パナソニックがクルマの「移ごこち」をデザインする? オートモーティブ事業で提供する新たな空間価値とは
SDV化によるソフトウエア開発のリソースの大幅増、そこに対応するための施策は?
パナソニックオートモーティブシステムズは中長期経営目標の達成に向けて、経営基盤強化と成長原資確保にフォーカスを当てた
1. 経営スピードの飛躍的向上:組織変革を通じて実現を図ります
2. 生産性とコスト競争力の強化:経営の筋肉質化を進めることで実現します
3. 企業価値の向上:コア事業の戦略に基づく事業成長によって企業価値向上の実現を目指します
という3つのアジェンダを策定し、これらを達成するために組織変革による経営スピードの向上を図るべく、2025年度から従来の事業部軸の経営体制を見直し、地域軸経営へと転換しました。

現在、同社が得意とするコックピット関連の開発領域では、クルマのSDV化とHPC化という大きな変化が起きています。これまで自動車の各機能はそれぞれ個別のECUによって制御されていましたが、現在ではこれらのECUが統合され、ソフトウエア中心のアーキテクチャ、つまり統合型HPCへと進化しつつあります。
この変化によって、SDV化、つまり自動車の機能や価値がハードウエアではなく、ソフトウエアによって決まる時代が本格的に到来。同社は日本のみならず、グローバルにコックピットHPC事業の顧客基盤を拡大し、2035年には「世界ナンバー1のSDVイネーブラー」として同事業だけで売上高1兆円の規模に発展させる計画を持っています。
それを達成するためのパナソニックオートモーティブシステムズの強化領域として、
1. ソフトウエア開発リソースの増強
2. アーキテクチャ・プラットフォームの業界標準化
3. ハードウエア技術のさらなる高度化
4. ADAS領域の戦略的パートナーの確保
以上の4点を重点に挙げています。特に日に日に増大するソフトウエア開発のリソースと、それに伴うソフトウエア開発人材確保の競争激化については、キャリア採用だけでなく新卒人材数を前年比で2.5倍に増加させ、また企業内大学を設立することで、人材確保だけでなく「育てる環境づくり」に力を入れているとのことです。
パナソニックオートモーティブシステムズは今後、単なるデバイスサプライヤーにとどまらず、車内空間全体を統合的に設計・構築し、新たな体験価値を具現化する「キャビンUXクリエーター」となり、さらなる高みを目指しているといいます。このキャビンUX領域では、すでにカーOEMとの協業を始めており、さまざまな車内空間の提案や検証もスタートしているとのこと。また今後は検証事例を通じて車内空間での知見を蓄積し、さらなる業務改善を図る計画を用意しているとのことです。
最後に、同社の「移ごこち」がもたらす6つの価値として、
1. 安心:クルマに乗る全ての人に安心を提供し、人の状態に合わせた危険の事前回避やアクシデントへのサポートなど、クルマにまつわるあらゆる不安をなくす
2. 至福:クルマを至福の空間にし、移動時間をもっと快適で楽しいものにし、空調、音響など車内全てを最高の品質にすることで、くつろぎと自由に満ちた移動時間を実現する
3. 可能性を広げる:固定概念にとらわれず、新しいアイデアを大切にし、進化を続けることで、没入できる移動体験や移動以外の用途への活用など、クルマの新しい利用シーンを創出する
4. スマート:デジタルで移動をスマートにし、あらゆる移動を最適なデジタルソリューションで効率化。物流や旅客をはじめとしたビジネスでの効率化など、さまざまな移動のスマート化を目指す
5. 地域を生き生きとさせる:移動で地域を活性化し、変化する社会環境に対応し、人々のアクティブな移動を応援することで、交通や公共事業、観光など地域のあらゆる移動をトータルでサポートし、活気ある地域社会づくりを支える
6. 持続可能:新技術の開発や心地よさの研究を通して新たな「移ごこち」を追求し、いつも人の心に寄り添い、街にも環境にも配慮した「移ごこち」デザインを通して持続可能なモビリティ社会を創造する
この6つの領域で世の中に貢献し、事業を拡大しモビリティの進化の鍵を握るSDVの領域において、クルマのさらなる価値向上の実現に欠くことのできない存在を目指して参りますと永易社長は締めくくりました。
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