災害時の車、どう使う? 「防災の日」に考える「クルマの防災」 事前と事後で重要なコトとは
9月1日の「防災の日」を前に、車の防災対策を改めて見直してみませんか。近年、大規模な地震や記録的な豪雨など、多様な災害が多発しています。こうした状況下で、車は移動手段だけでなく、避難生活の拠点にもなり得ます。しかし、いざという時に車をどう使うか、どのような備えが必要か、具体的に考えている人は少ないかもしれません。この記事では、災害発生前後の「クルマの防災」について、重要なポイントを解説します。
改めて考える「クルマの防災」
9月1日は「防災の日」です。
東京消防庁の資料によると、防災の日は1960年6月11日の閣議で了解されたことが始まりです。
なぜ9月1日なのかといえば、関東大震災の発生が1923年の9月1日であること、また
暦の上では二百十日に当たり台風シーズンであること。
さらに閣議で了解された前年の1959年9月26日には戦後最大規模の被害をうけた伊勢湾台風に対する教訓という意味もあるということです。
その後、1995年の阪神・淡路大震災、そして2011年の東日本大震災など大きな地震による火災や津波被害が発生しています。
近年では、線状降水帯による記録的な大雨や、水道管等の地下部の破損による大規模な道路陥没など多様な災害が起こっており、人々の防災に対する意識は高まっている印象があります。
その上で、「クルマの防災」をどう考えればよいのでしょうか。

例えば、トヨタはホームページの中に「トヨタの防災」というコーナーを儲けており、クルマの中で地震の揺れを感じた場合の対応事例を紹介しています。
また、日本自動車連盟(JAF)でも、日頃から車内に用意しておきたい防災用品を紹介したり、クルマを置いて徒歩で避難する場合の心得を掲載しています。
そのほかにも、地方自治体などが災害時のクルマの利用について、防災の観点から各種資料の中で紹介することがありますが、「クルマの防災の基準」や、ユーザーの「行動変容」を積極的に促す具体的な施策があるとは言えないと思います。
つまり、自動車ユーザーは自己責任として「クルマの防災」を考える必要があり、ユーザーそれぞれの生活環境に応じて日頃から「クルマの防災」について意識を高めるべきでしょう。
ここから先は、「クルマの防災」の視点でこれまで様々な取材をしてきた筆者の私見となります。
防災というと、「災害が発生する前」のことを指しますが、実際には「災害が発生した後」のことも含めて考えるのは当然です。
まず、災害が発生する前については、「行動計画」と「防災用品」の準備が必要です。
行動計画の第一歩は、自宅、学校、勤務先などへ日常的にクルマで移動している場合、もしもクルマで移動できなくなった時に徒歩移動することを考えることです。
また、クルマ移動の場合だけではなく、家族や友人との連絡方法についても、複数の手段を想定しておくことが大事です。
その上で、どのような防災用品が必要なのかを考えます。
ホームセンターなどで販売されている防災用品パッケージ等を購入するだけではなく、自分の行動計画において必要なモノを考えてみましょう。
例えば、通勤時に革靴を利用している人はスニーカーや長靴を車内に常備するといった発想です。
また、日頃からクルマでの長距離移動が多い人や、旅行などで長距離移動する場合の防災用品としては、小型の太陽光パネル、モバイルバッテリー、寝袋、携帯トイレ用品などが有効でしょう。
クルマ本体については、しっかりと定期点検をしておくことは当然ですが、いつも自宅に戻る前に早めに満タンに近い状態にしておくことも、もしもの場合の移動では役立つでしょう。
こうして災害が発生する前の準備ができていても、災害が発生した時、または豪雨などで災害が拡大する可能性がある時などで最も重要なことは「移動手段としてクルマを使うか、使わないか」という選択です。
これは、前述の行動計画の中に盛り込もうとしても、災害時の状況は様々な要因が重なるため、計画通りにはいかないことが多いはずです。
道路の破損状況、交通渋滞の状況、道路にあふれた水の高さ、風の状況、余震の状況など
様々な要因を可能な限り考慮し、最終的には自己責任で判断することになります。
その際、例えオフロード走行が可能な本格四駆であっても災害時には脆弱になることを念頭に置くべきだと思います。
何事も過信は禁物です。
災害発生後には、避難場所での個人的なスペースとしてクルマを活用することがあり得ますが、一般的に知られているように、いわゆるエコノミー症候群などの対応など、健康管理を第一に考えてください。
あわせて、避難場所では周囲のクルマや人に迷惑をかけないことは当然であり、皆で協力しながら厳しい状況を乗り越える気持ちを共有することが大事です。
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また、豪雨や洪水でクルマが水没した場合、水が引いた後に自動車ディーラーや整備工場で点検を受けてください。
特に電動車の場合、自分でモーターやエンジンをスタートせず、自動車ディーラーなどに連絡して適切な措置をしてもらうことを自動車メーカー各社が推奨しています。
防災の日をきっかけに、是非皆さんそれぞれで「くるまの防災」を考えてみてください。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。





































