マツダの挑戦! 柔軟性と効率を両立する「ものづくり革新」 防府工場から見えたものとは
「ものづくり革新2.0」で柔軟性をさらに高める
電動化や自動化の進展により、商品や技術が大きく変化する中、「ものづくり革新1.0」で取り組んできた効率化の取り組みをさらに広げる必要が生じました。
弘中氏によれば、「部品の種類の増加に対し、根の生えない生産設備を導入することで柔軟性をさらに高めた『ものづくり革新2.0』の混流ラインへと進化させています」とのこと。
例えば、サブラインを固定化された組み立てラインから、根の生えないAGV(無人搬送車)上で組み立てを行うラインに変えることで、作業方向の制約をなくし、作業性を向上させています。
また、AGVの台数を変えることで工程数を自由に変えられるため、作業量の異なる多様なパワートレインを組み立てることができるようになりました。
組み立てた各種パワートレインのメインラインでの搭載においても、搭載位置の異なる車種でも自動的に位置を調整して搭載できるAGVを導入。
バッテリーEV専用の電動ユニットも搭載することができます。これらの生産技術は既に防府第二工場で導入されており、今後、電動化の導入展開に合わせて本社工場や海外工場にも展開していく計画です。

バッテリーEVといった車種のラインナップが広がるだけでなく、各車種に求められる機能の幅も広がっていくため、パワートレインや電池、車両制御デバイスなどの種類に加えて、それに組み合わせるソフトウェアの数も飛躍的に増えていく見通しです。
これに伴い、材料や部品の調達構造も複雑になることで、顧客ニーズの変化へ柔軟に対応することが難しく、サプライチェーン全体の効率化が課題となっています。
弘中氏は、車両制御デバイスを例に挙げ、現在は海外の取引先でハードウェアを作り、ソフトウェアを書き込む方式を採用しているため、種類数の増加に伴いサプライチェーン上での在庫が増える課題を指摘します。
この課題に対し、マツダはまず商品の企画段階でパワートレインの種類数を削減。その上でハードウェアの種類は1つにして、車種共通のソフトウェアだけを取引先で書き込んで調達します。
車種ごとに種類が異なるソフトウェアは自社工場で「ファクトリーOTA」という無線通信での書き込みを実用化して対応しています。
「ソフトウェアの種類を工場内で決めることにより、お客様の需要変動に柔軟に対応できるようになり、またサプライチェーン内の在庫も1/4に削減できるようになります」と弘中氏は説明します。
また、取引先でも生産する部品の種類が圧倒的に減ることで取引先の固定費が削減でき、ひいてはマツダの原価低減にも繋がるとのこと。
これは「ものづくり革新1.0」のスコープを取引先との協業活動まで広げることで実現したものであり、今後はソフトウェアだけでなく、制御系ユニットをつなぐワイヤリングハーネスなどのハードウェアにも適用を広げていく計画です。
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「これまで進化させてきたものづくり革新により、2027年に市場導入予定の新型バッテリーEV生産において、当社は既存の混流ラインを有効に活用するため、バッテリーEV専用工場新設に対して、初期設備投資は85%削減、量産準備期間は80%削減することができます」と弘中氏は強調します。
これが「バッテリーEV専用工場が必要ない」理由であり、ライトアセット戦略による効率化だと弘中氏は説明します。
マツダは電動化の黎明期において、多様化するお客様ニーズや商品の変化に柔軟かつ効率的に対応できる混流生産と、サプライチェーンの構造変革により、世界中のお客様に「走る喜び」を味わっていただけるマルチソリューションをタイムリーに届けていく方針です。
スモールプレイヤーであるマツダが、強みを最大限に活かし、効率的な投資と柔軟な生産体制で電動化時代を生き抜く戦略は、自動車業界における一つの革新的なアプローチとして注目されています。
Writer: くるまのニュース編集部
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