「犬の鼻」のイメージを反映!? 新型「デリカミニ」はさらに存在感を放つデザインに刷新! 「ルーミー&タフ」はどのように表現した?
三菱が満を持して発表した新型「デリカミニ」。その開発の裏側には、一体どのような思想や苦労があったのでしょうか。デザインを担当した開発スタッフに、話を伺いました。
三菱 新型デリカミニは「やりたかったことをやりきった!」
三菱の新型「デリカミニ」は、初代モデルの登場からわずか2年あまりという異例の早さでフルモデルチェンジを果たしました。
この背景には、初代デリカミニが「eKクロススペース」のビッグマイナーチェンジという制約を抱えていたという事実があります。
一方で、今回の新型は満を持して全てを刷新。やりたかったことを目いっぱいやりきるという強い意志のもと、開発されました。

日常に冒険をもたらす「デイリーアドベンチャー」というコンセプトを深化させた新型デリカミニは、デザインの細部まで徹底的にこだわり抜かれているといいます。
その開発の裏側には、一体どのような思想や苦労があったのでしょうか。
プログラム・デザイン・ダイレクターの山根氏をはじめ、各デザインを担当された方に、その全貌を解説していただきました。
「まず、新型デリカミニのデザインコンセプトは、初代から継承する『デイリーアドベンチャー#2』というものです。
初代が、eKクロススペースのビッグマイナーチェンジという位置づけだったため、新型ではそのコンセプトを次のステージに進めるという思いが込められています。
そしてこのコンセプトを実現するためのキーワードとして、『ギア感』『安全感』『親近感』の3つを設定。
『ギア感』は走破性とアウトドア感を、『安全感』は厚みのあるボディと守られているようなインテリアを、『親近感』は親しみやすい“やんちゃなキャラクター”で表現しました。
さらに、今回の新型で特に推し進めたかったのは、デリカのDNAをさらに進化させる『ルーミー&タフ』というテーマです。
室内の『絶対空間』をより広々させ、そしてボディと足回りをよりタフにすることが、開発陣が最もこだわったポイントになります」(プログラム・デザイン・ダイレクター:山根氏)

