買う気もないのに「試乗だけしたいです!」 販売店はどう思ってる? よくいる「冷やかし客」“上手な対処”に困る現場… 時間のムダになっても「邪険」にできない“切実な事情”とは

ディーラー試乗車は、買う気もない人が乗ってもいいのでしょうか。

「買わないけど試乗したい」 これってOKですか?

 各自動車ディーラーには気になる新車を試せる試乗車が用意されています。

 買う気もないのに気軽に試乗してしまっていいのでしょうか。

ディーラー試乗のイメージ[画像:PIXTA]
ディーラー試乗のイメージ[画像:PIXTA]

 待望のニューモデルは、ディーラーのスタッフにとっても新たなユーザーと接触する機会が作れる貴重な場です。

 また、既存のお客様に対しても「ニューモデルが発売されたのでご覧になりませんか」とアプローチする絶好の機会でもあります。

 しかし、すべての来店客がクルマの購入を検討している「見込み客」とは限りません。

 当然ながら、なかにはカタログが欲しい「だけ」であったり、試乗が目的の「冷やかし客」も含まれます。

 ディーラー側としては来店客を選ぶことはできませんから、とにかく対応するしかありません。

 特に注目度が高いスポーツ系のモデルがフルモデルチェンジされ、試乗車が用意されると「とりあえず乗ってみたい」というユーザーが大挙して来店します。

 そうなると試乗は順番待ち。駐車場は満車となり、本来であれば大切にしなくてはならない既存客にも迷惑をかけてしまうこととなります(たいていの場合、状況を察して後日来店してくれるなど理解ある人が多いようですが)。

 いわゆる、「買う気はないけれど試乗だけはしたい」というユーザーに対して、ディーラーのスタッフはどのように感じているのでしょうか。

 首都圏にある国産ディーラーのスタッフに聞いてみました。

「すぐにご購入する予定がなくても試乗していただく分にはまったく問題ありません。ご関心を持っていただくことがまず大事ですから。

 できれば『〇〇◯(試乗したクルマ)はいいぞ』って、SNSなどでアピールしていただけるとありがたいです(笑)。

 ただ、困るのは暇さえあれば試乗し、延々とインプレッションをスタッフに聞かせるお客様がいらっしゃるので、これは正直悩みの種です。

 極めて稀なケースではありますが、頻繁に試乗してディーラーでコーヒーを飲みながら長時間滞在していき、さらには女性スタッフにちょっかいを出すようなお客様には厳しい対応を取らせていただくことはあります」

 また、とある輸入車ディーラーではこんなコメントも。

「正直、あきらかに試乗目的でご来店されるお客様はなんとなくこちらも分かっています。

 そんなときは新人のセールスに試乗に同乗させて、接客のOJTの機会とさせていただくこともあります。

 我々が懸念しているのはGoogleマップの口コミなんです。

 お客様によっては、対応にご不満があると『あのディーラーは対応が悪い』と口コミに書き込む方がいらっしゃるんです。

 いちど書き込まれた口コミの削除はかなり難しいようですし、100のうち99は良い書き込みがあっても、1つのネガティブな口コミで『あのディーラーに行くのはやめておこう』と判断されてしまうのは非常に辛いんですね。

 よって、複雑な思いもありつつ、出来うる限りきちんと接客するように心がけています」

(タダで)最新モデルが試乗できる条件として、氏名や住所、所有しているクルマなどの個人情報を記入してもらい、顧客リストに加わってもらうこととなります。

 しかし、いまは試乗したクルマのインプレッションをSNSにアップするユーザーも少なくありません。

 それなりのフォロワー数を抱えているユーザーが、冷やかしとして来店して試乗するケースもあり、このひとことやショート動画などがバズって、良くも悪くも注目度を高めることがあるので、邪険にはできない側面があります。

 とはいえ、ディーラー側としては1台でも多くの契約が欲しいのは偽らざる本音です。

 どうしても試乗したいモデルがあるとすれば、「今すぐ買う予定はありませんが、気になって仕方ないので試乗させて欲しい」と正直に言った方が好印象です。

 可能であれば平日の空いている時間を狙うとスムーズであり、うまくすれば少し長めのコースを試乗させてくれることもあります。

 結論としては、「試乗は自由だけど、営業妨害にならないようにユーザー側にも配慮が求められる」ということとなりそうです。

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Writer: 松村透

株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。

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