ダイハツ「リッター60km」のスゴイ軽自動車!「まさに通勤最強カー」と語られる「“4人乗り”軽クーペ」に大注目! 偉大すぎる“超・低燃費”エコカー「UFE-II」とは!
燃費60km/Lを目指しながらも市販されなかったダイハツのコンセプトカー「UFE-II」。その革新性と功績をたどります。
ダイハツ「リッター60km」のスゴイ軽自動車!
2003年の「東京モーターショー」でダイハツが発表したコンセプトカー「UFE-II(ウルトラ フューエル エコノミー2)」は、燃費60km/Lという驚異的な目標を掲げた未来の軽自動車。
「走る実験室」とも呼べるその仕様は、軽自動車の常識を超えるものでした。

ボディサイズは公式には公表されていませんが、軽自動車規格(全長3.4m以下)に収まる設計とされ、同車の後継コンセプトカーでは全長3395mm×全幅1475mm×全高1200mmという数値が示されています。
車両重量はわずか570kgで、アルミや樹脂などの軽量素材を多用。空気抵抗を極限まで低減させたティアドロップ形状のボディは、Cd値0.19という驚異の空力性能を誇りました。
外観ではガルウイングドアが採用され、ショーモデルらしい未来感にあふれています。車内は4人乗りに設計され、ドライブ・バイ・ワイヤによるステアリング操作や、視認性に配慮したインパネデザインなど、実用性と先進性が共存していました。
そんなUFE-IIのパワートレインには、660ccのアトキンソンサイクルエンジンに2基のモーターとニッケル水素電池を組み合わせた、専用ハイブリッドシステムを搭載。
当時のトヨタ「プリウス」に近い仕組みを軽向けに最適化したような構成で、まさに「コストを度外視した理想の燃費車」だったといえます。
では、なぜUFE-IIは市販されなかったのでしょうか。
その最大の要因はコストです。複雑なハイブリッド構成、軽量化素材、電子制御ステアリング、ガルウイングドアなど、すべての構造が当時の軽自動車の製造価格帯をはるかに超えていました。
量産するには、製造コストと販売価格のバランスがあまりにも釣り合わなかったのです。
さらに、同時期にスズキが市販した軽ハイブリッド「ツイン」が販売面で苦戦していたことも影響したと考えられます。
ツインは燃費34.0km/Lを実現したものの、わずか2人乗りで、しかも価格が相対的に高く、ユーザーの支持を得ることができませんでした。
この「先行事例」は、UFE-IIの市販化に慎重な判断を促す要因となったはずです。
しかし、UFE-IIの挑戦は決して無意味ではありませんでした。
SNSなどでは、「これが出てたら絶対買ってた」「クラシカルだけど今見ても新しい」「まさに通勤最強カー」といった好意的な声が多数見られます。
また「ソニカの原型か?」という指摘もあり、後年の市販車に影響を与えたことがうかがえます。
実際、2006年に登場したダイハツ「ソニカ」は、空力と走行性能に優れた軽スポーツとして開発されました。
さらに2011年には「ミライース」が登場し、UFE-IIの技術思想を現実的なコストで具現化。「低価格で燃費を追求する」というUFE-IIとは真逆のアプローチで、JC08モード燃費30km/Lを実現しました。
UFE-IIが「理想を追い求めた試作車」だとすれば、ミライースは「現実を見据えた結実」でした。
この2台を比較すると、夢と実用のせめぎ合いの中で、いかに自動車メーカーが最適解を探し続けているかが伝わってきます。
では、その挑戦は単なる夢物語で終わったのでしょうか。
答えはノーです。UFE-IIの思想は、ダイハツが後に打ち出す「e:Sテクノロジー」へとつながっていきました。
軽量化、低抵抗、エネルギー最適化といった要素は、今もなおダイハツの軽開発の中核をなす価値観。
つまり、UFE-IIは量産車としては姿を現さなかったものの、その魂は技術と哲学として確実に受け継がれたのです。
※ ※ ※
このように、燃費60km/Lという目標を掲げながら、市販には至らなかったUFE-II。
けれどもその挑戦がなければ、今のダイハツの軽自動車戦略は存在しなかったかもしれません。
つまりUFE-IIは、「売られなかったからこそ」意味を持つ、輝かしいチャレンジの象徴なのです。
Writer: 佐藤 亨
自動車・交通分野を専門とするフリーライター。自動車系Webメディア編集部での長年の経験と豊富な知識を生かし、幅広いテーマをわかりやすく記事化する。趣味は全国各地のグルメ巡りと、猫を愛でること。







































