8年ぶり大刷新! スズキ新型“コンパクト”SUV「クロスビー」初公開! 全長3.7m級ボディの新モデルは「カクカクデザイン」に? 内外装デザインに込められた思いとは
スズキはフルモデルチェンジ相当の大幅改良を施した新型「クロスビー」を発表。その狙いや大きく変化したデザインについて各担当者に話を聞きました。
8年ぶり大幅刷新のクロスビーのデザインに込められた思いとは
スズキは2025年10月2日、8年ぶりの大幅刷新を行ったコンパクトSUV「クロスビー」の新型モデルを発表。同日より発売しました。
今回の改良は、フルモデルチェンジに匹敵する大規模なものとなっており、あらゆる面で大幅な進化を遂げています。

クロスビーは、ワゴンとSUVを融合させた新ジャンルのクロスオーバーとして2017年に登場したモデルです。
今回の改良モデルのコンセプトは「アクティブシーンに似合う個性的なデザインと広い室内空間を兼ね備えたコンパクトクロスオーバーSUV」。
ボディサイズは、全長3760mm×全幅1670mm×全高1705mmとかなりコンパクト。乗車定員は5名です。
エクステリアは「角を丸めた四角」をモチーフにデザインを一新したほか、インテリアもインパネやドアトリムを全面的に刷新しています。
パワートレインは、1.2リッターエンジン(Z12E型)のマイルドハイブリッド。組み合わせるトランスミッションはCVTです。WTLCモード燃費は最も低燃費なFFモデルで、22.8km/Lを達成しています。
価格(消費税込)は215万7100円から250万300円です。
そんな新型クロスビーの狙いや大きく変化したデザインについて、開発責任者でスズキ商品企画本部四輪軽・A商品統括部チーフエンジニアの飯田茂氏、エクステリアデザイン担当のスズキ商品企画本部四輪デザイン部エクステリア課主任を務める福島耕一郎氏、インテリアデザインを担当したスズキ商品企画本部四輪デザイン部四輪インテリアグループの中澤直人氏とスズキ商品企画本部四輪デザイン部インテリア課の中西啓氏に話を聞きました。
ハスラーと区別して
Q:まずクロスビーの強みから教えてください。
飯田氏:強みは大きく2つあります。まず個性的なデザイン。あとは広さです。SUVの多くはリアがスライドしたりリクライニングできないことが多いんですが、クロスビーはその広さを生かして両方できるんです。この広さが最大の武器かなと思います。
Q:では弱みはいかがですか。
飯田氏:安全や運転支援みたいなところでしょうか。あとは大きな「ハスラー」と見られていましたのでそこですね。これは弱みというよりも改良が必要なポイントです。
Q:そういったことを踏まえ今回一番やりたかったことは何ですか。
飯田氏:まずはハスラーときちんと差別化すること。あとはコンパクトSUVとしてしっかりとショッピングリストに上がることです。
もともと「フロンクス」があって、「ジムニー」シリーズの「ジムニーシエラ」と「ジムニーノマド」がある現在のスズキのコンパクトSUV群のイメージからすると、先代は可愛いくてそこからは少し外れていたんです。ですから今回は格好良いサイドに振ることで、しっかりとショッピングリストに上がるようにしたかったのです。
Q:それはお客様側からの要望もあったのでしょうか。
飯田氏:はい、もうちょっと格好良いSUVらしくして欲しいというものでした。先代は女性オーナーも多かったので、そこで評価された可愛いというイメージは残しつつ、「格好可愛い」テイストを持たせるようにしました。そうすることでコンパクトSUVとしてしっかりとリストに入るようにしています。
そのためにハスラーと共通イメージだったインテリアのカラーパネル(助手席前のパネル)をやめたり、一方でアイコニックな丸目は残したり。守るところと明らかに変えるところをはっきりさせて、ハスラーと区別化しつつ小型車として質感を上げるという大きな2つがポイントでした。
Q:その“残す”という点はクロスビーらしさにつながると思います。それは何でしょう。
飯田氏:まさにアイコニックで丸目のデザインのところと先程申し上げた室内空間の使い勝手ですね。
Q:そこは絶対に守る…その上でコンパクトSUVとしてショッピングリストに乗るためにはデザインが大きな要素だったのでしょうか。
飯田氏:はい、このクルマの最大の特徴というくらいデザインが一番大きいですね。
直線基調で大きく見せる
Q:ではエクステリアデザインについてお伺いします。その狙いはどういうものでしょう。
福島氏:とにかく可愛いイメージから「格好良いです」とか「スポーティ」といった、よりSUV、クロスオーバーの方向にシフトしたデザインが狙いです。
先代クロスビーは結構コロリンとしたアイコニックな形なんですが、それに対して力強さやタフさを表現しないといけないと思っています。そこでよりボクシーに見えるとか、厚みを感じるとか、そういったところで格好良さを表現しています。
Q:一方で可愛らしさも必要ですね。
福島氏:もちろん可愛らしさを全く無くすというわけではありません。特にこのクルマにおいては結構大事なワードですので、その辺はしっかり継承しながら、少し格好良い方向にシフト、幅を広げるという狙いです。
Q:具体的に格好良いところ、可愛いところの例を挙げてください。
