トヨタ過去との決別!? 通称「ゼロクラウン」 12代目は“ZERO”からのスタート
トヨタが21世紀を迎えて少し経った2003年に投入した12代目「クラウン」は、通称“ゼロクラウン”と呼ばれています。なぜ“ZERO CROWN”と呼ばれるのでしょうか。
価値観多様化の時代
トヨタが21世紀を迎えて少し経った2003年に投入した12代目「クラウン」は、“ZERO”の称号が与えられました。
12代目「クラウン」、通称“ゼロクラウン”と呼ばれています。これは、発表当時のキャッチコピー『“ZERO CROWN” かつて、このクルマはゴールだった。今、このクルマはスタートになる』が由来です。
7代目「クラウン」のキャッチコピー『いつかはクラウン。』の対極とも言えるこの表現には、当時の時代背景が反映されています。
それまで、日本人の価値観と言えば比較的単一でした。例えば、大企業で大過なく勤め上げ、それなりに出世をして、「クラウン」に乗るのがあこがれでした。そういう時代には『いつかはクラウン。』のキャッチコピーが馴染んだと思われます。
しかし、情報通信技術が発達し、グローバル化する社会の中で、人々のライフスタイルは複雑化していきます。それにともなって、価値観も多様化した21世紀では、『いつかはクラウン。』的な価値観では時代にそぐわなくなってきたのです。
当時でも、「クラウン」が日本を代表する高級車であったことは疑う余地もありません。しかし、裏を返せば、『いつかはクラウン。』の時代の古いブランドという見方もされていました。
そうした古い価値観から一旦決別し、生まれ変わるという意味と期待を込めて、”ZERO CROWN”は生まれたのです。
あらゆる部分が刷新された、次世代のクラウン
“ZERO CROWN”という名は、単なる宣伝文句のために与えられたものではありません。実際に12代目「クラウン」では、それまでの歴代モデルとは一線を画するほどの変化と革新が与えられています。
まず、変化があったのは心臓部とも言えるエンジンです。それまでは、長く直列6気筒エンジンを改良して使用していましたが、12代目「クラウン」ではV型6気筒エンジンへと切り替えられました。これにより、さらなる静音性と環境性能を手にすることができたのです。
また、同じくクルマの根本を成すプラットフォーム(車台)も刷新。トヨタ「マークX」やレクサス「GS」とも共有されるこのプラットフォームを使用することで、安全性能や走行性能、そしてコストパフォーマンスなどあらゆる面が改善されました。
中身だけでなくスタイリングも、それまでの直線基調のものから流麗でスタイリッシュなものへと変化。長く続いた保守的なデザインを打ち破ったほか、クルマの命ともいえるエンブレムの書体も変更されています。
グレード体系も「ロイヤル」と「アスリート」を軸に、多くのバリエーションをもたせたことで、あらゆる顧客ニーズに対応しています。
これからのクルマは、電動化や自動運転と並んでコネクティビティが重要になると言われています。2018年6月26日に発表された新型「クラウン(15代目)」は、初代コネクティッドカーと称され、LINEアプリと連携した機能などが採用されていますが、そうしたコネクティビティ関連の萌芽となる機能が搭載されたのは12代目「クラウン」です。
「G-BOOK」と呼ばれる情報ネットワークサービスでは、カーナビゲーションシステムからレストラン情報やホテル情報、駐車場情報など最新の情報を得ることができます。
また、車両が盗難等の危機にさらされた際には、自動的に警備会社へ出動要請が送信されるなど、最先端の機能が利用可能です。いまでこそ、スマートフォンによってあらゆる情報を簡単に取得することができますが、当時は画期的な機能でした。
こうしたコネクティビティ関連の技術は、新型クラウンへも受け継がれています。
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