自転車で“用水路”に「転落」 過去には死亡事故も… 用水路に潜む「危険性」とは? 一方で対策が難しい実情も
愛媛県松前町の水路で女子高校生が倒れているのが発見され、その後死亡しました。高校生は自転車とともに水路に転落したとみられていますが、同様の事案はこれまでにも多数発生しており、注意が必要です。
2024年の用水路における死者・行方不明者はなんと100人! 通行中に気をつけたい点は?
2025年11月1日、愛媛県松前町の町道沿いの水路において、町内に住む16歳の女子高校生が倒れているのが発見されました。意識不明の状態で病院に搬送されましたが、2日の夜に死亡しました。
同様の事案はこれまでにも発生していますが、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。

発見時、高校生のそばには自転車も落ちていたほか、高校生の手足にすり傷があったということで、警察は町道を走行中に水路に転落したとみて、高校生の死因や当時の詳しい状況を調べています。
なお水路は深さが約90cm、幅が約80cm、当時の水深はおよそ14cmで、町道と水路の間に転落防止の柵などは設置されていませんでした。
このニュースに対しては多くの反響があり、「車道から水路まで結構な高低差があるし、コンクリート作りだから、うっかり転んで転落して運悪く頭を打ったりしたら命に関わるだろうね」「近所の人がこれに似たことになって長期入院、障害が残りリハビリ生活になりました」などの声が寄せられています。
また「水路や用水路に転落しての死亡事故というのは思いのほか多いようですね。亡くなった高校生の冥福をお祈りするとともに、地域で安全対策をしっかりやってほしいと切に願います」といった、用水路への転落事故防止対策を求める声も上がっています。
実は今回の事例のように、人が用水路に転落する事故は全国でたびたび発生しています。
警察庁が公表している「令和6年における水難の概況等」によると、2024年中における水難の発生件数は1535件、水難者は1753人で、そのうち死者・行方不明者が816人にのぼります。
さらに2024年中の「用水路」での死者・行方不明者数は100人であり、全体の12.3%を占めています。これは「海」や「河川」に次ぐ多さであり、用水路への転落の危険性がうかがえます。
加えて、中学生以下の子どもが用水路に転落して亡くなる水難事故も毎年のように発生しています。今年5月には兵庫県丹波市内の用水路に1歳の男の子が転落して死亡する事故があり、母親が自宅で少し目を離した間に子どもが外に出て、誤って転落したものとみられています。
このような事故を受け、用水路の一部にフタやフェンスなどを設置する自治体もみられます。
ただし自治体の予算の都合上、すべての用水路にそのような転落防止対策をとることは難しく、転落の危険性が高い場所に限定して対策しているケースもあります。
また用水路には農業用水や工業用水、防火用水などを運ぶ役割があり、清掃や維持管理がしやすいよう、あえてフタを設置しないケースも多くみられます。
これは用水路にフタをした場合、流れてきた土砂や異物が詰まってしまい、清掃や管理に多大な労力がかかってしまうことがあるためです。
つまり費用面や維持管理の面から、用水路への転落防止対策が進んでいない現状があるといえるでしょう。全国各地にはいまだ危険な用水路が数多く存在していることから、住民一人一人が転落に注意する意識を持つことが大切です。
具体的には、用水路の反対側など安全な場所を通行する、道路と用水路の境目が見えるよう懐中電灯や自転車のライトを点灯する、スマートフォンを操作しながら歩いたり自転車に乗ったりしないといった点に留意しましょう。
特に小さな子どもがいる家庭では、用水路の近くで遊ばない、用水路に近づかない、と教えることも必要です。またクルマを運転するドライバーも、用水路沿いの道路を通行するときは歩行者・自転車に近づき過ぎないよう配慮すべきといえるでしょう。
※ ※ ※
過去に京都大学の研究チームが発表した実験結果によると、小さな子どもが側溝や用水路に転落した場合、水深がわずか10cmであっても溺死する危険性があることが明らかになっています。
転落事故を防止するためには、危険度の高い用水路にフェンスを取り付けたり、家庭で危険な用水路について情報共有したりと、ハード面とソフト面の両方の対策を実施していくことが重要です。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。













