全長4.4m! スズキ斬新「3列コンパクト・ミニバン」が凄い! パワフルな“2000cc”エンジン搭載! ガバッと開く「6枚の“観音開き”ドア」採用! 超クールな「男のミニバン」こと“P.X”とは!
かつてスズキが“新たな価値観のミニバン”として提案した「P.X」とは、一体どのようなクルマだったのでしょうか。
全長4.4m! スズキ斬新「コンパクト・ミニバン」が凄い!
2025年10月末から11月前半にかけて開催された「ジャパンモビリティショー(JMS)2025」では、未来のモビリティに対する提言が数多く提示されましたが、過去のモーターショーで発表された先見的なコンセプトカーの魅力も、あらためて見直されています。
この記事では、スズキが2005年の「第39回 東京モーターショー」で世界初公開したコンパクトミニバン「P.X(ピー・エックス)」が提示した、ミニバンの新たな価値観を振り返ります。

スズキは当時、「小さなクルマ、大きな未来」をテーマに掲げ、同社が得意とするコンパクトカーを通じて未来を切り拓くという、ブランドの「精神」と「技術」を提案しました。
そして今回取り上げるP.Xは、そのテーマのもとで誕生したコンセプトカーのうちの一つです。
P.Xのコンセプトは極めてユニークであり、一般的なファミリーカーとしてのミニバン像とは一線を画していました。
まず掲げられたテーマは「男のこだわりのプライベート空間」。
年齢を重ねて家族構成が変わっても、自分のスタイルを変えずに、クルマの中で自分の世界観を大切にする成人男性をターゲットに据えて開発されています。
そしてこの挑戦的なコンセプトは、車両設計にも如実に表れています。
ボディサイズは全長4420mm×全幅1800mm×全高1780mmと、コンパクトミニバンとしてはワイドで堂々としたサイズ感を採用。
エクステリアは、迫力のあるフロントフェイスに、ロングホイールベースと20インチの大径タイヤを装着し、ラウンドフォルムのボディ形状によって圧倒的な存在感と個性を放っていました。
さらに、ドアは左右に“3枚”ずつ設けられ、後部2枚のドアは最後部を“スライドドア式”とした観音開きという斬新な構造を採用。
乗り降りのしやすさと独特のサイドビューを両立させていました。
またP.Xに見られる最も大胆な提案は、インテリアのパッケージングでしょう。
一般的なミニバンが2列目を主役とするのに対し、P.Xでは1列目と3列目が主役という、かつてないレイアウトを採用。
2列目シートをチップアップすることで、3列目シートに座った際の空間をリムジン並みの広さにすることが可能です。
この豪華な空間には、ドイツの“レカロ社”製の本革シートや大型アームレスト、フットレストが奢られ、さらに15インチワイドモニターや大型スピーカーも搭載。
これにより、まるで移動するプライベートシアターのような、上質かつ豪華な空間を実現していました。
そしてパワーユニットには、2リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジンの搭載を想定。コンパクトミニバンとしては大きめの排気量を選択し、力強い走りによってクルマ好きの心を震わせます。
このようにP.Xは、家族ではなく大人の男性の趣味やライフスタイルをターゲットとするという、従来のミニバンには見られないコンセプトカーならではの挑戦的な提案をしていました。
残念ながら、出展から約20年が経過した現在もP.Xの市販化は実現していませんが、その独自の空間設計は、現代のミニバンに求められる「多用途性」と「パーソナルな快適性」の可能性を先取りしていたと言えるでしょう。
スズキが軽自動車だけでなく、コンパクトな車体の中でいかに付加価値の高い空間を創造できるかという、ブランドの技術的な探求心を示した、記憶に残る一台です。
Writer: パワーボム
関西大学社会学部卒業後、某CS放送局運営のメディアにてライターとしてのキャリアをスタート。自動車ブログの立ち上げから携わり、主にトヨタ車やレクサス車、キャンピングカーを中心に取材記事を多数執筆する。



















