横浜ゴムのスーパーフォーミュラ専用タイヤはハイパフォーマンスで環境にも配慮!? ワンメイクタイヤの秘密をレース関係者がそれぞれの視点で語った!【PR】

塚越広大監督が語る「1つのスペックで温度環境に対応することのすごさ」

 モータースポーツに詳しい人なら、乾いた路面で使うレース用のタイヤにはいくつかの種類が用意されていることをご存じでしょう。たとえば2025年のF1では6タイプのコンパウンドが用意され、温度やサーキットの特性などに合わせて選択されます。加えて、雨用のタイヤ1タイプと「インターミディエイト」と呼ばれる雨とドライのどちらにも対応できるタイヤもあるので合計8種類のタイヤが用意されています。

スーパーフォーミュラではドライ用/ウエット用それぞれ1種類のコンパウンドで夏から冬の走行まで全てを賄う

 レーシングタイヤは最高の性能を発揮できる温度域が限られるので、それにあわせて選べるようにいくつもの特性のタイヤが用意されており、国内最高峰のツーリングカーレース「スーパーGT」でも「ソフト」「ミディアム」「ハード」の3タイプを用意するのが一般的となっています。

 では、スーパーフォーミュラでは何タイプのタイヤが用意されると思いますか? なんと、驚くことに、乾燥路面用のタイヤはシーズンを通して1タイプだけ(そのほかはぬれた路面用タイヤが1タイプあるのみ)です。路面温度が低い3月から真夏の炎天下まで、同じコンパウンドのタイヤで対応するのは最高峰のレーシングカー用タイヤとしては異例です。

ドライ・リアのタイヤ「ADVAN A005 B」。サイズは360/620R13と市販車では考えられないほど幅広だが、持ってみると信じられないほど軽い

「多くの最高峰レースは気温などに応じて用意されたいくつかの特性のタイヤから最適なものを使いますが、スーパーフォーミュラはワンメイクなのでシーズン通して(溝つきタイヤを履く雨の日を除き)1つの種類のタイヤで対応する。これってすごいことだと思いませんか?

 3月などはまだ冬の気温で路面温度も低く、そうした状況でもしっかりとグリップ性能を引き出しつつ、灼熱(しゃくねつ)の夏でも同じタイヤで対応するなんてレーシングタイヤとしては珍しいこと」(塚越広大監督)

 しかも、ただグリップすればいいというわけではありません。フォーミュラマシンの速度や強大なダウンフォースにしっかりと耐えなければならないのです。

四季による気温の変化はもちろん、ドライバーの好みでもコンパウンドは違う。そんななか、1つのコンパウンドで通年賄えるタイヤってすごいのだ!

「コーナリング中は最大で4G以上に相当する遠心力がかかる(=実際の重さの4倍以上の力が側方から加わる)ので、ドライバーにもマシンにも、そしてタイヤにも大きな負担がかかります。それをこの四季があって温度変化の多い日本で、レーシングタイヤにもかかわらず1スペックでこなすというのは驚くべきこと。

 タイヤは路面と接する唯一の部分ですから、過酷な状況に耐えなければなりません。耐えながら幅広い温度域で高いパフォーマンスを出し続けるというのは本当にすごいことだと思います」

 スーパーフォーミュラ用タイヤの開発ドライバーを務めつつ、2025年シーズンはチーム「ThreeBond Racing」を率いる塚越広大監督はこう証言しました。

SF用タイヤ開発の担当が語る「サステナブルな原料を配合することの意味」

2025年シーズンから投入されたタイヤのサステナブルな原料の使用率はなんと約46%にものぼる(ドライ/ウエット用タイヤの平均値)

 最高の性能を発揮するツールに再生可能原料やリサイクル原料を使うイメージは一般的にはないでしょう。なぜなら、特定の性能を徹底追求するのであれば、それを実現するために最高のパフォーマンスを発揮できる素材を選ぶのが近道だからです。

 環境に配慮して使う再生可能原料やリサイクル原料は求める性能と相反する部分もあり、最高の性能を手に入れることを難しくするケースもあるからです。

2024年シーズンで使われたタイヤのサステナブルな原料の使用率は33%だったので、驚くべき“進化”だ

 だから、走りの性能を追求するスーパーフォーミュラ用タイヤの原料に再生可能原料・リサイクル原料が多く使われていると聞けば、意外に感じる人が多いのではないでしょうか。

 しかもその比率は年々上昇しており、2023年シーズンから2024年シーズンにかけて使われていたタイヤのサステナブルな原料(再生可能・リサイクル原料)の利用率は33%でした。

