日産「タウンスター」は、欧州の小型商用車（LCV）市場を狙って2021年9月に登場したモデルです。

　位置づけとしては、ガソリン／ディーゼル系の「NV250」と、EVの「e-NV200」を統合する後継モデルにあたります。

　タウンスターは、ルノー・日産・三菱アライアンスの協業によりつくられたCMF-Cプラットフォームをベースに開発されました。

　背の高いハイトワゴンスタイルで、後席左右にはスライドドアを備える実用的なモデルです。

　ボディサイズは標準ホイールベース「L1」で全長4488mm×全幅1860mm×全高1838mm。ロング「L2」では全長4910mmに拡大されます。

　乗用モデルの「タウンスター・コンビ（2列・5人乗り）」と「エバリア（3列・7人乗り）」、商用仕様の「パネルバン（標準・ロング）」や「クルーバン（乗用兼用バン）」などが設定されています。

　また仕向け地によっては乗用モデルを「タウンスター ステーションワゴン」名で売っているエリアもあります。

　そんなタウンスターシリーズは、ルノー「カングー」、メルセデス・ベンツ「シタン」と兄弟関係にあるモデルで、生産はフランス北部のモーベージュ工場で行われ、欧州を中心に展開されています。

　この背景には、欧州での商用バン需要の高さと、環境規制への即応がありました。

　e-NV200が築いたEV（電気自動車）小型バン市場をさらに拡大しつつ、内燃機関モデルの実用性も残すことで、多様な顧客ニーズを一台でカバーする狙いです。

　外観デザインはパワートレインによって差別化されており、EV仕様は日産「アリア」や新型「エルグランド」などの最新モデルを想起させる和テイストの組子調パネルとシャープなLEDライトを備え、未来志向を前面に押し出しています。

　一方ガソリン仕様は従来型に近いメッシュグリルで堅実さをアピール。どちらも直線的でボリューム感あるシルエットを持ち、商用車らしい頑丈さと日常使いでの親しみやすさを両立しています。

　インテリアは「走るオフィス」をテーマにし、合計44リットルの収納スペースを確保。8インチタッチスクリーンとデジタルメーター、Apple CarPlayやAndroid Autoへの対応など、デジタル機能も充実。

　商用仕様は耐久性を重視した素材を使い、乗用モデルでは質感を高めた仕立てとするなど、ユーザー層に応じた設計がなされています。

　パワートレインは複数用意され、1.3リッター直列4気筒ターボエンジン（最高出力130PS・最大トルク240Nm）モデルは、効率と力強さを両立。

　一方EVは122PS／245Nmを発揮し、45kWhバッテリーで最大航続距離295km（WLTP複合モード）を確保。80kWの急速充電に対応し、15％から80％まで約37分で充電可能です。ガソリンとEVを同一車格で展開する点は、タウンスターの大きな強みといえます。

　荷室積載量は約800kg、牽引は最大1500kgまで対応し、ユーロパレット2枚を積載可能とするなど、商用ユーザーにとって実用性は高水準です。

　安全装備も充実しており、自動緊急ブレーキ（衝突被害軽減ブレーキ）、死角警報、車線維持支援、牽引安定制御などのADAS（先進運転支援機能）が備わります。

　車両の周囲360度をディスプレイに合成映像で表示する「インテリジェント アラウンドビューモニター」も設定されるほか、EV仕様には、高速道路での車線維持や追従を支援する運転支援システム「プロパイロット」も搭載され、商用車でありながら乗用車並みの快適性と安心感を提供しています。

　欧州市場での価格は、商用モデルが2万8251ユーロ（約499万円）から、乗用モデルが2万9990ユーロ（約529万円）から設定されます（ドイツ仕様の場合）。

※　※　※

　欧州市場に特化したモデルであることや、兄弟車のカングーが導入されていることなどから、タウンスターの国内導入は現段階ではあまり期待できないのが正直なところ。

　しかしe-NV200終了後、日本市場では小型EVバンが不在となっており、環境対応の観点から今後EVモデルが導入される可能性もないとはいえません。今後の動向に注目が集まります。