速かつ的確に伝えるシステムの構築を急ぐべきだと言えます。
 
 もう1点は、「時速50km規制」遵守についてです。

 多くのユーザーがこの時速50km規制遵守について疑問を持っているのではないでしょうか。

 なぜならば、時速50km規制となった区間において時速50kmで走行していても、周囲のクルマが規制区間前の規制速度である時速100kmや時速80kmからあまり減速しない場面を目撃しているからです。

 筆者が遭遇した前述の「右に寄れ」という表示がある区間も時速50km規制でしたが、周囲のクルマの速度は明らかに時速50kmを大幅に越える速度で走行していました。

 年末に発生した関越道の大惨事でも、事故現場周辺は大雪により時速50km規制となっていましたが、果てして事故当時にその周辺を走行していた車両は時速50km以下で走行していたのでしょうか。

 仮に、時速50km規制が遵守されていれば、たとえブラックアイスバーンになっていたとしても、事故の規模が縮小した可能性もあるはずです。

 そのほか、高速道路の速度規制については欧州で2024年7月から義務化されたスピードリミッター機構のISA(インテリジェント・スピード・アシスタンス)が参考になるでしょう。

 GPSなど衛星測位システムとナビゲーションによって警告音を発生させたり、または車両システムに対して強制的に速度制限を行うものです。

 今回の関越自動車道の大惨事を教訓として、高速道路での「二次的被害」を防ぐため様々な技術の導入を検討するべきではないでしょうか。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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