ヤマハの「2シーター3輪トライク」はどんな乗り味? 「コーナリング」を最大限に楽しむための「後輪操舵」も採用 「TRICERA proto」開発の経緯とは?
ヤマハは、2025年10月31日から一般公開が始まったジャパンモビリティーショー2025の会場で、電動トライクのコンセプトモデル「TRICERA proto(トライセラプロト)」を参考出展しました。同モデルにはどのような意図で生まれたのでしょうか。
二輪メーカーならではの視点
ヤマハは、2025年10月31日から一般公開が始まったジャパンモビリティーショー2025の会場で、電動トライクのコンセプトモデル「TRICERA proto(トライセラプロト)」を参考出展しました。
このモデルは、後輪を操舵することで、これまでにない運転の楽しみを増幅させることを目指しています。

TRICERA protoは、3輪パッケージを持つフルオープンのEVとして開発され、新たなドライビングプレジャーを提案します。感性に響く刺激的な旋回性能と、新しい感覚の操縦フィールを両立させており、乗り手が意のままに操るための習熟過程さえも楽しめる、3輪手動操舵(3WS)を備えた実走可能なコンセプトモデルです。
このクルマの最大の特徴について、ヤマハ発動機の技術開発統括部 プロジェクト推進部 新事業商品2グループの宮本秀人さんは、「やはり一番の特徴は後輪が動くことによる、“全輪操舵”が可能なことで、この構造により旋回の楽しさがより強調されていると感じています」と話します。コーナリング中にハンドルの向きとは逆に後輪を操舵することで、「あれ、こんなクイッと曲がるんだ」という驚きのある感覚が得られ、それが乗り手の意のままにクルマを操る実感へと繋がるといいます。
2023年の同イベントで発表された「TRICERA」の後継モデルと位置づけられるTRICERA protoは、実際に走行できる点が大きな違いです。宮本さんによれば、「私たちが検討し、一番楽しいと思っているのが、車速域で言うと20kmから30kmぐらいで、それらを踏まえてホイールベースであったり、車両のサイズ感を決めています」とのことで、特定の速度域での楽しさを追求して設計されています。
このユニークなコンセプトが生まれた背景には、二輪メーカーであるヤマハならではの視点があります。「二輪でいうコーナリングの楽しさって、端的に話す人は多いんですけど、具体的に人間は何を感じて楽しさに繋がっているのか、そこのきっかけを与えてくれたのがやはり二輪車にあるのかと思っています。それを突き詰めようとした時に、そのコーナリングの楽しさを人間研究視点で1回やってみたのが開発の起源と言えます」と宮本さんは語ります。バイクのように車体を傾ける(リーンする)ことはありませんが、コーナリングにおける楽しさには共通する部分があると考えているといいます。
前後輪を操舵できる車両の特性である高い旋回応答性と、ドライバーが感じる感覚との結びつきに着目し、人間研究の視点から最もFUNを感じられる旋回制御を施すことで、異次元の人機一体感を実現しています。また、走行音をチューニングするサウンドデバイス「αlive AD」を搭載し、操縦に没入するドライバーの高揚感をさらに高めます。
デザイン面では、3輪構造を強調するセンターフレームがアーチ型のシルエットを形成。人間が乗る空間と機能部品の空間を対比させることで独創的なスタイルを生み出し、3輪パッケージの構造自体を魅力的に見せる新しいスタイリングを提案しています。操舵モードは、手元のパドルシフトでリアタイヤの向きを変えられるマニュアルモードと、操作が不要なオートマチックの2種類が用意されています。
宮本さんは、「車両の姿勢を制御していく、自分の手で制御できるっていうのが一番の強みで、ハンドルに備えられたパドルで後輪の操舵出来る点もポイントですね」と、手動制御の魅力を強調します。
TRICERA protoは公道での区分上、リバーストライクに該当します。現状はまだ研究開発の段階であり、「量産についてのお声も頂いていますがそこは慎重に考えていかなければと思っています」と宮本さんが述べるように、市販化については未定です。
「コーナリングの楽しさは理屈で話すとどうなのかという部分は、やはりちょっとぼやっとしてるところがありますが、TRICERA protoを通して、その点を突き詰めていきたいですね」という言葉通り、このモデルを通じて運転の根源的な楽しさを探求していくヤマハの今後の展開から目が離せません。
Writer: くるまのニュース編集部
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