初参戦初優勝のヤマハ「TY-E」 開発者はメカニカルクラッチとフライホイールで勝利を確信していた!

ヤマハの電動トライアルバイク「TY-E」は、競技前に勝利を確信していました。その理由を世界選手権前に「TY-E」開発プロジェクトリーダー豊田剛士さんから事前にお話を聞いていました。

半クラッチが絶対に必要な電動トライアルバイク

 青木:良い印象というのは、電動マシンならではの特性がトライアルに適しているということであったり、軽量化を突き詰めたCFRPモノコックフレームからなるスリムで軽量な車体というところでしょうか。

 豊田さん:エンジン車から乗り換えたときに、違和感がなかったことです。メカニカルクラッチが積んであることやフライホイールを備えたことが貢献しています。

「TY-E」開発プロジェクトリーダー豊田剛士さん

 青木:メカニカルクラッチ。つまりトランスミッションはないのでシフトチェンジはしませんが、半クラッチはありクラッチレバー操作でトルクをエンジン車と同じようにコントロールできるのですね。

 豊田さん:そうです。トライアルの場合、瞬間的にトルクを出さなければならないシーンが多くあるので、メカニカルクラッチが必要だと考えました。そういったところで、違和感なくライディングできると感じていただけたんだと思っています。

 青木:エンジン車の「TYS250Fi」と、クラッチの構造や容量は同じですか。

 豊田さん:詳しいことは言えませんが、油圧の湿式多板クラッチですし、容量を含め「似ているスペック」と言っていいと思います。

 青木:それとフライホイールを採用しているのも興味深いところです。レシプロエンジンだとクランクケースに組み込まれる“弾み車”ですが、どうしてフライホイールを備えたのでしょうか。

 豊田さん:電動モーターだけですと、エンジンに比較すると慣性マスとしては小さくなりがちです。トライアル用途としてはイナーシャルが欲しかったということです。

 青木:低速トルクに有利ってことなのでしょうか。

 豊田さん:パンと飛び出す瞬発力に有効なのと、トラクションのフィーリングに優れます。フライホイールがないと路面からの負荷が大きくかかったときに、回転の変動が大きくて良好なトラクションが得られません。たとえばステアケース(段差)に当たったときも、負けずに登っていくことができるのです。

 青木:ステアケースに飛びついたとき、“当たり負け”せずにグイッと登っていける。駆動輪が木の根っこに滑って空転するのではなく、しっかり食いついていくイメージですね。

 豊田さん:そうですね。それとモーターの場合、制御のしやすさも利点だと思います。たとえばエンジンで、ココでは出力を落としたいとなっても、追従するのに時間がかかってしまいますが、モーターではそこの制御性が「2ケタ勝る」と言われていまして、ライダーにとってもコントロールしやすいのです。

 青木:マップを持っていて、たとえば発進時にクラッチを繋いだ付近のトルクを太くするという具合に、いかようにもセッティングできるのですか。

 豊田さん:はい、自在にできます。なので、この車速のこの回転域は力が欲しいですとか、逆に削って欲しいなどといったライダーの要望に、柔軟な対応ができます。

電動モーターとフライホイール

 青木:水冷というのは考えなかったのでしょうか。

 豊田さん:水冷化のデバイスを追加するか、空冷でそのままいくか両方を比較検討し、トータルでは空冷だろうと決めました。

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