 それがなんと2025年シーズンからは約46%(ドライ/ウエット用タイヤの平均値)まで高められているのだから驚きです。

横浜ゴムタイヤ製品開発本部 モータースポーツタイヤ開発部の皆さん

 スーパーフォーミュラ用のタイヤは、従来の「枯渇性資源」と言われる原油や地下資源を原料とした合成ゴムやオイル、樹脂、シリカといった原材料の一部を置き換え、「再生可能原料」と言われる天然ゴムやバイオマスオイル、天然由来の樹脂、もみ殻シリカなどを使用しています。

 高い走行性能を求めるレーシングタイヤながら環境にやさしいチャレンジをしているのは意外ではないでしょうか。

レースで培った技術は市販タイヤにもフィードバックされている

世界的なカーボンニュートラル実現に向けた動きのなか、横浜ゴムが課せられる使命は大きいと語る斉藤英司氏

「2050年のカーボンニュートラルを実現するという世界的な課題があって、タイヤもそこへ向かう必要がある。だからわれわれは高い性能が求められるスーパーフォーミュラ用タイヤでも…いや、だからこそ再生可能・リサイクル原料の比率を高めるタイヤ開発をしているのです」

 そう説明してくれるのはスーパーフォーミュラ用タイヤの開発をまとめる横浜ゴムタイヤ製品開発本部の斉藤英司さんです。

レースで得た知見は市販車用のタイヤにも余す所なくフィードバックする。そのため、レース活動を続ける意義は大きいという

「レーシングタイヤは原料や構造など、それなりに市販タイヤとは異なる特殊な部分もあります。さらにサステナブルな原料を高い比率で使うとなると、高性能タイヤを作る独自のノウハウ・技術が必要です。でも、国内最高峰レースの要求に応える高い性能のタイヤを作り、ハイレベルな技術を身につけることでサステナブルな原料を市販車用タイヤにも高い比率で使える道筋が見えてくるのです」

「レースは極限の世界ですから、そこで技術を磨くと通常の市販タイヤ開発よりも進化スピードが速くなることは往々にしてあります。開発の進め方が違うこともあるので。そこでノウハウをさらに培えば、次は市販車用タイヤに生かすこともできるでしょう。

 よく言われる言葉で『レースは走る実験室』という例えがありますが、いまの私たちもまさにそう。こうして極限の世界で磨いた技術を、市販タイヤ作りにフィードバックしていきたいと思っています」(斉藤英司さん)

性能の向上だけじゃない! 環境への配慮も横浜ゴムの挑戦だ

2025 スーパーフォーミュラ第1戦の決勝1位を飾った太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)と、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGチーム代表の村岡潔氏

 スーパーフォーミュラ用タイヤの特徴は高い性能でもありますが、横浜ゴムがタイヤを供給するようになってからはタイヤによるサステナブル社会へのチャレンジも大きなトピックと言っていいでしょう。その開発でおこなわれた技術チャレンジが、将来の地球にやさしい市販タイヤにもつながっているというわけです。

2025 スーパーフォーミュラ第2戦の決勝1位を飾った牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

 限界領域でも使える高い走行性能に加え、適用温度域の広さ、そしてサステナブルな原料の使用を実現する。スーパーフォーミュラを通して行っている横浜ゴムのチャレンジには、いくつもの“すごさ”があることがお分かりになったのではないでしょうか。

第3戦と第4戦は4月19日と20日にモビリティリゾートもてぎで開催!

左から、第2戦決勝 2位の坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)選手、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGチーム代表の村岡潔氏、第2戦決勝1位の牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)選手、第2戦決勝3位の岩佐歩夢(AUTOBACS MUGEN)選手

 なお、今回取材したスーパーフォーミュラの第1戦の決勝は、優勝が太田格之進選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、2位が岩佐歩夢選手(AUTOBACS MUGEN)、3位が佐藤蓮選手(PONOS NAKAJIMA RACING)。第2戦の決勝は、優勝が牧野任祐選手(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、2位が坪井翔選手(VANTELIN TEAM TOM’S)、3位が岩佐歩夢選手(AUTOBACS MUGEN)という結果でした。

 次戦となる第3戦と第4戦は、2025年4月19日と20日に栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催されます。スーパーフォーミュラが走る姿を見るときは、タイヤにも注目してみると一段と楽しいレース観戦になることでしょう。

[Text:工藤貴宏 Photo:土居凌祐]

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SUPER FORMULA 2025, Development of YOKOHAMA TIRES

【画像】2025 スーパーフォーミュラ選手権 Rd.1/Rd.2の模様をもっと見る!(58枚)

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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