たまに見る高速料金所「一般レーン」利用者 ETC普及したのになぜ「現金払い」? なかには「やむにやまれず」な人も… ETCを「使わない・使えない人」の知られざる“事情”とは

ETCが広く普及しましたが、高速の料金所では一般レーンを使う人もちらほらと見られます。一体なぜETCを使わないのでしょうか。

事情はさまざまだが…「明確な理由」で使ってない人も

 いまや格安レンタカーや旧車にいたるまで、ほとんどのクルマに装着されているETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)。

 しかし、ときどきETC用のゲートではなく、一般用のゲートを利用しているクルマを見かけます。

 どのような事情があるのでしょうか。

一般レーンに入るクルマのイメージ[画像:PIXTA/イメージです]
一般レーンに入るクルマのイメージ[画像:PIXTA/イメージです]

 日本でETCの全国展開がスタートしたのが2001年12月のことでした。

 国土交通省が発表するデータでもっとも古い情報は2007年3月時点のもので、このときのETCの利用率は65.9%、利用台数は525万台でした。

 利用率が初めて90%を超えたのが2016年。その後も少しずつ増え続け、現在にいたります。

 最新の国土交通省の資料によると、2025年5月現在のETCの利用率は95.3%、利用台数は828万台とのことです。

 事実、高速道路や有料道路を走っていると、ほとんどのクルマがETC用のレーンをくぐっていきます。

 かつては、料金所や発券所手前で窓を開け、うまくハンドルをさばいて右寄せにして停め、通行券を受け取ったり、料金所のおじさんに料金を払うのが当たり前でした。

 もしかすると、通行券の授受に失敗し、道路に落として恥ずかしい経験をした人もいるかもしれません。

 そんな光景は、もはや過去のものなのかもしれません。

 しかし、実は今でも一般用のゲートを利用しているクルマを見かけます。その確率も高く、東名の東京料金所では必ず数台は一般ゲートに向かっています。

 これにはさまざまな事情があるようです。

 最近は減ってきたものの、「お金を払ってまでETC車載器を購入し、セットアップ代まで払いたくない」という人です。

 特にDIY派を自認する人にとっては、ETC車載器を買ってきて自分で取り付けることができても、セットアップは登録された事業者でなければ行えないことが納得いかないようです。

 セットアップ料は3000円〜4000円前後と、1回の飲み代を我慢するくらいの出費がどうしても掛かってしまいます。

「ETCが便利なのは分かるけど、セットアップ料を払うのは納得がいかない」と、もはや食わず嫌い(意固地)になってしまっているケースもあります。

 そして、クルマの乗り換えのタイミングでついにETCを導入し「こんなに便利だったとは知らなかった…」と、遅まきながらETCの利便性を理解することとなるのです。

 また、なかには「年に数えるほどしか高速道路に乗らないから、ETCはいらない」という人もいます。

 最近は年会費無料のETCカードも増えつつありますが、そもそも高速道路をほぼ利用しないのであれば、わざわざETC車載器やカードの年会費を払う必要がないという考えも一理あるといえます。

 そして、何らかの理由でETCカードが作れない(発行してもらえない)人もいます。

 いわゆる「クレヒス(クレジットヒストリー)」に問題があったり、分割払いの焦げ付きや自己破産などなど、やむにやまれずクレジットカードが作れない事情を抱えている人もいます。

 ちなみに、特に気をつけたいのが「分割払いでスマートフォンを契約している」ケースです。

 分割払いの遅延や未納があると、ブラックリストに載ってしまい、ローンが組めなくなったり、クレジットカードが作れなくなってしまうケースがあります。

 スマートフォンの分割払いの遅延が原因で、クルマや住宅のローンが組めなかったという事例が(本当に)あります。

 ついうっかり…が許されないケースなので、これは要注意です。

 なお、学生であってもETCカード(クレジットカード)を作れる可能性があるので、クルマで通学している人は要検討です。

 さらに、「あえてETC車載器を搭載しない」事例もあります。

 先述したように、日本でETCが全国展開されたのは2001年末のことでした。

 それ以前に生産・販売されていたすべてのクルマにはETC車載器は存在しなかったことになります。

 いまや、旧車およびネオクラシックカーオーナーにとっても「当時はなかったものだけど、ETCだけは妥協して付ける」対象となっています。

「当時モノ」や「時代考証」にこだわるオーナーにとってはETC車載器を見えないところに設置し、気配を消すことに注力します。

 分離式のETC車載器を選び、本体をうまく隠せたとしても、残念ながらアンテナだけはフロントガラスに装着させる必要があります。

 多くの旧車およびネオクラシックカーオーナーはこの点だけは「仕方なく」妥協して、ETCの利便性を優先させます。

 しかし、こだわる人にとっては「このクルマが現役の頃にはETCなんてものはなかったぞ」と、あくまでも「当時感」を優先させるのです。

 要するに「ETCの利便性<当時感にこだわる」というわけです。

 こだわる人にとっては、この不便さすらも旧車およびネオクラシックカーに乗る醍醐味なのかもしれません。

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Writer: 松村透

株式会社キズナノート代表取締役。エディター/ライター/ディレクター/プランナー。
輸入車の取扱説明書制作を経て、2006年にベストモータリング/ホットバージョン公式サイトリニューアルを担当後、2013年に独立。フリーランスを経て株式会社キズナノートを設立。現在に至る。
2016年3月〜トヨタ GAZOO愛車広場連載中。ベストカー/ベストカーWeb/WebCARTOP他、外車王SOKEN/旧車王ヒストリア編集長を兼務する。

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