スポーツカーから「バババン!」 ものすごい音… 一体なに? 「花火?銃声?」勘違いする“破裂音”の正体とは? いまでは「ほぼ演出目的」の“謎サウンド” 本当の目的は?
スポーツカーや高性能車の一部では、減速時などに乾いた連続音を発します。一体何なのでしょうか。
「バブリング音」 現代のクルマでは演出の要素が強い
スポーツカーや高性能車が減速時などに発する「パンッ、パパッ、ボボボッ…」という乾いた連続音(というか破裂音)。
あれって何のための装備なのでしょうか。

国内外のスポーツカー、スポーツセダン(ステーションワゴンやSUVなども)が減速時に発する連続音を聞いたことがあるかもしれません。
これは「バブリング音」と呼ばれるもので、そのルーツはターボエンジンを搭載していた1980年代のF1や、「グループB」カテゴリーに属するラリーカーに採用されていた「アンチラグシステム」とされています。
この「アンチラグシステム」とは、ターボエンジンのアクセルオフ時のレスポンスの遅れを解消するための機構であり、「ミスファイアリングシステム」とも呼ばれます。
「頭文字D」の劇中で、須藤京一が操る三菱「ランサーエボリューションIII」にもミスファイアリングシステムが使われていたこともあり、「あ、あれのことか」と合点がいく人がいるかもしれません。
近年のスポーツカーはECU(エンジンコントロールユニット)で燃料噴射や点火時期を制御し、あえて排気内で小爆発を起こすように設定していることがあります。
クルマによっては新車の状態からバブリング音を発するモデルも存在します。
一例として、BMW「M」シリーズ、メルセデス・AMG、日産「フェアレディZ NISMO」、トヨタ「GRヤリス」、アバルト「595」など、これらは「スポーツモード」時にバブリングが強調される傾向があります。
また、ノーマルのクルマをチューニングすることでバブリング音を出すことも可能です。その代表例がコンピューター(ECU)チューニングです。
アクセルをオフにしたときのコンピューターのマッピング(制御)をバブリング音が出るように書き換えるのです。
この際「ハブリング音を出すためだけにCPUを書き換える」のか「エンジンの出力向上も含めてCPUを書き換える」によって、費用やクルマの特性が変わってきます。
アクセルをオフにしたときのバブリング音は、窓を閉め切った車内でも聞こえますし、窓を開ければ音量はより顕著になります。
周囲にクルマがいないことを確認したのち、トンネル内で意図的にアクセルをオフにして「ボボボッ…」という音を堪能したくなるかもしれません。
このバブリング音を発するためのコンピューターチューニング、当然ながらデメリットもあります。
ノーマルの状態ではバブリング音が出ないセッティングになっているところに、意図的に音を出す方向へと変えるのです。
この際、もっともダメージを受けるのは排気系統の「触媒」です。
エキゾーストパイプの内部で起こる爆発が起こり、その際の爆風が触媒にダイレクトに当たります。
想定外の爆風を浴び続けることになる触媒がいずれどうなるか…。その結果は推して知るべしです。
これは余談ですが、コンピューターチューニングにより、NAエンジンでもバブリング音を発することができます。しかし、これは完全な「演出」です。
バブリング音を発する原理を知っている人からすれば「なんであのクルマ(NAエンジンのはずなのに)からバブリング音が聞こえるんだ」となるわけです。
本来の「ボボボッ…」というバブリング音は、排気管内で混合気が燃焼している音であり、スポーティさを演出する効果を狙って発しているわけではないのです。
また最近は、排ガス規制や騒音規制の強化で、自然発生型のバブリングは減少傾向にあります。
近い将来、バブリング音が電子音に置き換わったり、そのまま自然消滅してしまう可能性もゼロではありません。
楽しめるうちにバブリング音を楽しんでおく…というカーライフも「なきにしもあらず」かもしれません。
ただし、車種やチューニングによっては、花火や銃声かと錯覚するようなものすごい音量のバブリングを発するケースもあります。
あまりに大音量の場合、公道でバブリング音を発生させるのは、控えておいたほうがよいかもしれません。
Writer: 松村透
株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。















