無断駐車を「盗難車かも…」と通報するのってアリ? SNSで警察への通報方法が話題に!
クルマを所有する人の中には、無断駐車をされて困ったという経験を持つ人も少なくありません。SNS上ではときどき、無断駐車について「盗難車かも、と警察に通報すれば良い」というアドバイスも見受けられますが、これはやっても良い行為なのでしょうか。
「盗難車が駐車されているかも」、法令上の問題はある?
先日X(旧Twitter)において、無断駐車とみられるクルマの両サイドに別のクルマをギリギリまで近づけて駐車し、真ん中のクルマが出庫できないような措置をとっている画像が投稿され、話題となりました。
この件は結果として無断駐車ではなかったことが明らかになっていますが、投稿に対しては「ブロックされて当然」「無断駐車にはこれくらいやっていいと思う」など賛同する意見が多く上がりました。
今回に限らずSNS上では無断駐車への対抗策として、「盗難車かもと警察に通報すれば良い」というアドバイスも見受けられますが、そのような行為は問題ないのでしょうか。

同様の投稿はSNS上で散見され、無断駐車車両の前にクルマを置いて出られなくしたり、過去には飲食店の従業員が無断駐車をした車両に250枚を超える大量の警告文書を貼り付けたりした事例などがあります。
そもそも無断駐車された側がこのような強行手段をとる背景には、警察が駐車場での無断駐車を取り締まることができないという現状があります。
公道での駐車違反とは異なり、基本的に私有地での駐車トラブルは「民事不介入」という理由から、警察で積極的に対応していないのが現状です。
これに対してSNS上では、「見かけない不審なクルマが放置してあるって通報すると意外と来てくれますよ」といった声や「こういう場合は『敷地内に不審な車が停まっている。盗難車かもしれないので見に来てくれ!』って110番通報するのが一番いいらしい」などのアドバイスが寄せられています。
では実際のところ、無断駐車車両を「盗難車かもしれない」と言って通報しても良いのでしょうか。
結論から言うと、警察が通報によって現場に駆けつけ、駐車車両を調査するといった積極的な活動は期待できるものの、通報には法的なリスクがともなうことに留意しなければなりません。
仮に「盗難車かもしれない」といって警察に通報すると、警察は刑事事件として対応する義務があるため、現場に来てクルマのナンバーを照会し、盗難車であるかどうかを確認します。
万が一盗難車であれば、事件の証拠品として警察がクルマをレッカー移動させますが、実際は事件性のない無断駐車であることがほとんどです。
盗難車でなければ警察が強制的に動かすことはできず、対応してもらえたとしても、クルマの所有者に連絡をとり、移動するよう指導するくらいといえるでしょう。場合によっては所有者と連絡がつかず、有効な対策がとれない可能性もあります。
また「盗難車かもしれない」と言って警察に通報した経験のある人からは、「これやったけど、盗難車じゃないので警察としてできることは持ち主にお電話と、近隣を広報車で巡回するだけですと言われた」という声も寄せられました。今のところ、警察でとり得る対応には限界があるといえます。
さらに、明らかに盗難車でないと知りながら警察に「盗難車かもしれない」と通報した場合、ウソの通報をしたとして刑法第233条の「偽計業務妨害罪」や軽犯罪法第1条第16号の「虚構申告罪」に問われるおそれがあります。
たとえば同じクルマによる無断駐車が日常的に繰り返されていて、そのドライバーが近隣住民だと分かっているようなケースでは、上記の「明らかに盗難車でないと知っている」状況に該当する可能性があるという点に注意が必要です。
実務上は、警察が通報者を偽計業務妨害罪や虚構申告罪で検挙する可能性は低いとみられますが、警察に対応してもらいたいがために「盗難車かもしれない」と繰り返し通報するのは控えた方が良いといえるでしょう。
そして、無断駐車のクルマにタイヤロックを取り付ける、勝手にレッカー移動する、物理的に動かせないような措置をとるといった行為は法令上「自力救済」と呼ばれ、原則として禁止されています。
加えて、タイヤロックやレッカー移動などで無断駐車のクルマに傷が付いてしまった場合には所有者から逆に損害賠償を求められるおそれもあります。
無断駐車に対しては警察に通報の上、クルマに傷がつかないように張り紙をするといった慎重な対応が求められます。
※ ※ ※
無断駐車は大変腹立たしい行為ではありますが、法令上は有効かつ即効性のある対応をとることが困難な状況にあります。
今のところは、自分の駐車スペースにカラーコーンやポールチェーンを置くなど、無断駐車をされないための対策に力を入れた方が良いかもしれません。
Writer: 元警察官はる
2022年4月からウェブライターとして活動を開始。元警察官の経歴を活かし、ニュースで話題となっている交通事件や交通違反、運転免許制度に関する解説など、法律・安全分野の記事を中心に執筆しています。難しい法律や制度をやさしく伝え、読者にとって分かりやすい記事の執筆を心がけています。



















