ホンダの新BEV「S7」を徹底試乗! 質は高いのに中国市場で苦戦する理由は? 斬新デザイン採用したS7の魅力と課題【試乗記】

ホンダが中国市場に投入した新型BEV「S7」に試乗しました。高い走行性能と近未来的なデザインを持つS7ですが、販売台数は低迷しています。一体なぜ中国の消費者に響かないのか? その理由を徹底解説します。

質は良いのに販売台数は低迷…ホンダ中国向けBEV「S7」に試乗

 ホンダが2025年3月に発売した「S7」に試乗しました。

 中国市場に展開されるS7。いったいどのようなクルマなのでしょうか。

斬新なヘッドライト! ホンダ「S7」とは?(撮影:加藤博人)
斬新なヘッドライト! ホンダ「S7」とは?(撮影:加藤博人)

 S7は2024年4月に開催された北京モーターショー2024にて姉妹車「P7」とともに発表されました。

 ホンダは中国で東風汽車との「東風ホンダ」、広州汽車との「広汽ホンダ」の2つの合弁会社を展開しており、前者が「P7」、後者が「S7」の製造・販売を担当しています。

 S7/P7はホンダの新たなBEVサブブランド「イェ(火へんに華)」シリーズのローンチモデルとして発表されました。

 どちらもボディサイズは全長4750 mm x 全幅1930 mm x 全高1625 mm、ホイールベースが2930 mmとホンダの「CR-V」より若干大きいものの、全高は低めに抑えてスポーティなシルエットを持ちます。

 両者は前後のデザインで差別化が図られており、例えばフロントの灯火類においてはS7が左右を一体化させて「X」を描いているのに対し、P7は左右に「コの字」型ユニットを有し、その2つをイルミネーションで繋ぐというデザインになっています。

 実車を見てからの個人的な印象では「X字」のデイライトをフロントに持つクルマは少ない印象があり、P7よりもS7の方からより近未来的な雰囲気を感じとりました。

 S7/P7は他にもデジタルアウターミラーを採用するなど、中国の新興EVブランドでも採用しないような機能を搭載しています。

 初めてデジタルアウターミラーを体験する人にとっては慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、一度慣れたら通常のミラーよりも光の反射を気にする必要がなかったり、特に夜間の後方視界がクリアになったりと、多くの利点に気がつくと思います。

過去にはレクサス「ES」にも採用されていたデジタルアウターミラーを「S7」は採用している(撮影:加藤博人)

 近未来的な印象を醸し出すエクステリアに対し、インテリアは少々中途半端に感じてしまうかもしれません。

 というのも、大体の流れは中国で流行っている「シンプルかつ先進的」な構造を取り入れており、インストルメントパネルの横長ディスプレイ化や、中央に位置する12.8インチ+10.25インチタッチディスプレイ、その下に位置する携帯端末用無線充電パッドなどの要素がそれに該当します。

 一方、ドア側のパワーウィンドウやミラー角度の調整、ハンドル盤面上の各種スイッチなどは従来のホンダ車と変わらない印象を受けました。

 もちろん操作性においてはこういったスイッチが使いやすいのですが、中国では「いかにコックピット周りから物理スイッチを少なくするか」で先進性をアピールする節があり、中国新興メーカーの最新EVと比較すると若干古臭い印象を与えてしまうかもしれません。

S7は2024年4月に開催された北京モーターショー2024にて姉妹車「P7」とともに発表された

 S7/P7のパワートレインは出力268 hp/トルク420 NmのRWDと470 hp/770 NmのAWDの2種類で、グレードの選択肢もそれぞれ1グレードの合計2グレードというシンプルな構成です。

 また、バッテリーは車載電池シェア世界トップの「CATL(寧徳時代)」が製造する容量89.9 kWhの三元系リチウムイオン(NCM)電池で、CLTCモードでの航続距離はRWDで650 km、AWDで620 kmと公表しています。

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