―― 独創的なエクステリアデザインについて、具体的な特徴を教えてください。
「新型デリカミニのエクステリアは、三菱らしさをしっかりとアピールし、軽自動車市場の中で存在感を放つことを目指しました。
それは軽スーパーハイトワゴンらしく広い室内を持ちながら、オフロードもこなせるアウトドア感を兼ね備え、お客様の冒険心を掻き立てること。
さらに“やんちゃ可愛い”という、生命感あふれる親しみやすさも大切に継承されました。
このうえで特にこだわったのは、その顔です。
丸いヘッドライトは現行よりも少し大きくすることで可愛らしさを増し、加えて上部を水平にカットすることで凛とした強い意思を表現しました。
またフロントグリル中央の四角いレーダー部分は、センサー機能の向上だけでなく、嗅覚が優れた“犬の鼻”をイメージしてデザインに落とし込むことで、機能性とデザイン性を両立させています」(プログラム・デザイン・ダイレクター:山根氏)
―― 先述した『ルーミー&タフ』のテーマは、どのようにエクステリアに落とし込まれているのでしょうか
「『ルーミー』という点では、キャビンを実際に大きくしたほか、フロントウィンドウの上端を10mm前に出しつつAピラーを細くすることで、運転時の視界を向上させました。
『タフ』という点では、ボディ下部を黒く塗装することで全体の重心を高く見せ、悪路に強いというイメージを強調し、スキッドプレートも現行よりも大きく力強くしています。
エクステリアデザインの開発過程は、単に初代をベースにしたのではありません。新しいパッケージを前提に、デリカらしさと新世代感をどう表現するか、様々な方向からのアプローチが図られました。
そして最終的には、力強いフェンダーの張り出しを持つロアボディと、キャビンをぐるりと囲むモチーフのキャビンを組み合わせるアイデアが採用されたのです。
特にキャビンのデザインは、Aピラー側を抜いて、ルーフからDピラーを回ってフロント側に繋がる“コの字”形の、我々が『Dシェイプ』と呼ぶスタイルが選択されました」(プログラム・デザイン・ダイレクター:山根氏)
―― デザインを確定させる上で、特にこだわった点や苦労した点はありますか
「デザインの確定直前となる最終段階では、『やんちゃな部分とキュートな部分のバランス』を再度見直す作業が行われました。
ヘッドライトを少し小さくし、目の周りをやんちゃな印象に振る一方で、フロントエンブレム周辺は犬の鼻に見立てて下方に調整し、デリカミニらしい独自の愛嬌あふれる表情を完成させました。
また、前後バンパーのスキッド形状や、ボディ下部の黒い塗装の見切り形状も緻密に検討され、水島製作所 装課・塗装技術との強力な連携により実現しました。
初代では前後ホイールハウス周りのみ黒色塗装とし、前後ドア下部は用品デカールでリフトアップ感を表現していました。
しかし、新型では専用治具を駆使して黒色塗装を前後ドア下部まで拡大し、初代以上にデリカミニらしいハイリフト感を表現・強化することができました」(エクステリア担当:後藤氏)
―― ホイールも個性的でユニークなデザインが用意されていますね。それぞれ特徴を教えてください
「4WDモデルに用意される15インチアルミホイールは、トレッキングシューズのソールからインスピレーションを得たもので、アウトドアシーンにマッチするデザインです。
一方、2WDモデルに装着される14インチホイールは、四角のモチーフをホイール外周からはみ出すほど大きく配置するという従来には無い発想で、タイヤが大きく見えるアイコニックなデザインとしています」(エクステリア担当:後藤氏)
―― 次に、インテリアデザインのコンセプトや開発プロセス、こだわりなどを教えてください。
「インテリアのデザインコンセプトは『開け、冒険の扉』です。このクルマのドアを開けると、その先に自分の冒険のステージが広がっているというイメージを持たせることを目指しました。
初代はeKクロススペースをベースとする必要があったので、インテリアを大きく変更できませんでしたが、今回は全てを1からデザインしています。
インテリアで特に注目して欲しいのは、12.3インチと7インチの大きなディスプレイが一体となった『モノリス』です。これはオプションですが、軽自動車への搭載は、かなりハイクラスな仕様だと考えています。
また、助手席側のポケットはグリップを想起させるデザインで、アウトドアでの操作性を表現。センターには、走行状況に合わせてモードを変えられる『テレインダイヤル』を配置することで、悪路にも強いタフなイメージをさらに訴求しています」(プログラム・デザイン・ダイレクター:山根氏)
「インテリアデザインの開発では、まず歴代デリカに通じる『デリカネス』を紐解くことから始めました。スクエアなボディから生まれる圧倒的な室内空間や、インパネ周りの芯の通った水平基調のデザインがそれです。
これらのデリカネスを継承しつつ、デリカミニらしい愛着が湧く、プレイフルな世界観を構築し、最終的にはインパネからAピラー、ルーフまでをぐるっと囲む『ピクチャーフレームコンセプト』が採用されました。
特にこだわったのが収納などのディテールです。例えばトレイの底面には、三角形の断面を持つ『ビート』と呼ばれるデザインを取り入れ、スマートフォンやタブレットを立てかけられたり、子供がミニカーで遊べたりといった多機能性を持たせました。
グリップモチーフの部分には、直接手に触れるため柔らかい素材が採用され、サプライヤーと連携して高度な巻き付け技術を駆使し、高品質な仕上がりを実現しています」(インテリア担当:小池氏)
―― メーターやディスプレイといったUX/UIデザインのこだわりについてもお聞かせください
「UX/UIデザインは、『オープニングムービー』『タコメーター』『ドライブモード』の3つのカテゴリーに分けて開発されました。
オープニングムービーは、『アイコニック&バイオティック(生き物感)』をコンセプトに、デリカミニのヘッドライトをモチーフにした目が左右に動き、まるでレッツゴーと語りかけるような、愛らしくも頼もしい相棒を想起させるデザインが選ばれました。
タコメーターも、『愛着のわく、見やすいメーター』をテーマに、吹き出しのようなデザインラインを採用し、またアイドリングストップ中のアニメーションではクルマの鼓動を表現するなど、細部にまでこだわりが詰まっています」(UX/UI担当:中田氏)

―― エクステリアとインテリアのカラーデザインについても伺います。どのような世界観を提案されているのでしょうか
「デリカミニ本体の掲げる『デイリーアドベンチャー』のコンセプトに対し、カラーデザインでは『グランピング』と『ポップインギア』という2つの世界観を提案しています。
新色の『サンドベージュパール』は、キャンプギアと調和する落ち着いた色合いを追求し、明るすぎず暗すぎない微妙な色合いに苦労しました。
もう一つの新色『デニムブルーパール』は、デニムという身近な素材から親しみやすさと頼もしさを表現し、ボディの黒とのコントラストにもこだわっています。
内装色も2種類用意され、プレミアムグレードは『グランピング』をテーマに、ブラックとベージュのアクセントで大人っぽい空間を演出しました。
スタンダードグレードは『ポップインギア』をテーマに、ブラックとアイボリーを組み合わせて、アクティブでスタイリッシュな空間を目指しています。
特にシートには力を入れまして、軽自動車では珍しく、グレードごとに生地だけでなく縫製パターンも変えることで、それぞれの生地の特徴を最大限に活かしています」(カラーデザイン担当:加藤氏)
※ ※ ※
このように、初代の成功に安住することなく、さらなる高みを目指して生み出された新型デリカミニ。
そのデザインには、開発陣の熱い想いと徹底したこだわりが注ぎ込まれていました。
「やりたかったことを、やりきる」という言葉通り、このクルマはコンセプトからディテールに至るまで、全てが刷新されています。
この新しいデリカミニが、再び市場に新たな「冒険」をもたらすことは間違いないでしょう。
Writer: くるまのニュース編集部
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