環境に良い機能なぜ消えた? ひと昔前は定番だった「アイドリングストップ」 最近のクルマで見かけなくなった理由とは
ひと昔前までのクルマには、アイドリング時にエンジンを停止させることで無駄な燃料の消費や排気ガスを抑える環境に良い機能として「アイドリングストップ」が定番装備となっていました。しかし最近ではそのアイドリングストップが姿を消しています。その理由とはどのようなものなのでしょうか。
昔の定番機能なぜ消えた? 環境に良いはずの「アイドリングストップ」とは
少し前は当たり前のように搭載されていた「アイドリングストップ」ですが、昨今急激に姿を消しています。
燃費向上に繋がる機能として普及しましたが、なぜ最近のクルマでは姿を消しているのでしょうか。

トヨタ「ヤリス」やホンダ「フリード」など、ここ数年で急速に姿を消している「アイドリングストップ」。
国産車を中心に、少し前まではアイドリングストップの搭載は当たり前といっていいほどでした。
インパネやセンターコンソールなどに、アイドリングストップの解除スイッチを配置していた車種も多くありました。
現在もまだ残っている車種はありますが、どうして搭載車が減っているのでしょうか。
アイドリングストップは、主にカタログ燃費向上のひとつの方策として普及してきました。0.1km/Lでもライバル車を超えようと、激しい燃費競争が繰り広げられていた時期と重なります。
しかし、主にアイドリングストップからエンジンが再始動する際の音・振動をはじめ、発進時のタイムラグ、渋滞時の頻繁なエンジンストップ、アイドリングストップ時のエアコンの停止(送風のみになる)など、ユーザーから「煩わしい」といった声も上がっていたようです。アイドリングストップをオフにして走っている人もいるかもしれません。
そのほか、コースティング(滑走)とセットで採用されることも多く、停止直前でエンジンが止まり、ストップ&ゴー時や交差点などで走行しにくいなどのデメリットもあります。
各メーカーもアイドリングストップからの再始動時のタイムラグを減らしたり、音や振動を抑えたりするなどの技術を投入しています。
またスズキは、蓄冷材内蔵エバポレーターを搭載し、アイドリングストップ時でも冷風を送る「エコクール」を採用するなどの工夫を凝らしています。
しかし、先述したデメリットに加えて、補機バッテリーやスターターモーター(セルモーター)への負荷、専用補機バッテリーのコスト高(主に市販品)などもあり、技術進化により燃費も向上していることから、アイドリングストップは廃止の流れになりつつあります。
また、JC08モード燃費からWLTCモード燃費に切り替わったことで、アイドリングストップによる停止時間の割合が相対的に低下し、モード燃費に与える影響(メリット)も減っています。
ダイハツは2023年1月、「タフト」「タント」「ムーヴキャンバス」に、半導体などの部品不足からアイドリングストップ非搭載車(eco IDLE非装着車)を設定。
アイドリングストップレス仕様は、各グレードで一律3万3000円安でした(2025年5月末にeco IDLE非装着車は生産終了)。
なお、タント「L」のアイドリングストップ非搭載車は、WLTCモード燃費19.6km/L。タント「L」のアイドリングストップ搭載車は同22.7km/Lで、3.1km/Lの差があります。
決して小さいとはいえませんが、これくらいの差であれば、走らせ方である程度はカバーできるかもしれません。
また最近では、ハイブリッド車(PHEV含む)が増えてきていますが、これらのクルマでは「アイドリングストップ」機能はなく、停止時・低速時はモーターで駆動するEVモードとなることからも、全体的にアイドリングをストップさせるということの意味が無くなっていることも要因として挙げられます。
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余談ですが、筆者はアイドリングストップ付MT車に乗っていて、信号待ち(待ちの長さによりますが)などではクラッチを切ってニュートラルにします。
ギヤを1速に入れるためにクラッチを踏むとエンジンが始動するため、それほど煩わしいとは感じません。
アイドリングストップ廃止の流れは確実に来ています。
今後、内燃機関(ICE)が減り、電動車がさらに普及すればアイドリングストップは懐かしい話題になるかもしれません。
Writer: 塚田 勝弘
中古車の広告代理店に数ヵ月勤務した後、自動車雑誌2誌の編集者、モノ系雑誌の編集者を経て、新車やカー用品などのフリーライター/フリーエディターに。軽自動車からミニバン、キャンピングカーまで試乗記や使い勝手などを執筆。現在は最終生産期のマツダ・デミオのMTに乗る。
