福島氏:まずサイドビューでは先代が丸いシルエットで、前に向かって下がっていくのに対して、フロントフェンダーをストレートに水平に伸ばして、より直線的、ボクシーにしています。またヘッドランプもわかりやすい丸モチーフにから頂部をカットして少し睨みをきかせるような、目力を力強く見せられるような処理にすることで格好良さを表現しました。
一方の可愛さですが、先代はフロントのクロームの使い方を横基調としていましたが、今回はホットスタンプという技法を用いてドットパターンにするなどで個性的に見えるような処理で、可愛さ、アイキャッチになればいいかなと考えています。
Q:サイドシルエットを見ているとすごく落ち着いた感じとともに、サイズが大きく感じられました。
福島氏:水平基調を用いることで横方向にワイドに見せるとか、限られた寸法の中で少しでも大きく見せるような処理、リアスポイラーの大型化などいろいろ入れていますので、実際に受ける印象としてちょっと大きくは見えていると思っています。
Q:フロントのフェンダーあたりはブリスター風に仕上がっていて、結構迫力がありますね。
福島氏:そこはクロスビーの特徴のひとつです。今回、フロントフェンダーは変わりましたので、しっかりサイドと相性のいいように綺麗につなげるようにしました。
Q:そうするとドアパネルなどは先代からの踏襲ですか。
福島氏:Aピラーから前を変えていて、そこから後ろ側のドアパネルやリアフェンダーは変わっていません。
Q:今回、エクステリアでは丸形状をできるだけなくして四角丸形状を取り入れていますね。その理由は何でしょう。
福島氏:単純に丸に対しての変化感というのもあるんですけど、タフさを表現するには、完全な四角にしてしまうとボディとの相性が良くないので、そこに合わせて角を取って、少し力が感じられるような四角というイメージでいろいろなところにモチーフとして使っています。
インテリアの進化とは
Q:インテリアはほぼ一新しているように見えます。その狙いを教えてください。
中澤氏:「マインドサファリ」という内外共通のコンセプトでデザインし、イメージスケッチも描いたりしているのですが、インテリアとしてはこのクルマに乗って自分を見つける旅とか冒険に出て、そこで感動できるような景色を発見する。そういう狙いがありました。
中西氏:イメージスケッチの世界観から、すごくゆっくりとした時間が流れているような感じ、チルタイムみたいなところをインパネの造形などでも反映しました。

Q:助手席前の面の取り方は、すごく綺麗で圧迫感がないですよね。そのうえで水平基調なのでクルマに安定感が見受けられます。ですからクルマ全体は広い一方でしっかりと包まれた印象も受けました。
中西氏:インテリアにおいて包まれ感や安心感は非常に重要な要素です。特にSUVでの格好良さ、タフな感じは心惹かれるでしょう。タフさは頼りがいがあることにもつながります。その頼りがいがあるイコール安心感にもなる。そこから心地よさにもなるでしょう。そういったところをこのクルマではすごくタフな骨格表現や包まれ感を造形として散りばめているんです。
中澤氏:もうひとつ、表面的ではなく内側から来る骨格感、マスみたいなものが格好良さにつながっていると思っています。また、中西が担当したコンソールなんですが、これは商品性として求められたのではなく、デザイン提案でコンソールをつけようとなりました。
このコンソールを配することで、インパネの水平基調にプラスしてT字の骨格ができるわけです。しっかりと芯が通っているインパネからコンソールが生えてくるという印象で、すごく力強さが感じられるでしょう。
Q:このセンターコンソールはこだわりが詰まっていますね。
中西氏:こういう形のコンソールは見たことないと思うんですけど、この部品構成は下から上に順に乗せていったイメージです。通常は大きいものが1個あってそこから横とかにつけ足して部品が増えるんですが、シンプルな構成の2段トレイです。部品点数が削減できるという大きなメリットもあります。
またリアまでつなげるなどで大きく見せるというよりは、ここに収納がしっかりありますよというコンソールのアイコニックさにも繋げています。サイズや入る容量もスマホをはじめ実際に置くものを想定しながら作りました。ちなみに下側はエコバッグやウェットシートなどアウトドアなどで使うものをポンと置いて使えるようにしています。上側は携帯やキーなど、意外とどこに置くか困るものを想定しています。上側は掘り込みも作られていますので、充電ケーブルも入れられるなどユーティリティもこだわりました。
Q:今回、ドアトリムを含めたステッチ関係にもとてもこだわったそうですね。
中澤氏:実際に革を扱う家具屋に行って、革をどう巻き込んでいるのかとか、どの部分にステッチを縫い込んであるのかというところを見ましたし、実際に買ってそれをクレーモデルの隣に置いてモデラーと一緒に質感や触り心地も同じような感じになるようにこだわりました。
ステッチの部分もステッチの金型を加工してくださるサプライヤーさんに出向いて、実際に職人さんが型をリューターで削っているところも見せてもらって、データもミリ単位でステッチの間隔を調整してここまで落とし込んでいます。ですから触らない限りは分からないぐらい本物の革が貼ってあるように見せているんです。
格好可愛いデザインをまとい、インテリアは上質さをも感じさせる新型クロスビー。一度ぜひ自分の目で見て触れて欲しいと感じました。







































