2017年の第45回「東京モーターショー」で初公開され、注目を集めたトヨタのクロスオーバーSUVである「Tj CRUISER（以下、Tjクルーザー）」。

　積載性能とSUVらしいデザイン、そして魅惑のスライドドアという人気の3要素を組み合わせたクルマについて、あらためて詳しく見ていきましょう。

　最近人気を集めるクルマに共通するのは、SUVテイストなことと、スライドドアが付いていること。こうしたトレンドに敏感なトヨタは、今から8年も前に、まるで令和の最先端をひた走るようなクルマを「平成のモーターショー」に出展していました。

　それが、Tjクルーザーです。

　このクルマは、バンの積載性能とSUVの力強いデザインが融合された新ジャンルのクロスオーバーコンセプトとして登場しています。

　車名の“Tj”は「TOOL-BOX」と「JOY」の頭文字から来ており、名前の通りに道具箱のように使い倒せて、様々な場所に出かける楽しさを感じることができるクルマに仕上がっています。

　そして“CRUISER”は、本格四輪駆動車「ランドクルーザー」に代表されるトヨタのSUVで伝統的に使用されている名称であることはいうまでもないでしょう。

　ボディサイズは全長4300mm×全幅1775mm×全幅1620mmで、ホイールベースは2750mm。乗車定員は4名となっています。

　現行のトヨタ車でいうと、コンパクトSUV「ヤリスクロス」以上で「カローラクロス」未満という手ごろな大きさです。

　ボディデザインは、バンのように使えるスクエアなキャビンが特徴的で、そこへSUVらしい大きなタイヤが装着されています。

　ボンネットとルーフ、フェンダーなどには、無造作にモノを置いても汚れや傷がつきにくいケアフリー素材（強化塗装）を採用し、タフなアウトドアでの利用でも臆することなく使い切れる実力を兼ね備えました。

　そしてTjクルーザーの大きな特徴ともいえるのが、広大な室内です。全長4.3mのコンパクトなボディながら、室内に約3mもの長尺物が積み込めます。

　また助手席からラゲッジスペースまでが段差・傾斜・凹凸の無い完全なフルフラットになり、車中泊にももってこいの仕様といえます。

　アウトドアユースでも助かる装備として、座席シートの裏側やデッキボードなどには多数の固縛ポイントを設けてあり、小さな荷物から長尺物までを自由に固定できるところも、荷物をたくさん積み込むユーザーには嬉しいポイントです。

　さらにリアドアがスライドドアになっていることで、これまでのSUVには無い機能性を備えています。

　スライドドアは現在コンパクトミニバンや軽スーパーハイトワゴンで採用されているドアタイプですが、これがSUVに採用されれば、まさに「鬼に金棒」状態でしょう。

　ドアの開閉が怖いからとSUVをあきらめ、スライドドアのミニバンや軽自動車に乗ってきた子育て世代にも安心して使えます。

　プラットフォームは次世代のTNGAプラットフォームを想定し、パワーユニットは2リッタークラスのエンジン＋ハイブリッドシステムを採用。駆動方式は前輪駆動と4輪駆動を想定していました。

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　こうしたきめ細かな設定も含め非常に現実的なコンセプトカーだったため、2017年の発表当時「市販化ほぼ確実」とまでいわれていたTjクルーザーですが、現在までの約8年間、正式な市販化発表はありません。

　ただ、コンパクトな新型「ランドクルーザーFJ」の登場を聞いたトヨタディーラーの営業マンからは、「ならばTjクルーザーも出てくるかも」と期待に満ちた声も聞こえてきます。

　2025年10月に開催された「ジャパンモビリティショー2025」では、Tjクルーザーのコンセプトをより市販化に近づけたモデルを目にすることができませんでしたが、ノリにノッてるトヨタのことですから、きっと水面下では開発は進んでいるに違いありません。

　今後のトヨタSUVの動きには、引き続き要注目です。