妊婦はシートベルトをするべき?「妊娠中免除」は大きな誤解、道交法でも着用は義務

妊婦だからとシートベルトをせずに事故で母子ともに亡くなってしまう悲惨な事故が後を絶ちません。シートベルトをしていれば助かる命がたくさんあります。なぜ妊娠中だからとシートベルトをしない人が多いのでしょうか?

「妊婦はシートベルトをしなくていい」は大きな誤解

 妊婦だからとシートベルトをせず事故に遭遇し、母子ともに亡くなってしまう悲惨な事故が後を絶ちません。シートベルトをしていれば助かる命がたくさんあります。なぜ妊娠中だからとシートベルトをしない人が多いのでしょうか。

妊婦のシートベルト装着イメージ

 道路交通法施行令では、妊娠中であることにより座席べルトを着用することが健康保持上適当でない者は、やむを得ない理由として着用義務が免除されます。

 これは「妊婦はシートベルトをしなくていい」という意味ではありません。

 かつて日本ではこのような「妊婦はシートベルトをしなくて良い」「妊婦はシートベルトをしてはいけない」という誤解が多く、先進国ではほぼ100%の妊婦ベルト着用率も、日本では1/3以下という異常に低い数字に甘んじていました。

 しかし、2008年11月に「交通の方法に関する教則」(国家公安委員会告示)が改正され、妊娠中のシートベルト着用が推進されています。

 筆者(加藤久美子)も2000年に第一子を妊娠していた時、「そういえば、妊婦のシートベルトってどうするんだっけ?」と、ふと疑問に思ったことがありました。

 結局その時の疑問がきっかけで、全国の産科医や小児科医、大学教授の先生方、助産師さんなどを巻き込んで、妊婦のシートベルト着用を推進する会を設立することになったのです。

 設立当初、様々な調査を行いましたが、最初に調べたのは、2000年当時の自動車メーカーの車両取扱説明書には妊婦のシートベルトについて、”どのように書かれているのか?”ということでした。

 この当時、ボルボやメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンなどの車両取扱説明書にはすでに「妊婦のシートベルト着用方法」がイラスト入りで掲載されていましたが、イタリア車、フランス車、国産車はほぼ全滅でした。

 現在では日本自動車工業会の指導により、国産メーカーも全車の取扱説明書に妊娠中のシートベルトに関する記述や装着方法が紹介されています。

 欧米では、当たり前のように「妊婦こそシートベルト」という考えがちゃんと根付いていたようです。

二つの命を擁する妊婦だからこそシートベルトが必要

 それではなぜ、妊婦こそシートベルトが必要なのでしょうか。この件について、妊婦の交通外傷について20年以上にわたって独自にデータを取り、日本産婦人科学会などでも積極的に発表されてきた、村尾寛医師(福岡県・青葉レディースクリニック (社)日本産科婦人科学会産婦人科専門医)に聞いてみました。

妊婦のシートベルト正しい装着方法例

―――妊婦こそ、シートベルトが必要というのはどのような理由でしょうか?

 それは、言うまでもなく妊婦が自分とおなかの赤ちゃんと二人分の命を持つ存在だからです。赤ちゃんの命を守るためには、まずお母さんの命を守ること。これが大前提ですね。お母さんが亡くなればほとんどの場合、おなかの赤ちゃんも亡くなります。もし、ベルトをしないことで子宮破裂が免れたとしても、お母さん自身が亡くなってしまったら何の意味もありません。

―――村尾先生は乗車中に事故に遭遇した妊婦さんを数多く診てこられたのですか?

 現在のクリニックに入職する前には、自動車利用率が非常に高い沖縄県の病院で勤務してました。約20年に渡って、交通事故で運ばれてくる1日平均2-3名の妊婦さんの治療にあたってきました。シートベルトをせず事故に遭遇すると、多くは頭から窓を突き破って車外に放り出され、地面や対向車に激突し致命傷となります。

―――想像すると恐ろしいですが、いまだにシートベルトの着用に抵抗がある妊婦さんもいるようです

 妊婦のシートベルトには、独特の装着方法があります。最も重要なポイントは赤ちゃんがいるおなかの膨らみを避けてベルトを着用することが大事なのです。そのために、腰ベルトを両腰骨の上に通すことを心がけます。妊婦独特の装着方法と言いましたが、本来、3点式シートベルトは肩と両腰骨の上を通すのが正しい装着方法なので、妊婦でも妊婦以外でも”正しい装着方法”は、実は同じなのです。

妊婦中シートベルトの装着例や解説のある母子手帳等写真で見る

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