なぜ「TOYOTA」を消した? 社内で喧嘩勃発! 「エンジニアが作りたいクルマ」の狙いとは… 組織改革の真相
東京オートサロン2026のトヨタブースで掲げられたテーマはまさかの「喧嘩」。さらに「TOYOTA GAZOO Racing」から「TOYOTA」が外れるという衝撃の発表も数日前に行われました。一体なぜトヨタは喧嘩するのか。その背景にはクルマづくりにおける違和感が社内にあったことがあるようです。
トヨタ自動車内での喧嘩の意図は?
日本の自動車業界において、新年の注目イベントといえば「東京オートサロン2026」です。
TOYOTA GAZOO Racingブースでは、今回「喧嘩」というテーマが掲げられました。
これは開催直前に発表された、「TOYOTA GAZOO Racing」から「TOYOTA」を外した「GAZOO Racing」への回帰と、エンジニア魂をもう一度奮起させる「TOYOTA RACING」の発足という、二極体制に関連したものでした。
なぜ「TOYOTA」が外れるのか。そして、トヨタの「喧嘩(社内抗争)」とはどのような経緯で行われることになったのでしょうか。

2026年の東京オートサロンにおいて、トヨタブースは「喧嘩」をテーマに掲げ、会場の注目を集めました。
「喧嘩3本勝負」と題された企画の1つ目は、「親子喧嘩(GR vs ダイハツ)」です。
ダイハツの象徴である「軽トラ」をベースに、GRとダイハツがそれぞれカスタム対決を行いました。
トークショーでダイハツ側は、「認証不正問題の後、会社を元気にするために自分たちの手で作り上げた」と語り、設計図もない状態から現場の知恵と工夫で仕上げた「手作り感満載」の車両を披露。一方のGR側も、モリゾウ氏の私物パーツ(マフラー)の流用や、斬新な4人乗り仕様への改造など、遊び心全開で応戦しました。
2つ目は、本稿の主題でもある「GAZOO Racing」と「TOYOTA RACING」の戦いとなる「社内抗争」。豊田章男会長(モリゾウ)と中嶋裕樹副社長(ジャイアーノ)による喧嘩です。
そして3つ目が「カスタム対決(カムリ)」です。これもモリゾウとジャイアーノがそれぞれカムリをカスタムし、スーパー耐久2026の「富士24時間レース」でお披露目する予定だといいます。
なかでも注目されるのが、2つ目の「GAZOO Racing」対「TOYOTA RACING」の戦いです。
これまで豊田会長(マスタードライバー・モリゾウ)が掲げる「もっといいクルマづくり」や「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」により、それまでのトヨタ車よりも魅力的な商品展開が行われてきました。
実際にこうした活動により、トヨタ(トヨタ・レクサス・GR)のクルマは格段に良くなり、ブランドの魅力も高まっています。
その一方で、最近のトヨタ内におけるクルマづくりの考え方に変化も出てきていたようです。中嶋副社長によると「豊田会長の顔色ばかりをうかがうエンジニアと、そうではないエンジニアがいる」といいます。
続けて中嶋副社長は、「『モリゾウのためにクルマをつくる』ことが目的化している部分があるが、本来は『エンジニアとしていいクルマをつくる』のが目的であって、その結果がマスタードライバーのモリゾウに認められるものでなくてはならない」と話します。
さらに、「モリゾウが『いいね』と言えば正解という思考停止に陥り、エンジニアとしての『自分たちが作りたいクルマ』『(レースで)勝ちたいクルマを作る』というエゴが失われつつあったと思う」とも語ります。
こうした中嶋副社長の危機感などにより、組織をあえて対立構造に置くことで活性化を図る新体制が構築されました。

これが1月7日付で行われた「TOYOTA GAZOO Racing」から「GAZOO Racing」への名称変更です。なおこの変更には、豊田会長の想いも込められています。
GAZOO Racingの原点は、2007年のニュルブルクリンク24時間耐久レースにあります。
当時、活動が公式に認められず「TOYOTA」の名を使用できなかったため、「Team GAZOO」として参戦した経緯がありました。
他メーカーの開発車両に追い抜かれる中で味わった「トヨタにはこんな車は作れないだろう」と言われているような「悔しさ」こそが、同組織の原動力でした。
今回、あえて社名である「TOYOTA」を外すことは、大企業の論理に染まりつつあった現状を打破し、2007年当時のハングリーな精神(原点)に回帰するという決意表明とも言えます。

◆「GAZOO Racing」と「TOYOTA RACING」の役割分担
新体制では、以下の2つの組織がそれぞれの役割を担いながら、時に反発し合い(喧嘩し)、高め合う構造となります。
「GAZOO Racing」は、豊田会長(モリゾウ)が率いる組織です。
2007年の設立当初の想いに立ち返り、モータースポーツを起点とした「もっといいクルマづくり」と「人材育成」を強化します。
WRCなどのトップカテゴリーや市販車ベースの活動を通じ、感覚的な官能性やクルマの魅力を追求します。
かつてマスタードライバーの成瀬弘氏と共にLFAを鍛え上げたニュルブルクリンクでの経験や信念を継承し、ドライバー、エンジニア、メカニックを育成する場としても機能していくとしています。
一方で「TOYOTA RACING」は、中嶋副社長らが率いるエンジニア主体の組織です。
今回の新体制により、ドイツ・ケルンの研究開発拠点(TGR-E)も「TOYOTA RACING」に改称され、パワートレーンや先行開発技術に特化した活動を行います。
中嶋副社長は「ル・マンでの勝利」をひとつの具体的な目標に掲げており、ハイブリッドやBOP(性能調整)で複雑化するレース環境下において、原点である「壊れず速いエンジン(内燃機関)」の開発を進めていくようです。
こうしたことにより、エンジニアが自身のプライドをかけ、誰が乗っても速いクルマを提供するサプライヤーとしての立ち位置を確立していくといいます。
また、両組織の架け橋として「TGRR(TOYOTA GAZOO ROOKIE Racing)」が引き続き活動し、開発された技術や商品を実戦で鍛える「道場」としての役割を担うことも発表されています。
今回の体制改革は「モリゾウへの追従」を良しとせず、エンジニアが自我を持って会長と対峙することを促すものでもあるようです。
この緊張感ある関係性が、今後のトヨタのクルマづくりをどのように変化させるのか、そしてどのような動きとなるのかが注目されます。
Writer: くるまのニュース編集部
【クルマをもっと身近にするWEB情報メディア】
知的好奇心を満たすクルマの気になる様々な情報を紹介。新車情報・試乗記・交通マナーやトラブル・道路事情まで魅力的なカーライフを発信していきます。クルマについて「知らなかったことを知る喜び」をくるまのニュースを通じて体験してください。





















